2025/07/25 2025:07:25:10:06:51[NBS最新情報]
〈バレエ・スプリーム〉Cプログラム ー見どころと演目紹介ー
シリーズでお贈りしている〈バレエ・スプリーム〉の見どころと演目の解説。最終回は本公演のトリをかざるパリ・オペラ座バレエ団チームによるCプログラムをご紹介します。ぜひご一読ください!
パク・セウン photo: Agathe Poupeney
Cプロにはパリ・オペラ座バレエ団チームが出演する。オペラ座バレエは、"太陽王"と称されたルイ14世の時代から数えて350年超の歴史がある世界最古のバレエ団。いわばフランスの国宝。それだけに格式が高いが、昔も今も"バレエの殿堂"であり、古典から現代作品まで多彩な演目を誇る。団員はパリ・オペラ座バレエ学校出身者が大方を占めるが、国籍の幅が広がってきた。そうしたカンパニーの現在を伝える舞台となるのは間違いなかろう。
オペラ座バレエの代名詞といえるのが1980~1990年代に芸術監督を務めたルドルフ・ヌレエフが手がけた、いわゆるヌレエフ版の古典全幕。今回はヌレエフの薫陶を受けたフロランス・クレールが指導に加わり、その精髄を伝える。旧ソ連出身で西側に亡命したヌレエフは天才舞踊手として知られ、古典の再振付の際に高難度かつ独自のニュアンスを加えた。「くるみ割り人形」より第2幕のグラン・パ・ド・ドゥ、「眠れる森の美女」より第 3 幕のグラン・パ・ド・ドゥを、パク・セウン&ロレンツォ・レッリが踊る。セウンは韓国出身で東洋人として初めて最高位エトワールに昇格。アカデミックなテクニックと麗しい体使いが光る。レッリは長身の貴公子として要注目の存在だ。
オペラ座らしいエスプリが感じられる作品として「グラン・パ・クラシック」(振付:ヴィクトル・グゾフスキー)も見逃せない。1949年、オペラ座のバレエマスターの任にあったグゾフスキーがオベールの音楽を用いて創った輝かしいグラン・パ・ド・ドゥだ。踊るのはオニール八菜&ミロ・アヴェック。オニールは2023年3月、待ちに待ったエトワール昇格を果たし勢いに乗る。アヴェックは今春コリフェに昇格した注目株で期待が高まる。

ロクサーヌ・ストヤノフ photo: Yonathan Kellerman
今年5月に新制作された「シルヴィア」(振付:マニュエル・ルグリ)が紹介されるのもうれしい。ドリーヴの音楽によるこのバレエは元々1876年にオペラ座で初演された。今回はヌレエフの愛弟子で長年オペラ座きっての貴公子として君臨したルグリが再振付した話題作からの抜粋である。出演はロクサーヌ・ストヤノフ&アントニオ・コンフォルティ。ストヤノフは2024年12月にエトワールに昇格した逸材で、レパートリーの幅が広い。コンフォルティも現代作品に加え、古典においても実績がある。また両者は「À la manière de...」(振付:ジャン=ギヨーム・バール)も踊るので期待したい。
古典中の古典を踊らせても、オペラ座の精鋭は抜群である。「エスメラルダ」それに「タリスマン」という、マリウス・プティパが振付したクラシック・バレエの名作を踊るのは、ブルーエン・バティストーニ&ポール・マルク。バティストーニは2024年3月にエトワールに昇格し「ジゼル」や「眠れる森の美女」にも主演するなど大躍進中で、華やかにして意思のある踊りが印象深い。マルクは王子役からキャラクター色の強い役柄までこなし、いずれにおいても水際立っている頼もしいエトワールである。
ポール・マルク photo Kiyonori Hasegawa
ロマンティック・バレエの名作「ラ・シルフィード」(振付:オーギュスト・ブルノンヴィル)では、シルフィード(妖精)と彼女に惹かれた青年ジェイムズの交感を描く。カン・ホヒョン&アントワーヌ・キルシェールという実力派が妙技を見せるだろう。ホヒョン&キルシェールは「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(振付:ジョージ・バランシン)も踊る。チャイコフスキーの音楽と一体となって盛り上がる名品での活躍が楽しみだ。
そして、スペシャルゲストとしてロベルト・ボッレが出演。イタリアを代表する国際的なスターで、世界各地で華々しく活躍するレジェンドである。ボッレが踊るのは二曲。
ソロの「TWO」(振付:ラッセル・マリファント)は鬼才マリファントが生み出した傑作。暗闇に照明で狭く区切られた空間の中、腕をはじめとした上体を緩急自在に動かすことによって、スリリングかつ息をのむような空気が充満する。
もう一曲はオニール八菜と踊る「ル・パルク」(振付:アンジュラン・プレルジョカージュ)。フランスを代表する振付家プレルジョカージュが1994年にオペラ座に振り付けた全3幕の大作で、庭園を舞台に男女の一筋縄にはいかない玄妙な愛のドラマが紡がれる。ここではハイライトとなる「解放のパ・ド・ドゥ」を披露する。
ロベルト・ボッレ photo: LauraFerrari
以上駆け足でのご紹介となったが、旬なダンサーたちが多彩な演目を踊るというだけに留まらず、オペラ座の伝統と革新、バレエの昔と今を2時間半に濃縮した演目構成となっていることをお分かりいただけるかと思う。夏の休日の午後にじっくりと味わいたい。
文:高橋森彦(舞台評論家)