「オテロ」全4幕

G.ヴェルディ作曲
「オテロ」全4幕

(上演時間約3時間15分 休憩1回含む)

指揮 :アントニオ・パッパーノ
演出 :キース・ウォーナー
©2017 ROH. Photographed by Catherine Ashmore

あらすじ

5世紀末のキプロス島での物語

嵐の夜、キプロスの総督オテロはトルコ艦隊に打ち勝ち帰還する。勝利の歓喜のなか、ヤーゴは自分を差し置いて副官になったカッシオを妬み、その恨みを任命者オテロに向けている。一計を案じたヤーゴに酒を無理強いされたカッシオは、酔った挙句にモンターノを傷つけ、オテロから罷免される。

ヤーゴは消沈するカッシオに、オテロの妻デズデモナにとりなしを求めることを勧める。これもヤーゴの企みにほかならない。ヤーゴはカッシオがデズデモナと話している様子をオテロに告げ、さも二人が不貞をはたらいているかのように暗示するのだ。妻を愛するがゆえに疑念を抱き始めるオテロに、デズデモナはカッシオへの赦しを願う。ますます疑念を深めたオテロに、ヤーゴはデズデモナのハンカチをカッシオが持っているのを見たと作り話を吹き込む。もはやオテロの疑念は激怒へと変わる。

事態の進展や夫の心情に気づかないデズデモナは、再度オテロにカッシオの赦しを請う。オテロは自分が贈ったハンカチの行方を詰問するが、デズデモナは答えることができない。実はそのハンカチはデズデモナが落とした際に女中のエミリアが拾ったのだが、夫ヤーゴが奪い取ってしまったのだった。

いよいよヤーゴの計略の総仕上げが始まる。ヤーゴはオテロに、物陰からカッシオと自分が例のハンカチを手に話す様子を見せる。妻の不貞が証明されたと確信したオテロは、妻を殺すことを決意する。ちょうどそのとき、ヴェネツィアからの使者が訪れ、オテロはヴェネツィアに帰任、キプロスの後任の総督にはカッシオが任命される。怒りと嫉妬に燃えるオテロは、人々の前でデズデモナを罵倒する。

夫の言動に不吉な予感を覚えながら寝室で床に就く用意をするデズデモナは、女中に死んだら婚礼の衣装を着せてほしいと告げる。やがて現れたオテロは、カッシオとの不倫を責め立て、デズデモナを殺害する。その直後に、エミリアがハンカチは夫が奪ったものと証言し、カッシオに殺されたロデリーゴが死ぬ前にヤーゴの陰謀の全てを白状したことが明らかになる。すべてを知ったオテロは自害し、妻の遺体に最後の接吻を求めながら息絶える。

©ROH. Photographed by Catherine Ashmore
©ROH. Photographed by Catherine Ashmore
©2017 ROH. Photographed by Catherine Ashmore

見どころ&ききどころ

 まずはじめに、オペラ『オテロ』のききどころは、いわゆる「一曲」ではなく、「一場面」としてとらえていくことが必要です。その場面で何が起こっているかを捉えることが重要なのです。たとえば、タイトル・ロールのオテロには、いわゆるアリアはありません。それでも、オテロの心情は深く描きだされるのです。心情表現を逃さないために、ポイントを押さえておいて!

第1幕

幕開きの雷鳴轟く〈嵐の音楽〉と開幕の合唱は一気に聴く者の心をとらえるはず。やがて「喜べ!」と響くオテロの第一声は、英雄オテロの存在を強く印象づけます。

ヤーゴの歌う「喉をうるおせ」は、酒神バッカスを讃える歌。カッシオを酔わせ、騒ぎを起こさせます。

デズデモナとオテロの二重唱「夜の深い闇に」は、官能的で美しい愛をたっぷりと聴かせます。最後の「口づけを」の甘く美しいメロディは、全幕のフィナーレでも登場します。

第2幕

「俺は生まれながらの悪魔だ」と自身の信条を告白する〈ヤーゴのクレド〉はオペラ『オテロ』最大の聴きどころの一つ。

カッシオへの赦しを願うデズデモナは「あなたの不興を買って苦しんでいる方の」と、優しく語りかけますが、オテロの心は苛立ち、ヒステリックになり、遂に、オテロは妻の不貞を確信します。復讐を決意したオテロと、私はあなたの味方ですというヤーゴの二重唱「大理石のような空にかけて誓う!」で幕。

第3幕

デズデモナの「ご機嫌がうるわしいようですね」と、穏やかで美しいメロディでオテロに語りかけるところから二人の対話が始まります。混乱と葛藤に揺れ、次第に興奮を高めるオテロと疑いを否定するデズデモナの緊迫したやりとりには息を飲むはず。

一人になったオテロのモノローグ「神よあなたは私に不幸のすべてを与えられた」は、彼の生き地獄の苦しみを表します。

人々の前でデズデモナを突き倒し「地に伏せろ! そして泣くがいい」と叫ぶところから、壮大なアンサンブル・フィナーレが始まります。デズデモナの悲しみと人々の驚き、その傍らでヤーゴはロドリーゴにカッシオ殺害を命じ、オテロにはデズデモナ殺害を急ぐことを進言するのです。緊迫感高まるなかでデズデモナを呪う言葉を叫び、気を失うオテロ。ヤーゴは「こいつのどこが獅子だ」と嘲笑います。

第4幕

〈柳の歌〉は、不吉な予感を抱デズデモナが歌う哀しい歌。さらに、死を予感しながら〈アヴェ・マリア〉を唱えます。

オテロが寝室に入って来てから二重唱「そこにいるのは誰?」が始まるまでに、第1幕の愛の二重唱の甘い旋律が繰り返され、オテロの心の揺れや慟哭が表されています。

「恐れることはない」は、すべてを悟ったオテロの哀しみと絶望の最期の歌。