2025/07/18 2025:07:18:12:07:14[NBS最新情報]
〈バレエ・スプリーム〉Bプログラム ー見どころと演目紹介ー
2025年の夏を彩るバレエの祝祭〈バレエ・スプリーム〉。本日はシリーズでお贈りしているプログラム別の演目と見どころ紹介の第2弾。高橋森彦(舞台評論家)さんによるBプログラムのご紹介です。
Bプログラム(8月5日(火)~7日(木))ではパリ・オペラ座バレエ団と英国ロイヤル・バレエ団の合同で「ラ・バヤデール」の見どころを抜粋して上演するのが最大の見どころ。ぜひご期待ください!
ガムザッティを演じるオニール八菜
Bプロは、パリ・オペラ座バレエ団チーム&英国ロイヤル・バレエ団チームによる合同公演。世界最高峰の2大カンパニーの俊英たちが同じ舞台で美と技を競うこと自体限られるが、今回は両チームが心を一つにして創り上げる合同作品も上演するのが眼目である。
全体は二部構成。第一部は各チームの名手たちによるパ・ド・ドゥを上演する。
「白鳥の湖」第2幕より(振付:マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ〉は、クラシック・バレエの代名詞の名場面。悪魔によって白鳥に姿を変えられ夜の間だけ人間の姿に戻ることのできるオデット姫と彼女に惹かれる王子を描く。気品を備えたサラ・ラム&ウィリアム・ブレイスウェルが、いかにドラマティックに感情を伝えるのか注目される。
「コッペリア」(振付:ニネット・ド・ヴァロワ)は、ドリーブ作曲によりパリ・オペラ座で初演された名作。牧歌的な村を舞台に、少女スワニルダと青年フランツを主人公にした恋物語で、英国ロイヤル・バレエ団では創設者ド・ヴァロワによる振付が受け継がれる。フランチェスカ・ヘイワード&セザール・コラレスの息の合った踊りが楽しみだ。
「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(振付:ジョージ・バランシン)は、巨匠バランシンの名作でガラ・コンサートの定番曲。落ち着いたアダージオはじまり、躍動に富むヴァリアシオン、ダイナミックなリフトも入るコーダで高揚感を帯びて幕を閉じる。技巧と表現力ともに冴えるマヤラ・マグリ&マシュー・ボールが好演するに違いない。
「グラン・パ・クラシック」(振付:ヴィクトル・グゾフスキー)もガラ・コンサートの定番。1949年にグゾフスキーがオベールの音楽を用いて創った輝かしいグラン・パ・ド・ドゥで、演者は強靭な技術と高い品格を求められる。初演者でオペラ座の伝説の名花イヴェット・ショヴィレが遺したエスプリは21世紀でも健在だ。今まさに脂がのっているブルーエン・バティストーニ&ポール・マルクで観ることができるのがうれしい。

ブルーエン・バティストーニ photo Kiyonori Hasegawa
「カルメン」(振付:ローラン・プティ)は、20世紀フランスを代表する振付家だったプティの初期名作。ビゼーの同題オペラを土台とし、カルメン役をプティのミューズであったジジ・ジャンメール、ホセ役をプティ自身が踊り初演された。オニール八菜&アントニオ・コンフォルティが、プティ一流の愛と死のドラマを鮮烈に魅せるだろう。
「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ(振付:ケネス・マクミラン)は、英国バレエの巨匠にして鬼才であったマクミランの名振付が光る。シェイクスピアの同名戯曲を基に、若い男女の愛の悲劇を疾走感とともに描き尽くす傑作。2023年日本公演(大阪)で披露された金子扶生&ワディム・ムンタギロフによる感動の舞台がよみがえる。
「マノン」より第1幕の寝室のパ・ド・ドゥ(振付:ケネス・マクミラン)もマクミランの名編の見せ場のひとつ。美少女マノンと青年デ・グリューが出会い、恋をし、愛し合う様子をヴィヴィッドに映し出す珠玉のパ・ド・ドゥである。パク・セウン&ポール・マルクという表現力抜群の演者同士による、深みのある舞台となるだろう。
金子扶生&ワディム・ムンタギロフ 『マノン』より photo Kiyonori Hasegawa
第二部では「ラ・バヤデール」よりハイライトを上演。ここではオペラ座チーム&ロイヤルチームの夢の饗宴がついに実現する。
「ラ・バヤデール」(音楽:ミンクス)は、1877年にロシアで初演されたプティパ振付による古典名作。古代南インドを舞台に、寺院の舞姫ニキヤ、戦士ソロル、領主の娘ガムザッティの三角関係を中心に、愛憎渦巻くドラマを繰り広げる。今回はプティパ原振付をベースにした名場面集として構成され、有名なパ・ド・ドゥやソロを当代屈指のスターたちが分担して踊る。両チームの混交ペアも配されているので興味が尽きない。
寺院の場面ではニキヤとソロルをサラ・ラム&ウィリアム・ブレイスウェルが、ガムザッティとソロルの婚約式の場面をオニール八菜&セザール・コラレスが踊り、ブロンズ像のソロ(アントワーヌ・キルシェール)、ニキヤの花かごのヴァリエーション(パク・セウン)を上演。"影の王国"からは、ニキヤ&ソロルをロクサーヌ・ストヤノフ&アントニオ・コンフォルティ、ブルーエン・バティストーニ&マシュー・ボール、金子扶生&ワディム・ムンタギロフ(ヴェールの踊り)、マヤラ・マグリ&ポール・マルクが踊り継ぐ。オペラ座チームの指導に加わる往年の名花フロランス・クレールやロイヤルチームに帯同する名教師オルガ・エヴレイノフの厳しい目が入ることによって、見応えが増すだろう。
ロイヤルチーム出演のAプロ、オペラ座チームによるCプロでは、各自のカラーを味わえるが、このBプロでは両者を見比べる楽しさ、さらには新たなケミストリーにふれる喜びが待ち受けている。ぜひチェックしたい豪華プログラムだ。
文:高橋森彦(舞台評論家)