主な登場人物

ハンナ・グラヴェリ:

ボンテヴェドロの銀行家で大富豪グラヴァリ氏の未亡人。
かつて、ダニロと愛し合っていた。

ヴァランシェンヌ:

パリ在住のボンテヴェドロ公使ツェータ男爵の妻。
カミーユに言い寄られている。

ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:

退役騎兵少尉。パリのポンテヴェドロ公使館の書記官。
ハンナを愛していたが、伯父から相続権を剥奪すると脅され、彼女との恋を諦めた。今でもハンナが気にかかる。

カミーユ・ド・ロション:

フランス人。ヴァランシェンヌを崇拝し、彼女に言い寄っている。

ミルコ・ツェータ男爵:

ボンテヴェドロ国のパリ公使。妻の浮気騒動にやきもきしている。

ニェグシュ:

ボンテヴェドロ公使館書記。

人物相関図
物語の背景

騎兵少尉のダニロ・ダニロヴィッチ伯爵と、貧しい所領管理人の娘ハンナは相思相愛の仲だった。しかし、伯父から相続権を剥奪すると脅迫され、ダニロは身分違いの恋を諦める。他方ハンナは、ボンテヴェドロ国の銀行家である富豪グラヴァリと結婚するが、結婚の数日後に夫が急性して未亡人となる。その後、予備役士官となったダニロはボンテヴェドロ公使館の書記官としてパリに赴任する。しかし、新たな任務に満足できないダニロは、夜毎に高級クラブ・マキシムに出かけ、シャンペンと女たちで気を紛らせている。

第1幕

パリにあるポンテヴェドロ公使館での祝宴を前に、公使ミルコ・ツェータはある決意を固めている。富豪の未亡人ハンナ・グラヴァリがパリの男と再婚することを絶対阻止しようというのだ。そのためツェータは書記官ニェグシュに高級クラブ・マキシムに入り浸っているダニロを呼ぶよう命じる。

ダンナの大わらわの影で、ツェータ夫人ヴァランシェンヌは、フランス人で自分の崇拝者であるカミーユ・ド・ロションをハンナと結婚させようと考えている。カミーユがヴァランシェンヌの扇子に「愛している」と書きつけることが後々の火種に。

ハンナがやって来る。迎える男たちに囲まれたハンナは「殿方のご親切は財産目当て?」(ハンナ登場の歌)とやんわりと皮肉る。

マキシムから戻ったダニロは酩酊状態で、祖国が何だと「おお、祖国よ」(ダニロ登場の歌)と歌う。酔いを覚まさせようと務めるニェグシュは、駄々っ子をあやすお目付け役のよう。

いびきを聞いてダニロだとわかったハンナが、ダニロを起こす。いびきだけで? そう、この二人はかつて恋人同士だったが、身分違いと意地の張り合いで別れたのだった。感激の再会のはずだったが、またも互いに意地を張り合う。

夜会で女性からダンスを申し込む場面では、ハンナが男たちから「踊ってください」と群がる。そこにダニロが女性たちを連れて登場。ダニロはツェータから「疑わしいフランス人をハンナから遠ざけること」と命じられたのだった。やがてハンナはダニロに踊りを申し込む。初めは拒否したダニロだが、二人きりになるとメリー・ウィドウ・ワルツに乗って踊り出す。

第2幕

ハンナが開いたポンテヴェドロ風の祝宴。ポンテヴェドロは架空の国だが、カラフルな色合いや民族色を感じさせる女性たちのドレス、激しい民族舞踊のお祭り気分が幕開けを飾る。ハンナが歌う「ヴィリアの歌」は憂愁に満ちた名曲。

「愛している」と書かれた扇子を、ヴァランシェンヌが落としたことから、持ち主探しが続いている。ダニロは夫たちとともに妻の貞節について思いをめぐらし、やがて7人の男たちは痛快な「女・女・女のマーチ」を歌い踊る。このプロダクションでは、ここで休憩となるが、休憩後、酔いどれ夫たちを夫人たちが追っ払い、今度は女たちが男たちについて思いをめぐらす。男たちとまったく同じように歌い踊る場面(さしずめ「男・男・男のマーチ」?)がつくられたことに、思わず顔がほころんでしまう。効果的な演出の一つとなっている。

ヴァランシェンヌを助けるため、カミーユとの婚約を発表したハンナにダニロは激昂。「王子と王女の物語」を歌い、たとえ話で昔の自分たちの恋といまの自分の心を語り、憂さ晴らしにマキシムへと出かけて行く。ハンナはダニロの自分への深い愛を確信する。

第3幕

ハンナは宴のクライマックスを演出するため、マキシムの女たちを招待する。ここで驚くのは、ヴァランシェンヌが踊り子たちの先頭に立って歌い踊ること。バレエ団が活躍する華やかなフレンチ・カンカンで夜会は最高潮へと達する。

ようやく心を通じ合わせたハンナとダニロは、メリー・ウィドウ・ワルツ「唇は黙し」を歌い踊。