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2020/02/24 2020:02:24:20:00:00

ベジャールの「第九」を彩るソリストに直撃! ~高橋維さんインタビュー~

本年4/25(土)~4/29(水祝)に、〈上野の森バレエホリデイ〉の一環として、モーリス・ベジャール振付 ベートーヴェン『第九交響曲』を上演します。今回の上演は実に6年ぶり! 新キャストも予定される東京バレエ団、モーリス・ベジャール・バレエ団のダンサーたちも気になるところですが、今回もう1つの注目ポイントは、ベジャールの『第九』史上初となる、音楽面を"オール・ジャパン"キャストで上演するということです(注目の出演者については こちらの記事で詳しくご紹介しています)。今回はこの名作を彩るソリストの一人、高橋維(ソプラノ)のインタビューをお贈りします。ぜひご一読ください!



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高橋維(たかはし ゆい)


──昨年は、東京二期会のオペレッタ『天国と地獄』ユリディス役で、美しく奔放な人妻を演じられていました。演技や踊りの要素もたっぷり、笑いも飛び出す楽しい舞台でした。

髙橋維 ありがとうございます。実は子どもの頃から10年間モダンバレエを習った経験があり、舞台で演技をしたり踊ったりすることが大好きなんです。バレエにも興味があったのですが、大人になってからは公演に行く機会がなく残念に思っていました。2016年に勅使川原三郎さんが演出した『魔笛』で夜の女王を演じ、東京バレエ団のダンサーの方々と共演させていただいたことで、バレエへの興味が再燃したんです。

 バレエとオペラは、身体で表現するという点で共通するところがあると思うのですが、私たちが声と身体で伝えるところを、ダンサーの皆さんは身体だけで表現する。声を出さずになぜ、キャラクターが見え、物語が見えてくるのか──! すごいことだと思いました。


──昨年は東京バレエ団のウィーン公演でベジャール振付の『ザ・カブキ』をご覧になったそうですね。

高橋 素晴らしかったです。切腹のシーンは本当に痺れました。今度の『第九』もベジャール作品ですが、実は、中学生の頃、シルヴィ・ギエムさん主演の『ボレロ』を拝見しているんです。赤い円卓の上でギエムさんが踊っているあの光景は、一度観たら忘れられなくなりますね。映像で見た『春の祭典』のイメージも、忘れられずにいます。

『第九』は、あのフィナーレの舞台写真に強い印象を受けました。ぱっと思い出したのが、クリムトが第九交響曲をテーマに描いた壁画「ベートーヴェン・フリーズ」。ウィーンに留学していたので実物を見ていたのですが、たくさんの人々が描かれた大作で、黄金がふんだんにあしらわれていて──。イメージが重なりました。ベートーヴェンの第九は、こうした大掛かりな絵画やバレエを創作させるパワーを持っている作品なんだなと、あらためて考えさせられましたね。


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2014年の『第九交響曲』上演より、"第4楽章"


──これまで、ベートーヴェンの第九をどんな思いで歌ってこられましたか。

高橋 歌うたびに、どうしてもエモーショナルになってしまう作品です。オーケストラ、合唱、会場の皆さんとの一体感というか、皆でともにいる、という気持ちになりますね。とくに、「フロイデ!フロイデ!(歓喜よ、歓喜よ)」に続く、第九の"サビ"とも言える部分──。


──「なんじの神秘な力は、引き離されたものを再び結びつけ、なんじの優しい翼のとどまるところ、人々はみな兄弟となる」(大木正純訳より)、ですね。

高橋 歌いながら、ぐっときてしまいます。ウィーンでドイツ語を話す生活をし、歌詞を瞬時に理解しながら歌えるようになったことも大きいかと思います。クライマックスの、ソリストたちの四重唱の部分もとても美しいですね。歌う者としてはとても難いところですけれど、集中して取り組んでいます。ベートーヴェンの歌は、非常に器楽的に書かれているだけに、とても難しいんです。


──今回は、総勢350名もの出演者が一堂に会す壮大なスケールの公演となります。

高橋  こんな素晴らしい機会は滅多にないこと! とても楽しみにしています。


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取材・文:加藤智子(フリーライター)


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