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2021/10/06(水)Vol.431

第16回世界バレエフェスティバルを終えて(3)
2021/10/06(水)
2021年10月06日号
TOPニュース
バレエ
第16回世界バレエフェスティバル

第16回世界バレエフェスティバルを終えて(3)

ダンサーとして、アーティストとして、
コロナ禍の中で抱いた思い

〈第16回世界バレエフェスティバル〉に登場したダンサーたちの思いを紹介するシリーズ最終回。
コロナ禍ならではの一人ひとりの思いが語られています。

Photo: James Bort / OnP

アマンディーヌ・アルビッソン

隔離や行動制限などで、どのような滞在になるのだろうかと来日前は少し緊張していましたが、舞台に立った幸福感、特に日本の観客の前で踊れるという恩恵が、その辛さを忘れさせてくれました。この特殊な状況下で〈世界バレエフェスティバル〉に参加できたことに感動し、光栄に思います。

ロックダウン中、トレーニングをしながらも何のために続けているのか分からなくなり、わけもなく具合が悪くなりました。その時、自分には踊ることが生きる上で必要であり、ダンスは自分の一部だと気づきました。舞台でパートナー、観客と交流することが必要だ、と。だからこそ、こうして舞台で観客の前で踊れることに幸せを感じ、より一層感謝の気持ちを持つことができているのだと思います。

Photo: Andrej Uspenski

アレッサンドラ・フェリ

パンデミックのひとつの前向きな側面は「困難と、劇的な人生を分かち合っている」と感じられることですが、みな孤立もしています。今回NBSが勇気をもって力強く、この国際的な公演を開催したことは素晴らしいことで、私たちは歩み、生き、愛することをやり続けなければならないことを示してくれました。驚くほど徹底した準備と対策で出演者と観客を守ってくれました。愛することをやり、共有できることは感動的で、私自身とても勇気づけられました。

第2次大戦中、英国ロイヤル・バレエ団は踊り続け、戦争に芸術を殺させませんでした。同じことで、ウイルスや政府に、芸術を殺させてはなりません。芸術とは、日常生活より高い視座を与えてくれるものです。

Photo: Chris Mann

マルセロ・ゴメス

誰にとっても大変な時期で、それは精神的のみならず、物理的そして経済的にもです。多くの国が様々な困難に直面し、そこには芸術も含まれます。

ドレスデンを出発するまで私自身、少し不安でした。日本で課されることになる様々な厳しい制限の中で、はたして自分たちの仕事をやり遂げられるのだろうかと。しかし来てみると、素晴らしい準備がなされ、快適に安全に過ごせています。そして何より観客が喜んでくださっているのを見たら、すべての努力が報われたと思いました。お客さまから受け取るエネルギーは今までの心配すべてを超えました。〈世界バレエフェスティバル〉が実現されたことに心から感謝していますし、ダンサー全員とって特別で歴史的なことだったと思います。

Photo: James Bort / OnP

マチアス・エイマン

来日を楽しみにしつつも状況が悪くなる可能性も理解し、不安もありました。到着するとNBSのサポートで出演者は守られ、スタジオでは仲間たちとエネルギーを分かち合い、団結感を得る経験になり、喜びしかありません。東京を去る頃には感謝の気持ちでいっぱいでしょうし、私自身、豊かに成長していると思います。

ロックダウンで、私たちは考える機会を与えられました。なぜ踊るのか、私も考えました。ダンスの本質は分かち合うことで、それは公演を通してしか体現できないと認識させられました。この間、家族と過ごす時間も増えました。パンデミックで、私たちの短いキャリアの一時期を無駄にしてしまったようにも感じますが、あるいは違った方法で前進できているのかもしれません。

Photo: ROH. Photograph by Lara Cappelli

金子 扶生

子どものころから、観にいくことを夢みるような〈世界バレエフェスティバル〉に、今回、出演させていただき、スーパースターたちの中で踊らせていただき、本当に夢のような時間です。自分の中で宝物となりました。

舞台に立てない状況が長く続きましたので、これほど大きな公演で沢山の拍手をいただいて、自分が大好きなバレエを続けてきて良かったという思いでいっぱいです。歓声を控えなければならない中、拍手がとても温かく、心まで沁みました。いつも応援を本当に有難うございます。

Photo: Dmitry Starshinov

ヴラディスラフ・ラントラートフ

色々な劇場のダンサーや監督たちと話をしましたが、多くが、この時期にこんな公演を行えるとは信じていませんでした。でも僕は、主催者の皆さんの苦労はわかりませんでしたが、きっと実現できると信じ、この瞬間を待っていました。今、世界中からダンサーが集まるのは、限界以上のことだったと思います。しかもすべてのダンサーに手が届くわけではなく、僕たちはほんの一握り、幸せなチケットを手にしたダンサーでした。

確かに大変な状況ですが、芸術は厳然とそこにあるべきです。芸術は魂であり、人生であり、思考であり、感情であり、動きであり、世界のつながりです。だから壊してはいけない。みんなで力を合わせれば、沢山のことを成し遂げることができると思います。

 

ワディム・ムンタギロフ

フェスティバルへの参加を呼びかけられた時にはとても嬉しかったのですが、その後パンデミックが発生し事態は少しややこしくなりました。参加するかどうか、選択は容易ではありませんでしたが、やはり「ノー」とは言えませんでした。6年前の初出演で、沢山の偉大なダンサーたちと出会えたことが本当に楽しい思い出でしたから。

この1年、気が滅入る日々でしたので、来日はとても明るいひと時となりました。外出できず、ダンサー仲間との会話も限られ残念ではありますが、舞台に立てて踊ることに集中できるのは幸せです。今回8公演もできるのは素晴らしいことで、長らく聞けなかった拍手を聞き、お客さんが喜んでくださる姿に、僕たちの方が励まされ、勇気づけられました。

 

スヴェトラーナ・ザハロワ

今回はAプログラムだけの出演でしたが、全てにおいて心から満足しています。舞台を支えてくださったスタッフの皆さま、この状況の中、劇場に来て大きなあたたかい拍手で応援してくださった観客の皆さま、最高の感動をくれたアーティストの皆さま、私は皆さまのことを心から愛し、感謝を申し上げたいと思います。本当に、今の状況は誰にとっても困難で大変なものですから。そしてまた近いうちに皆さまにお会いできることを願っています。

第16回世界バレエフェスティバルを終えて(1)はこちらから
https://www.nbs.or.jp/webmagazine/special/wbf/20210901-04.html

第16回世界バレエフェスティバルを終えて(2)はこちらから
https://www.nbs.or.jp/webmagazine/special/wbf/20210915-02.html

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