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Photo: Glaviano

2022/12/07(水)Vol.459

旬の名歌手シリーズ2023-1
ヴィットリオ・グリゴーロ メール・インタビュー
2022/12/07(水)
2022年12月07日号
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インタビュー
オペラ

Photo: Glaviano

旬の名歌手シリーズ2023-1
ヴィットリオ・グリゴーロ メール・インタビュー

昨年大好評を得た〈旬の名歌手シリーズ〉。2023年もシリーズ新たなシリーズ展開が予定されていますが、まず第1弾を飾るのは1月のヴィットリオ・グリゴーロ。来日コンサートを控え、今回のプログラムについて、自身の声との向き合い方からプライベートまで、メール・インタビューに応えてくれました。

「オペラの一番良いところばかりを、正統な演奏でお届けします」

――今回のプログラムについてお聞かせください。

グリゴーロ:再び日本に行けることがとても楽しみです。私にとって日本は、親しみ深い特別な国です。今回のプログラムは熟慮を重ねて組みました。オペラの様々な役から、最も美しく有名なアリアを選りすぐりました。ヴェルディ、プッチーニ、ドニゼッティ、ビゼー、マスネなど、音楽史上もっとも偉大な作曲家たちの音楽。オペラの一番良いところばかりを、正統な演奏でお届けします。

――あなたは世界で活躍するイタリアン・テノールですが、フランス・オペラも歌われていて、2023年3月にはスカラ座の新演出『ホフマン物語』でタイトルロールを歌われますね。あなたにとって、フランス・オペラとはどのようなものですか? イタリア・オペラとフランス・オペラを歌うことに違いはありますか?

グリゴーロ:私のレパートリーにはイタリア・オペラばかりではなく、フランス・オペラも数多くあります。実は子供のころ、ローマにあるフランス人学校に通い、フランス語漬けになりました。最初は大変でしたが、お陰で今ではイタリア語と同じくらいフランス語は私にとって大切な言語となりました。華やかな歌唱法と音楽的なフレージングで歌われるイタリア・オペラと比べると、フランス・オペラは大分異なります。でも言語のニュアンスを理解できることは、役柄を解釈するのに大いに役立ちます。そして、イタリア・オペラとフランス・オペラのいずれも、同質の情感をもって演ずることが出来ます。
ホフマン役で再びスカラ座に出演できることはとても楽しみ。『ホフマン物語』は音楽的に非常によく書かれているので、役を演じ易いオペラです。すでに歌ってきた役でメトロポリタン・オペラでの公演はDVDにもなりました。ミラノでの新演出は間違いなく、今シーズンのハイライトの一つとなるでしょう。

――新たな役を選ぶうえで大切にしていることは何ですか? 今後演じてみたい役はありますか?

グリゴーロ:初役にアプローチする際には、検討すべき点が色々とあります。個人的には、自分が共感できる役を選びたいと思っています。つまり自身の個性の一部を表現しているような役。そういう役はより深堀りでき、より良い解釈ができますから。今後数シーズンで、大事なロール・デビューをいくつか控えていますが、公表するのはまだ少し早いかな......。

――ご自身の声の特徴をどのように感じていますか?

グリゴーロ:自分の声を評価するのは難しいですが......特に声質は年月を経て変化していくものなので。大切にすれば声は、良い樽で熟成されるワインのように、時間とともにより良くなっていくんです! 私はこれまで、どちらかといえば声を張り上げずに、技術的には常に冷静に、決して自分の声質に逆らわないよう心がけてきました。レパートリーの幅が広がることで、声はさらに進化し、声量が増し、ニュアンスや音色をより豊かに表現できるようになってきました。最近ではより温かく太く、通る声になってきたと感じています。探求とたゆまぬ勉強の長い道程です。必ずしも易しい道程ではありませんが、観客の皆さんの温かい愛情に支えられています。

Photo: Leva Ukanyte

「母のお腹にいたころからすでに音楽を愛し、音楽が自分の人生になる、と感じていたと思います」

――どのようなお子さんでしたか? ご家庭は音楽的な環境だったのでしょうか? プロの音楽家になりたいと思われたのはいつごろでしたか?

グリゴーロ:子供の頃から常に、活発で元気いっぱいでした......まったくトルネードのような子供! 幼い頃に気づき、今でも信じているのですが、母のお腹にいたころからすでに音楽を愛し、音楽が自分の人生になる、と感じていたと思います。私にとって音が最初の言葉であり、母とのコミュニケーションは話すのではなく、ハミングで始まりました。音楽の本当の魔力とはすべての境界線を消し去ることなのでしょう。歌うということは説明のできない現象ですが、心に真っ直ぐ伝わりますね。
母はよく子守唄を歌ってくれましたが、私のオペラへの情熱は父に負うところが大きいと思います。一緒にオペラのアリアを聴いたり、父は毎朝、洗面所で身支度しながらアリアを数曲歌ってくれました。本当に魔法のような時間でした! 5歳の時、おじが「オー・ソレ・ミオ」を歌った時にはびっくりしました。すごいスーパーパワーの持ち主だ!と思ったんです。僕もいつかそんなパワーを持ちたいと思っていたら、こうなりました。感謝しかありません!

――プライベートでは何をするのがお好きですか?

グリゴーロ:自由な時間にやりたいことは山ほどあります。自然、スピード、空が大好きで......特に飛ぶのが好きです(編集部注:プライベートジェットのライセンスを所持、以前はカーレースにも出場していた)! 今は夫、そして父親になったので、娘たちと過ごし、彼女たちが人生のちょっとした困難に立ち向かうのを手助けする時間を大切にしています。家族と過ごす時間が本当に貴重です。ほかには、絵を描いたり、面白いオブジェを創るのも好きです。実は、私の描いた絵を日本に持っていき個展を開けないか計画しているところです。キャンバスの上で色を通じて表現される私の内なる声が、観客の皆さんにどのように受け止められるのか、とても興味があります。私の、歌手とは別の芸術的な側面を皆さんにお届けできればと楽しみにしています。

――ファンの皆さまへ一言お願いします。

グリゴーロ:コンサートに来てみようと考えていらっしゃる方、あるいは既にチケットを買ってくださった皆さまには、当日はどうか音楽に浸っていただき、よい思い出にしていただければと願うばかりです。皆さまにお目にかかるのを楽しみにしていますし、全力を出し切ることをお約束します。それではお会いする日まで!

グリゴーロより日本の皆さまへ!
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〈オペラ・フェスティバル〉特別企画
旬の名歌手シリーズ2023ーⅠ
ヴィットリオ・グリゴーロ テノール・コンサート

公演日

2023年
1月28日(土)15:00

会場:サントリーホール(東京)

入場料[税込]

S=¥22,000 A=¥20,000 B=¥17,000
C=¥14,000 D=¥9,000 P=¥6,000
U25シート=¥3,000
*ペア割引あり[S,A席]

予定される曲目

ヴェルディ: 歌劇『リゴレット』“女心の歌”
マスネ: 歌劇『ウェルテル』“春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか”(オシアンの歌)
グノー: 歌劇『ロメオとジュリエット』“恋よ、恋よ! ああ太陽よ昇れ”
ドニゼッティ: 歌劇『愛の妙薬』“人知れぬ涙”
オッフェンバック: 歌劇『ホフマン物語』“むかし、アイゼナッハの宮廷に”(クラインザックの歌)
ビゼー: 歌劇『カルメン』“お前の投げたこの花は”(花の歌)
プッチーニ: 歌劇『トスカ』“星は光りぬ”

ほかオーケストラ演奏

指揮:マルコ・ボエーミ*
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

*当初の発表より変更が生じております。詳細はこちらからご確認ください。(1/23付)