レオポルト・マリア・ヴァイラースハイム侯爵:
リッペルトからヴァイスラースハイムまでを治める領主。エドウィンの父親。
アンヒルテ:
侯爵夫人。実は昔ヒルダ・クップファーの名でミスコルツの舞台で歌姫として活躍していた。
エドウィン・ロナルト:
侯爵夫妻の息子。
アナスタシア:
シュタージと呼ばれているレオポルト侯爵の姪。エドウィンのいとこ。
ローンスドルフ男爵:
エドウィンのいとこ。
ボニ・カンチャヌ伯爵:
エドウィンのいとこ。
フェリ・フォン・ケレケス:
ハンガリーの貴族。通称フェリ・バチ。
シルヴァ・ヴァレスク:
チャルダーシュの女王と呼ばれる美人歌手。エドウィンの恋人。
ブタペストにあるヴァリエテ劇場“オルフェウム”、第一次世界大戦前夜(1914年6月)
“オルフェウム”では今夜、チャルダーシュの女王として人気を誇る歌姫シルヴァの、アメリカ・ツアーに出発する前のお別れ公演が開催される。「ハイヤ、ハイヤ、私の故郷は山の中」はお別れ公演のシルヴァ 登場の歌。華やかな公演が終わり、ボニとフェリ・バチは、シルヴァの出発まで夜明かしで飲むことにする。ボニはシルヴァの熱烈なファンで恋心もちょっぴり。しかしシルヴァは若き侯爵エドウィンを愛している。夜遊び好きなフェリとボニは「僕らはみな罪人」と歌い、これにシルヴァや“オルフェウム”の娘たちも加わって歌い踊る「劇場の若い娘たちは」へ。
楽屋にやって来たエドウィンはシルヴァのアメリカ行きをなんとか止めようと愛を告白。はじめはいなそうとしたシルヴァだが、やがて愛し合う二人の二重唱「愛しているのは君だけ!」となる。そこにフェリとボニがやって来て内輪のお別れパーティが始まる。乾杯に続くのは四重唱「幸福は遠くまで追い求めてはダメ」。4人はシャンパンを手に歌い踊る。
そこにローンスドルフが現れ、エドウィンにウィーンの軍隊に入隊するように、と告げる。エドウィンはそれが父親の策略だと気づく。さらに父親が彼の知らないうちにシュタージとの婚約発表まで計画していると知る。ローンスドルフからエドウィンの“婚約”の話を聞いたボニは、シルヴァの悲しみを心配し、自身の想いを吹っ切るかのように「女なんか」と歌い始める。恋は打ち止め、と言いながら、やっぱり女がいなけりゃつまらない、と言ってしまうこの歌は、“オルフェウム”の踊り子たちと一緒に歌って踊る楽しさいっぱいの見どころ。
皆がシルヴァと別れの挨拶を交わしているところにやって来たエドウィンは、シルヴァと8週間以内に結婚すると宣言。感激したシルヴァはアメリカ行きを諦める。公証人が書いた証書にサインした二人への祝福が、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」がチャルダーシュふうに編曲されたような音楽で盛り上がる。
ウィーンへの出発を渋るエドウィンをなんとか送り出したシルヴァに、ボニはエドウィンとシュタージの婚約通知書を見せる。さっきの結婚の約束は茶番だったのね!と怒るシルヴァは、アメリカ行きを決意する。
皆が去った舞台にフェリがひとり。空しい事の成り行きを嘆き、シャンパンのグラスを床に叩き付ける。
8週間後、ウィーンのヴァイラースハイム侯爵邸
ローンスドルフからシルヴァのことを聞いていたシュタージは、エドウィンに彼女のことを問い、今夜のパーティで自分たちの婚約が発表されそうだと告げる。シルヴァが約束を破ってアメリカに行ってしまった理由を突き止めようとしていたエドウィンは困惑しながら、君は僕を愛しているのか?と問う。過去の清算がつくのなら結婚してもよいと考えているシュタージが「私は大きな奇跡を待っている」と歌い始める二重唱「燕にあやかって」は愛らしいワルツ。
もう一度エドウィンに会うため、シルヴァはボニの妻を装ってやって来る。侯爵夫妻、そしてシュタージに“妻”を紹介するボニだが、なんとシュタージに一目惚れ。幼なじみの二人は再会を歓び二重唱「ハイマシ・ペーターとパウル」でハンガリーで過ごした日々を懐かしむ。
一方、エドウィンはボニからシルヴァを“妻”として紹介され驚くが、ボニから事の成り行きを聞き再びシルヴァへの想いを強くする。二人きりになったエドウィンとシルヴァは、二重唱「おぼえているかい?」で、互いに本心をぶつけ合うが、次第に今も愛し合っていることを確かめ合う。
ボニはシュタージに愛を告白。結婚したばかりの夫人がいるのに?!と疑心暗鬼になるシュタージだが、二重唱「それが恋」で、手を取り合い楽しく歌い踊る。抱き合うシルヴァとエドウィンのもとに駆け寄ったボニは、「不定をはたらく女なんて願い下げだ」と、シルヴァとの別れを宣言し、恰好よく去って行く。エドウィンはシルヴァに再び求婚。二人が万感の歓びを歌い踊る二重唱「踊りたい」は、このオペレッタの白眉ともいえるワルツ。しかし、「元伯爵夫人」となることで自分との結婚には問題がなくなるというエドウィンに、シルヴァの心は傷つく。シルヴァは皆の前で、自分がチャルダーシュの女王と称される歌手であることを明かし、エドウィンが書いた結婚の約束の証書を破り、パーティを後にする。
シルヴァとボニが泊まるウィーンのホテル
ホテルに戻ったボニとシルヴァの前に、偶然、ウィーンを訪れていたフェリ・バチが現れる。再会を喜ぶシルヴァだが、劇場には戻らない、ボニと結婚するのだと言う。フェリ・バチは劇場を去ってはいけない、と説得にかかる。ボニが連れて来たシプシー・ヴァイオリンが奏され、フェリ・バチが歌い始めると三重唱「ヨイ・ママン」の始まり。刹那に情熱をかける、このオペレッタの“哲学”がハチャメチャな踊りとともに繰り広げられるこの場面は、超のつく見どころとなっている。
シルヴァを追ってパーティを飛び出した息子を探しにやって来た侯爵に、ボニはシュタージとの結婚を申し出る。
混乱気味の侯爵の前にフェリ・バチが現れる。話をするうちに、侯爵は自分の妻が以前フェリ・バチの恋人で、ミスコルツという田舎で人気の歌姫だったことを知り、卒倒しそうになる。もはやエドウィンとシルヴァのことを言える立場ではなくなった侯爵は二人の結婚を認めることに。最後の仕上げは再びボニが活躍。電話でエドウィンが自殺すると言っている!と、一芝居打って、「エドウィンなしには生きられない」というシルヴァの本心をエドウィンに聞かせる。シルヴァとエドウィン、シュタージとボニ、二組のカップル誕生でめでたし、めでたし。