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エディタ・グルベローヴァ 昨年に続き、津波遺児募金へ 1万ユーロを寄付

2012年11月10日 12:02


12-11.10_01.jpgウィーン国立歌劇場2012年日本公演「アンナ・ボレーナ」で日本での最後の舞台を成功裡に終えたエディタ・グルベローヴァ。
昨年のバイエルン国立歌劇場日本公演に続き、今回の日本公演でも出演料のうち、1万ユーロ(約103万円)をあしなが育英会の「津波遺児募金」に寄付いたしました。

先日開催された共同インタビューでも、日本への愛と日本の観客への感謝を繰り返し語っていたグルベローヴァ。数々の名舞台だけでなく、更にこのような形でも日本への想いを示してくれました。

素晴らしい歌声とともに、素晴らしい想い出を残してくれたグルベローヴァに、改めて心からの感謝の気持ちを伝えたいと思います。


photo:Kiyonori Hasegawa


ウィーン国立歌劇場2012年日本公演 閉幕!

2012年11月 5日 12:00

ウィーン国立歌劇場2012年日本公演は、昨日11月4日の「アンナ・ボレーナ」をもって全10公演を終え、閉幕いたしました。

1980年の初来日以来、32年間にわたり15回の来日を重ね、日本の音楽ファンを魅了し続けてきたエディタ・グルベローヴァにとって、日本での最後の舞台となった「アンナ・ボレーナ」。
最終公演の幕が下りた瞬間、場内のあちこちから「ブラヴォー!」と割れんばかりの拍手が湧きおこりました。

熱い拍手と声援の中、再び幕が上がると舞台の左右に日本とオーストリアの国旗を模した垂れ幕が下り、「日本公演の大成功おめでとうございます。4年後、2016年にまたお会いしましょう!」、「皆さまの熱いご声援に感謝します。4年後にまた会えることを楽しみに!」という日墺のメッセージが。

そして舞台下手からは「我らのディーヴァ、グルベローヴァさん!32年間ありがとうございました」と書かれた横断幕が登場。
その後もグルベローヴァへの、感動と感謝、惜別の想いを伝える拍手は鳴りやまず、場内は総スタンディングオベーションに。
カーテンコールが繰り返され、グルベローヴァは、万感の想いが込められた美しい笑顔で応えていました。
グルベローヴァさん、数々の素晴らしい舞台を本当にありがとうございました!


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ウィーン国立歌劇場2012年日本公演は、22日間にわたり、「サロメ」、「フィガロの結婚」、「アンナ・ボレーナ」、そして外来の歌劇場として初めての子ども向けオペラ上演となった≪小学生のためのオペラ「魔笛」≫の4演目、全10公演を上演してまいりました。
ご来場いただきました多くの皆様に改めてお礼申しあげます。

次回のウィーン国立歌劇場日本公演は、4年後の2016年を予定しています。
その日を楽しみにお待ちください!


photo:Kiyonori Hasegawa


エディタ・グルベローヴァ 共同インタビューが開催されました

本日(11月4日)のウィーン国立歌劇場2012年日本公演『アンナ・ボレーナ』が日本最後の公演となることを表明しているエディタ・グルベローヴァが、2日(金)都内ホテルでマスコミ各社との共同インタビューを行いました。

1980年の初来日以来32年間で15回もの来日を重ねてきたグルベローヴァ。
終始笑顔で、日本での数々の想い出を語ってくれました。

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この共同インタビューの模様は、後日、当サイトでお伝えいたします。


ウィーン国立歌劇場2012年日本公演 記者会見レポート

明日(10/14)の開幕を前に、ウィーン国立歌劇場2012年日本公演の記者会見が、東京文化会館で行われました。
『サロメ』のオーケストラリハーサル終了後に行われた記者会見には、ドミニク・マイヤー総裁、日本公演で『サロメ』と『フィガロの結婚』を指揮するペーター・シュナイダー、『サロメ』のタイトルロールを演じるグン=ブリッド・バークミン、ヨカナーン役のマルクス・マルカルトが出席。日本公演への抱負を語りました。

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ウィーン国立歌劇場総裁 ドミニク・マイヤー

今回がウィーン国立歌劇場にとって8回目の日本公演となります。
私が総裁になりましてから、初めての日本公演ですが、私以外の歌劇場のスタッフ、オーケストラのメンバーたちは、何度も日本に来ていますので、みんな「家に帰ってきたような気持ち」と言っています。

ウィーン国立歌劇場は年間300回の公演をウィーンで行っているため、世界中から客演の依頼をいただいていますが、なかなかお応えすることができません。しかし、日本では4年ごと公演を行っており、それからみても、ウィーン国立歌劇場にとって、日本公演のプライオリティがいかに高いかがおわかりいただけると思います。

皆さまもご存じのように、音楽総監督であるフランツ・ウェルザー=メストが腕の怪我のため来日することができなくなってしまいました。毎日治療を続けなければ、今後の指揮活動にも支障をきたすということで、医師からの指示により来日を断念いたしました。マエストロもこの日本公演をとても楽しみにしていただけに、本当に残念に思っています。

代わって『サロメ』を指揮してくださる、ペーター・シュナイダーさんはウィーン国立歌劇場の『サロメ』をもっとも多く指揮している指揮者で、"『サロメ』指揮者"と言ってもよいほどです。先ほどのリハーサルも素晴らしく、ウィーンの聴衆から愛され、ウィーン国立歌劇場管弦楽団のメンバーからも愛されているシュナイダーさんに『サロメ』を指揮していただけることは、私どもにとって大きなプレゼントだと思っております。この場をお借りして感謝の気持ちをお伝えします。

今回の日本公演では、若い歌手たちをぜひ日本の方々にご紹介したいと思っています。
その一人が、『サロメ』のグン=ブリッド・バークミンさんです。シュナイダーさんとは初めての共演ですが、今日のリハーサルでも、新しいサロメが、これだけの素晴らしい歌と演技で表現できる人はいないと褒めていらっしゃいました。
そして、もう一人、ヨカナーン役のマルクス・マルカルトさんです。ドレスデン国立歌劇場とウィーン国立歌劇場という二つの大きなオペラハウスに定期的に出演され、活躍されているマルカントさんをヨカナーン役に迎えられて嬉しく思っています。

最後に<小学生のためのオペラ『魔笛』>についてお話ししたいと思います。2003年からこの作品を上演していますが、つい最近オーストリアの子どもたちに「オペラを見たことがあるか」というアンケートをした際、90%の子どもたちが「ある」と答え、そのうちの90%がこの『魔笛』を見たと答えました。未来のオペラの観客を育てるという意味でもこの作品は貢献していると思っています。
最初の頃は、小澤征爾さんが指揮をしながら、子どもたちにお話しをしてくださっていました。日本公演でも解説をしていただきたかったのですが、残念ながら健康状態がお許しにならないので、今回はパパゲーノ役の甲斐栄次郎さんに歌いながら、日本の子どもたちの間にコミュニケーションを取っていただきたいと思います。オペラだけでなく、楽器の解説もありますし、きっと素晴らしい子どもたちのイベントになると思っています。

こうしてウィーン国立歌劇場のオペラを4年毎に日本でご覧いただけることは私どもにとって大きな喜びです。これからもよろしくお願いします。


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ペーター・シュナイダー(『サロメ』『フィガロの結婚』指揮者)

私が初めて日本を訪れたのは1986年です。ウィーン国立歌劇場と共に来日し、『ばらの騎士』を指揮しました。それから、さまざまな演奏会や公演で何度も来日していますが、日本の観客の皆さんのリアクションはいつも素晴らしいです。ドイツとオーストリア以外の外国では、日本での指揮の回数が多いのではないでしょうか。大好きな日本に、ウィーン国立歌劇場と一緒に帰ってこられたことを嬉しく思っています。

今回は『フィガロの結婚』だけのつもりでしたが、『サロメ』も指揮することになりました。若干やりすぎかなとも思いますが、『サロメ』はこれまでウィーン国立歌劇場で何度も指揮していますし、来年2月も指揮することが決まっています。今回のお話をいただいたときにも、「このウィーン国立歌劇場で」、「このウィーン国立歌劇場管弦楽団で」、「この『サロメ』という作品なら」・・・ということで、お引き受けしました。
このオーケストラは、私がどのように『サロメ』を指揮したいのか、この作品で何をしたいかということをよく理解してくれています。今日も予定より随分早くリハーサルを終えることができました。
今日のリハーサルはとても上手くいきましたが、『サロメ』は歌手だけでなく、オーケストラにとっても、指揮者にとっても、毎回大きな挑戦となる作品なのです。ぜひ皆さん楽しみになさっていてください。


グン=ブリッド・バークミン(『サロメ』サロメ)

日本に来られて、しかも東京に来られて本当に嬉しいです。
今回が、私にとってウィーン国立歌劇場のデビューとなります。ですから、私が今回の公演をどんなに意義深いと思っているかをわかっていただけるのではないでしょうか。きっと、私とって忘れられない公演になると思っております。体調も万全ですし、皆様方のご期待にお応えしたいと思っています。



マルクス・マルカルト(『サロメ』ヨカナーン)

今回、日本に初めてまいりました。ウィーン国立歌劇場と共にソリストとして日本に来られたころを幸せに思っています。
先ほどまで『サロメ』のリハーサルを行いましたが、東京文化会館は素晴らしい音響でした。また日本のオーガニゼーションの素晴らしさにも感動しています。
すでにウィーンでは、シュナイダーさんの指揮で『サロメ』を歌っておりますので、力を十分に発揮できると思っています。よろしくお願いいたします。


ウィーン国立歌劇場2012年日本公演『サロメ』指揮者変更のお知らせ

2012年10月 9日 15:00


10月14日に開幕するウィーン国立歌劇場日本公演で、『サロメ』を指揮する予定となっておりました、フランツ・ウェルザー=メストは、右腕に負った怪我により指揮の動きに激痛が伴うことから、医師から数週間指揮を休むように厳しく命じられ、日本公演での指揮を断念せざるを得なくなりました。
ウェルザー=メストに代わり、今回の日本公演で『フィガロの結婚』を指揮するペーター・シュナイダーが『サロメ』を指揮いたします。
シュナイダーは1984年に『ばらの騎士』を振り、ウィーン国立歌劇場にデビューして以来、ウィーンの数々の作品を指揮。『サロメ』も彼の得意とするレパートリーのひとつであり、2012/13年シーズンにも『サロメ』を指揮することが発表されております。
音楽総監督に就任して初めての日本公演に並々ならぬ情熱を注いできただけに、このような事態になったことをウェルザー=メストも非常に残念に思っており、日本の観客に向けてのメッセージが届いております。併せてご一読いただければ幸いです。
フランツ・ウェルザー=メストの『サロメ』にご期待いただいていた皆さまには、たいへん申し訳ございませんが、この指揮者変更に何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

公益財団法人日本舞台芸術振興会





■フランツ・ウェルザー=メスト 日本の観客の皆さまへのメッセージ

親愛なる観客の皆様

このたび、ウィーン国立歌劇場日本公演の一員としてではなく、こうしてウィーンより皆様にご挨拶をお送りせねばならないことを大変残念に思っております。

大変遺憾ながら、腕の怪我によりウィーン国立歌劇場の日本公演を降板せざるをえなくなりました。数週間、指揮を休むよう厳しく医師より命じられているのです。

これまで日本に何度となくご招待いただき、日本の皆様のクラシック音楽、とりわけオペラへの特別な情熱に触れる機会を得てきました。この皆様の音楽への真の愛情、深い関心を感じることは、アーティストにとっていつも素晴らしく、そして比類のない経験です。加えて、私個人におきましても、今回の日本公演はとても楽しみにしておりました。ウィーン国立歌劇場の音楽総監督として初めて来日し、ウィーンのレパートリーの中でも大変重要な『サロメ』を3公演指揮し、歌劇場の長年にわたる伝統を素晴らしい皆様の国と一緒に称えるという、私にとって大変意義深い公演となるはずでした。

音楽を愛する皆様と日本またはウィーン、いずれかの地で再びお目にかかれますように。そして、8回目となるウィーン国立歌劇場日本公演が皆様に大きな喜びをもたらし、いつまでも思い出に残る素晴らしい公演となりますことを心より願っております。


ウィーン国立歌劇場音楽総監督
フランツ・ウェルザー=メスト


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■ペーター・シュナイダー Peter Schneider


 ウィーン生まれ。ウィーン少年合唱団で活躍した後、ウィーン音楽院で作曲と指揮を学んだ。ザルツブルクとハイデルベルクでコレペティトールやカペルマイスターとして研鑽を積んだ後、ライン・ドイツ・オペラの指揮者となる。ここで数々のオペラのレパートリーを習得した。1978年にブレーメンで音楽監督に就任。1981年からは、バイロイト音楽祭にも出演を重ねている。
 1993/94年シーズンより、バイエルン国立歌劇場およびバイエルン国立管弦楽団の首席指揮者、現在も主席客演指揮者を務めている。
 1995年にはメトロポリタン歌劇場にデビューした。
 ウィーン国立歌劇場には、1984年に『ばらの騎士』を振ってデビュー。以来、『カプリッチョ』、『ドン・ジョヴァンニ』、『フィガロの結婚』、『フィデリオ』、『魔笛』、『さまよえるオランダ人』、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』、≪ニーベルングの指環≫、『パルシファル』、『トリスタンとイゾルデ』、『影のない女』、『パレルトリーナ』など数々の作品を指揮している。2012/13年シーズンには、『サロメ』、『ワルキューレ』、『フィデリオ』などが予定されている。



【ウィーン国立歌劇場】メディア情報(10/3)

2012年10月 3日 15:59

◆週刊新潮 10月3日(水)発売号(10/11号)

「TEMPO」欄にウィーン国立歌劇場「サロメ」の紹介記事が掲載されました。 "ウィーン・フィルで32年ぶり絢爛「サロメ」"


◆朝日新聞 10月1日(月)夕刊

ウィーン国立歌劇場総裁ドミニク・マイヤー氏のインタビューが掲載。"伝統をアップデート"(吉田純子記者)


ウィーン国立歌劇場「フィガロの結婚」 スザンナ役変更のお知らせ

2012年9月20日 11:00

ウィーン国立歌劇場日本公演「フィガロの結婚」のスザンナ役を、当初、アニタ・ハルティッヒと発表いたしましたが、ウィーン国立歌劇場側の都合により、10月20日、23日の2公演にシルヴィア・シュヴァルツが、10月28日の公演にアニタ・ハルティッヒが出演することになりました。なにとぞご了承ください。


「フィガロの結婚」スザンナ:
◎シルヴィア・シュヴァルツ  10月20日(土)3:00p.m.、10月23日(火)5:00p.m.
◎アニタ・ハルティッヒ  10月28日(日)3:00p.m


シルヴィア・シュヴァルツ

12-09.20_01.jpg スペイン人の両親のもと、ロンドンで生まれた。声楽はマドリードの音楽学校で学び、その後ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学に学び、卒業後ミラノ・スカラ座で『ドン・ジョヴァンニ』のツェルリーナでデビューした。
 2005年にベルリン国立歌劇場のメンバーとなり、同劇場で『フィガロの結婚』のスザンナ、『魔笛』のパミーナ、『ドン・ジョヴァンニ』のツェルリーナ、『ばらの騎士』のソフィー、『ファルスタッフ』のナンネッタ、『仮面舞踏会』のオスカルなどを歌って評価を高め、ミュンヘン、ボリショイ、フィレンツェ、パリほかへと活躍の場を広げた。2007年の同歌劇場日本公演でも、『ドン・ジョヴァンニ』のツェルリーナを演じ、好評を得た。
 2010/11年シーズンよりウィーン国立歌劇場のメンバー。これまでに『フィガロの結婚』のスザンナ、『ファルスタッフ』のナンネッタ、『ドン・ジョヴァンニ』のツェルリーナなどを歌っている。2012/13年シーズンには、『ドン・ジョヴァンニ』のツェルリーナ、『愛の妙薬』のアディーナ、『ばらの騎士』のゾフィー、『魔笛』のパミーナでの出演が予定されている。


ウィーン国立歌劇場 明日9/8(土) 10時より第2次発売!

2012年9月 7日 16:34


4年ぶりとなるウィーン国立歌劇場日本公演の開幕まで1か月となりました。

明日9月8日(土)10時より、第2次発売の受付を開始いたします。
第2次発売は、各前売所からの回収分等、そしてカンパニー用に確保しておりました席を一部開放して、NBSチケットセンター(電話予約)とイープラスのみで受付します。一斉前売でご希望のチケットが入手できなかった方は、この機会にいま一度お問合せください。


ウィーン国立歌劇場第2次発売 申込先


●NBSチケットセンター[電話受付] 03-3791-8888

●e+(イープラス)[パソコン&携帯] http://eplus.jp/wso/


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ウィーン国立歌劇場日本公演関連記事を、NBSニュースweb版にてご覧いただけます!
ぜひアクセスしてください!


☆「サロメ」 グン=ブリット・バークミン(サロメ) インタビュー →こちら

☆「アンナ・ボレーナ」 エディタ・グルベローヴァからのメッセージ  →こちら


エディタ・グルベローヴァ ウィーン・レポート(音楽ジャーナリスト:山崎睦)


"エディタ、ダンケ!"沸き起こるウィーンの拍手と歓声


12-07.03_02.jpg 目下、ウィーン国立歌劇場のマーラー・ザールでは伝説の写真家、リリアン・ファイアーの95才の誕生日を祝って歌手の写真展が開催され、オペラの幕間には大勢の人々で賑わっている。ドミンゴ、シュヴァルツコップ、テバルディなど、戦後を代表する世界的名歌手が綺羅星のごとく並ぶなかで、ほぼ中央に位置を占めているのが等身大より大きなエディタ・グルベローヴァのパネルだ。マスネ『マノン』のタイトルロールに扮し、ポネルのデザインによる、目の覚めるようなパープルの衣装を纏った当時37才のグルベローヴァがまっ先に目に飛び込んでくる。ウィーン・デビューから13年、ツェルビネッタ、ルチアと連戦連勝を重ね、オペラ界の頂点に立った頃の艶姿であり、眺める人それぞれに彼女の栄光の軌跡を辿ることになる。
 ウィーンにおける最近のグルベローヴァの実際の活動は、まず4月29日の国立歌劇場での独唱会で、アレクサンダー・シュマルツのピアノ伴奏によりシューベルトの「4つカンツォーネ」などイタリア語による作品と、「ズライカ」、「糸を紡ぐグレートヒェン」等、ヴォルフ「ヴァイラの歌」、「庭師」、「子供と蜜蜂」等、R.シュトラウス「花輪を編みたかった」、「あなたの歌が私の心に響くとき」等、非常に凝ったプログラム。それでアンコールは、やはりシュトラウスの「響け」、そしてデラックワ「ヴィルネル」、ミレッカー「私たち、哀れなプリマドンナ」の3曲で会場を熱狂させた。このプログラムでベルリン、ミラノ・スカラ座等を一巡している。
 その後、5月26日から6月10日にかけてドニゼッティの『ロベルト・デヴェリュー』を4回歌った。共演はホセ・ブロス(ロベルト・デヴェリュー)、ナディア・クラステヴァ(サーラ)、甲斐栄次郎(ノッティンガム公爵)で、指揮はエヴェリーノ・ピド。現在の彼女の当たり役のひとつ、エリザベッタ(エリザベス1世)で老境のイギリス女王の悲哀を余すところなく歌い演じて、まさに圧倒的な大舞台だ。大きなアッチェレランドをかけて音楽を追い上げ、旋律線が上へ上へと駆け上がって、ドラマティックな緊迫度を高めていく彼女のアジリタ技法は依然として最大の武器であり、最強のソプラクート(3点ドより高い音)で最後を決める迫力は比類がない。
 カーテンコールになって、ステージ寄りのロージェ(ボックス席)の手すりに「エディタ、ダンケ!(ありがとう)」と大書された垂れ幕が掛けられ、忠誠を誓う昔からの親衛隊が相変わらず張り切っている一方、立見席に居並ぶ、ほんとうに若い客層からも元気な拍手歓声が飛んで、そのような光景が30分は続いている。ウィーンはグルベローヴァにとって揺るぎない牙城なのだ。ニューヨーク・メトロポリタンオペラでカルロス・クライバーと共演した『椿姫』やミラノ・スカラ座でのドニゼッティ『シャモニーのリンダ』等の成功の後、近年はこれらの劇場からは距離を保っているものの、ヨーロッパではウィーンの他にミュンヘン、チューリッヒ、バルセロナと、彼女の崇拝者はとどまるところがない。
 なお、『ロベルト・デヴェリュー』の指揮者、ピドはグルベローヴァとは今回がはじめての共演になり、今秋の日本での『アンナ・ボレーナ』でも指揮することになっている。誇り高いプリマドンナをサポートしなければならないのが指揮者の役割だが、いまやベルカント・オペラの第一人者たるピドは、その辺の呼吸も確かで、今回の『ロベルト』公演を輝かしいフィナーレに導いた功労者に違いない。

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 さらに、6月20日からはじまる国立歌劇場の今シーズン最後の演目、ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』4公演で大混乱が生じている。予定されていたディアナ・ダムラウの不都合により、はじめの2公演がロシア人のヒブラ・ゲルスマーワに交代。ところがそのヒブラもダウンして、1回目はフランクフルト専属のアメリカ人、ブレンダー・レーを登場させるという二転三転ぶり。
 周知のように、従来この演目はグルベローヴァが長年歌っていて、キャンセルもほとんどなく、つねに抜群の安定度を誇っていたものだが、彼女がこの役を歌わなくなった途端の騒動だ。ウィーンのランクの劇場でルチアを歌える歌手を探すのが困難なわけで、この様子では今後ますますベルカント・オペラの上演は減少するだろう。そこで、あらためてわかるのが、"不世出のディーヴァ"、グルベローヴァの偉大さなのだ。


山崎 陸(在ウィーン 音楽ジャーナリスト)
NBSニュース vol.305より転載



※写真は4月29日に行われたリサイタルより(photo:Wiener Staatsoper / Michael Poehn)

◆ウィーン国立歌劇場公式サイト「アンナ・ボレーナ」>>>


ウィーン国立歌劇場<小学生のためのオペラ「魔笛」>公式サイトオープン&7/2より親子券の先行抽選予約受付開始

2012年7月 2日 09:29

ウィーン国立歌劇場が今秋の日本公演で初めて上演する<小学生のためのオペラ「魔笛」>の公式サイトがオープンいたしました!

また、本日7月2日(月)10時より、親子券[子ども(小学生)+大人]の先行抽選予約の受付をスタートします。
公式サイトにアクセスしていただき、先行抽選予約のメールフォームよりお申込みください。


世界最高峰のウィーン国立歌劇場が、日本で初めて上演する子どものためのオペラ。
"びっくりするような歌声や美しい演奏と、わくわくする楽しさ"に溢れた本物のオペラをご家族で体験してください!

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●ウィーン国立歌劇場<小学生のためのオペラ「魔笛」>公式サイト


ウィーン国立歌劇場日本公演 「サロメ」ヘロディアス役がイリス・フェルミリオンに決定!

2012年6月28日 16:59

12-06.28_cast.jpgウィーン国立歌劇場日本公演『サロメ』のヘロディアス役は、イリス・フェルミリオンが演じることが決定いたしました。
ウィーン国立歌劇場のほか、バイエルン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座でも成功をおさめているフェルミリオンのヘロディアス、どうぞお楽しみに。














photo:WienerStaatsoper/MichaelPoehn


ウィーン国立歌劇場 小学生のためのオペラ「魔笛」公演詳細決定!

2012年6月 8日 15:59


ウィーン国立歌劇場が誇る、子どもの心に届く"本物"の楽しさ!


12-06.07_02.jpg今回のウィーン国立歌劇場日本公演では、3つのオペラ上演のほかに、「小学生のためのオペラ『魔笛』」の公演も実現します。これまで外来の歌劇場が子ども向けの作品をもってきたことは一度もありませんでした。わが国のオペラの観客も年々高齢化が目立ちますが、次世代の観客を育てることは差し迫った課題になっています。また近年の情報機器の急激な発達・普及により、子どもたちの情操の問題が取り沙汰されておりますので、情操教育の一環としてオペラ鑑賞の機会を子どもたちに提供することは、子どもの心の健全な育成のために大きな意義があると考えています。こうした背景から、このたび世界最高峰のウィーン国立歌劇場が来日するにあたり、NBS では初めて子どものためのオペラ上演に踏み切ることにいたしました。これをきっかけにこうした子ども向けの活動が関心を呼び、子どもたちの舞台鑑賞の機会が増えることを願っています。
ウィーン国立歌劇場で毎年2 月に行われる大舞踏会は世界的にも有名ですが、この催しのために客席を取りはらった平土間を使って、子どもたちにオペラを体験させようと、2003 年から前総裁イオアン・ホーレンダーと前音楽監督小澤征爾によって始められたのがこの子どものためのオペラです。パパゲーノ役の歌手がナビゲーターとなって、オペラの物語や楽器を紹介していきます。およそ1時間とコンパクトにまとめられていますが、主要アリアは網羅されているうえ、演奏がウィーン・フィルのメンバーとなれば上演の質は世界の一級品にほかなりません。
「オーストリアの子どもたちに、オペラを観たことがあるかというアンケートをとったところ、Yes と答えた子どもの80%が、この子どものためのオペラを挙げました。子どもにとっては、舞台と客席ではなく、手が触れられる距離であることはとても重要な経験なのです」と、現総裁のドミニク・マイヤーは語ります。今回の日本公演では、ウィーン国立歌劇場でも活躍している甲斐栄次郎がパパゲーノ役を演じ、日本語で直接子どもたちに語りかけます。子どもたちが最も大きな反応を見せる「夜の女王のアリア」を歌うアルビナ・シャギムラトヴァはこの役でウィーン国立歌劇場にデビューした実力派。さらに、パパゲーナ役のヴァレンティーナ・ナフォルニータはマイヤー総裁のお墨付き。「彼女はカーディフなどの大きな国際コンクールで優勝していますが、私はそれよりも前にイタリアのコンクールで彼女の才能に出会い、すぐにウィーンに来て勉強するようにしたのです」 「オペラは長時間、お行儀よく聴かなければならない」と考えるのは、残念ながら子どものころに「わくわくするような楽しさとびっくりするような歌声や美しい演奏が次々出てくる」"本物" の体験をしていないからなのではないでしょうか。


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ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
〈小学生のためのオペラ 「魔笛」〉

Wolfgang Amadeus Mozart Die Zauberflöte für Kinder

第19回神奈川国際芸術フェスティバル



12-06.07_01.jpg[指揮]パウル・ヴァイゴルト Conductor:Paul Weigold

[演奏]ウィーン国立歌劇場管弦楽団
Orchester:Orchester der Wiener Staatsoper


[出演]
ザラストロ:イル・ホン
Sarastro:Il Hong

タミーノ:カルロス・オスナ
Tamino:Carlos Osuna

夜の女王:アルビナ・シャギムラトヴァ
Die Königin der Nacht:Albina Shagimuratova

パミーナ:アレクサンドラ・ラインプレヒト
Pamina:Alexandra Reinprecht

パパゲーノ:甲斐栄次郎
Papageno:Eijiro Kai

パパゲーナ:ヴァレンティーナ・ナフォルニータ
Papagena:Valentina Naforniţă

モノスタトス:ヘルヴィック・ペコラーロ
Monostatos:Herwig Pecoraro


[公演日] 2012年 10月26日(金) 6:00p.m. 開演

[会場] KAAT神奈川芸術劇場 ホール

[チケット発売方法]
●親子券(子ども席+大人一般席) FAX先行抽選予約 7月下旬より受付開始予定

●親子券(子ども席+大人一般席) 一斉発売 8月下旬開始予定
 ※先行抽選予約で残券があった場合に発売いたします。

●大人一般席 一斉発売9月中旬 開始予定
 ※親子券発売後、残席があった場合のみ、発売いたします。

[お問い合わせ お申し込み]
NBSチケットセンター TEL03-3791-8888(平日10:00~18:00、土曜10:00~13:00)


[主催] 公益財団法人日本舞台芸術振興会/日本経済新聞社
[提携] KAAT神奈川芸術劇場(指定管理者:(公財)神奈川芸術文化財団)
[後援] オーストリア大使館/神奈川県教育委員会/横浜市教育委員会


photo:Wiener Staatsoper/Michael Poehn


ウィーン国立歌劇場音楽総監督 フランツ・ウェルザー=メスト インタビュー

2012年5月11日 17:34

『サロメ』を選んだのは、
"ウィーン・フィル"によってのみ可能な、最高の上演を確信するから!



取材・文:山崎睦(在ウィーン 音楽評論家)



音楽総監督としての展望、日本で振る"ウィーンの『サロメ』"の魅力など、4月初旬のインタビューでは、フランツ・ウェルザー=メストの自信と確信が語られました。


Q:まずは3月の叙勲おめでとうございます。"勲一等学術芸術栄誉勲章"はオーストリアでは最高位の勲章であって、いま52才でこの勲章が授けられると、次はどうなるのでしょう。

フランツ・ヴェルザー=メスト(以下FWM):ありがとうございます。じつはこの国の叙勲システムをよく知らないので、将来については見当が付きません(笑)。


Q:ウィーン国立歌劇場の音楽総監督(GMD)に就任されて、ほぼ2シーズンとなりますが、事前の期待と、その後の現実とのギャップについて、どのように考えられますか。

12-05.11_WELSER-MOEST.jpgFWM:私が国立歌劇場にデビューしたのは1987年のことだから、当時のことはともかく、2010年のGMD就任前に、06年からR.シュトラウス『アラベラ』、ワーグナー《ニーベルングの指環・四部作》、『タンホイザー』と続けてプレミエで出しているので、様子はすでに良く分かっていて、いまのポストに就いた後も、ことさらギャップはありません。


Q:国立歌劇場でオーストリア人が音楽面のトップに立つのはカラヤン以来、じつに46年ぶりとなります。世界最高の歌劇場の頂点に当たる地位だから、あらゆる指揮者にとっての究極のポストであることに違いはないですが。

FWM:カラヤンの前にはベームがいて、彼らの同国人の後継者として、たいへん栄誉なことであると同時に大きな責任も感じています。ただ、当時といまでは歌劇場を取り巻く環境がまったく異なるわけで、それらを踏まえたうえで21世紀における前進、充実をつねに考えているところです。


Q:ウィーン国立歌劇場の魅力や特徴について、最高責任者としての見解は。

FWM:歴史、伝統、格式といったこととは別に、まず毎晩の上演内容のレベルの高さに注目すればウィーンに匹敵する歌劇場はないでしょう。たとえばこの3月に限っても、私自身がR.シュトラウス『影のない女』、『トスカ』、ヒンデミット『カルディヤック』を、ド・ビリが『タンホイザー』を指揮し、復活祭の『パルジファル』をティーレマンが準備しています。他に『フィガロの結婚』、『ドン・ジョヴァンニ』、『シモン・ボッカネグラ』、『蝶々夫人』、『愛の妙薬』等を、それぞれ第一線級の歌手で提供しているオペラハウスはないですよ。演目数が年間55程度と数が多いだけではなく、フランス・オペラ、スラヴ物などのバランスといい、素晴らしい充実度を誇っています。


*  *  *  *  *



Q:今回、日本で指揮される『サロメ』に話題を移しましょう。国立歌劇場は1980年に一度『サロメ』を日本で客演していますが、再度上演する意味、またバルロク演出のプロダクションの魅力について。

FWM:私がGMDとしての最初の日本ツァーに『サロメ』を決めたのは、"まずオーケストラありき"ですよ。国立歌劇場管弦楽団は周知のようにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(VPO)と重複していて、このオケあってこそのシュトラウスということを強調しておきたいです。カラヤンはウィーンを退出した後、ベルリン・フィルと多数のオペラをレコーディングしていますが、自分が大切にしていたR.シュトラウスの作品、なかでも『サロメ』に限っては、夏のザルツブルク音楽祭もふくめて、VPO以外とは演奏しようとはしなかったですよね。私も彼とまったく同意見であり、作曲家のイメージした世界が、多様な色彩感、自由で即興的な速度と音量の揺れ、そしてなによりも世紀末の雰囲気をこれほど見事に再現できるのはVPOをおいて他にはないでしょう。ウィーンの『サロメ』こそ、稀代の管弦楽法の名人であったシュトラウスの真髄をつたえるものであると確信します。バルロク制作のステージに関しては、世紀末ウィーンのユーゲントシュティールの画家であり、今年生誕150年になるクリムトを大胆に写した舞台美術・衣裳とあわせて作曲当時の世相である爛熟、退廃した空気感が濃厚に伝わってくる素晴らしいステージです。プレミエから40年経っていることなど、まったく超越していて、VPOの演奏と織りなす絶妙のコンビネーションが今回の『サロメ』の見どころ、聴きどころとなります。


Q:ドイツ人ソプラノで題名役に扮するグン=ブリット・バークミンについて。

FWM:バークミンを、私が直接ウィーンでオーディションして起用することにしました。たいへん個性的で演劇的才能があり、なによりもテキストを舞台に反映させる表現力が非常に優れています。私がサロメ役の歌手に求めるものに、まさに該当するからです。


Q:2007年のチューリッヒ歌劇場との『ばらの騎士』以来、日本ではR.シュトラウス指揮者というイメージが強くなりますが。

FWM:そういうふうに見られることに関しては、むしろたいへん名誉なことだと思いますよ。20世紀のオペラ作家として傑出した彼の作品を演奏するのに最適なVPOを擁する歌劇場で、私が指揮できる境遇にあることを感謝したいほどです。来シーズンに『ナクソス島のアリアドネ』、その先に彼の晩年の『ダーナエの愛』、『エジプトのヘレナ』も取り上げるつもりで、私のこの作曲家に対する偏愛は、いっそう強くなっています。


photo:WienerStaatsoper/Michael Poehn


※NBSニュースvol.303より転載


エディタ・グルベローヴァ ウィーン国立歌劇場「アンナ・ボレーナ」が日本最後の舞台に!

2012年5月10日 16:55


12-05.10Gruberova.jpg ウィーン国立歌劇場総裁ドミニク・マイヤーの記者会見レポート(5/7付)でもお知らせしましたが、"完全無欠のコロラトゥーラのプリマ・ドンナ""ベルカントのディーヴァ"と称賛され、30年以上にわたって日本の聴衆を酔わせてきたエディタ・グルベローヴァが、今秋のウィーン国立歌劇場公演「アンナ・ボレーナ」を日本における最後の舞台とすることを、彼女の所属エージェントを通じて正式に発表しました。グルベローヴァは歌手として日本の舞台から退くことを決意しており、今後はリサイタル等での来日もありません。

 グルベローヴァは1970年にウィーン国立歌劇場の「魔笛」の夜の女王で本格的なデビューを飾り、カール・ベーム指揮による「ナクソス島のアリアドネ」でツェルビネッタを歌って一躍国際的な注目を集めました。1980年にはウィーン国立歌劇場とともに来日。「後宮からの逃走」のコンスタンツェと「ナクソス島のアリアドネ」のツェルビネッタを歌い、圧倒的な美声と驚異的な技巧をもって日本初登場の舞台をセンセーショナルに飾りました。

 その後もウィーン国立歌劇場、フィレンツェ歌劇場、バイエルン国立歌劇場とともに来日し、「ランメルモールのルチア」と「シャモニーのリンダ」のタイトルロール、「椿姫」のヴィオレッタ、「ドン・ジョヴァンニ」のドンナ・アンナ、「ロベルト・デヴェリュー」のエリザベッタで登場。また1987年の第1回を皮切りに12回にわたって開催したリサイタルはつねに熱狂を巻き起こし、2003年には自身満を持しての「ノルマ」全2幕を演奏会形式で実現、深い感銘を与えました。

 昨秋のバイエルン国立歌劇場公演前のインタビューで、グルベローヴァは日本の観客について、「日本のファンの皆様とは深い結びつきを感じており、誠実な応援には感謝の念が絶えない。近しい友だち、家族のようにも感じています」と語っています。今回の「アンナ・ボレーナ」は、彼女が日本への特別な想いを込めて歌うファイナル・ステージとなります。希代のディーヴァ、グルベローヴァの天上の歌声を心に刻み込むために、ぜひ劇場にお運びください!


※近日中にエディタ・グルベローヴァのインタビューを掲載します。楽しみにお待ちください。


photo:WienerStaatsoper/Michael Poehn


ウィーン国立歌劇場ドミニク・マイヤー総裁 記者懇親会レポート(音楽評論家:加藤浩子)

2012年5月 7日 16:19

5月1日、ウィーン国立バレエ団日本公演に合わせて来日したウィーン国立歌劇場総裁ドミニク・マイヤー氏の記者懇親会が開催されました。
音楽評論家の加藤浩子さんに懇親会の模様をレポートしていただきました。




選り抜きの3本に、特別なお土産!
〜ウィーン国立歌劇場総裁ドミニク・マイヤー氏、来日公演を語る



音楽評論家:加藤浩子

12-05.07WienSO01.jpg オペラハウスは数あれど、総合的な意味で世界一のオペラハウスはどこかときかれたら、ウィーン国立歌劇場に指を折るひとは多いのではないだろうか。公演の水準の高さ、内容の幅広さ、回数の多さ、建物の豪華さ、雰囲気の素晴らしさ、そして、チケットが毎夜ほぼ完売という人気・・・そのすべてが揃っている歌劇場は、他にない。
 ウィーン国立歌劇場総裁、ドミニク・マイヤー氏が強調するウィーン国立歌劇場の最大の長所はこれだ。「世界一のオーケストラがピットに入ることです。歌劇場では「ウィーン国立歌劇場管弦楽団」と呼ばれるこのオケは、コンサートホールでは「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」と呼ばれるのです」。
 世界一のオーケストラ、ウィーン・フィルが演奏するオペラを体験できるのは、たしかにここだけだ。そのオペラを享受する贅沢を、日本のオペラファンは1980年以来満喫してきた。ちなみに来日公演のような外国公演の間も、ウィーンでは公演が続けられる。こんなオペラハウスもまた、他にない。
 8度目の来日となる今回の演目は、《サロメ》《フィガロの結婚》《アンナ・ボレーナ》。マイヤー総裁によれば《サロメ》は、2010年に音楽総監督に就任したウェルザー=メストの希望だという。「メスト氏がシュトラウスを得意にしていることは、よく知られています。そして、かつて音楽監督をつとめたこともあるシュトラウスの作品は、国立歌劇場ではとても愛されているのです。なかでも《サロメ》は毎年のように上演されており、オーケストラのメンバーは暗譜でも弾けるほど作品になじんでいます」(マイヤー総裁。以下M)
タイトルロールに抜擢されたのは、ドイツが生んだドラマティック・ソプラノ、グン=ブリット・バークミン。チューリッヒでも《サロメ》を歌っており、「メストじきじきの希望」(M)だという。若い才能を見出すことには定評のあるウィーンのこと、耳の肥えた日本のオペラファンをも満足させてくれるに違いない。

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 若い才能をきらめかせる作品といえば、モーツァルトのオペラほどそれに適した作品はないだろう。ソロとアンサンブル、双方の聴きどころが揃ったモーツァルト・オペラは、スターから新人まで、ありとあらゆる歌手の力を発揮させる力を持っている。大傑作《フィガロの結婚》では、これぞウィーン、と喝采したくなるポネル演出の名舞台で、ベテランのシュナイダーの棒のもと、大スターとフレッシュな顔ぶれが競演する歌手たちが最大の魅力だ。伯爵夫人に、この役を歌わせたら右に出るひとはいないバルバラ・フリットリが扮するのをはじめ、カルロス・アルヴァレス(伯爵)、アーウィン・シュロット(フィガロ)らトップスターが揃うのに加え、27歳!のチャーミングなルーマニア人ソプラノ、ハルティッヒ(スザンナ)ら、専属歌手として活躍する若手が大胆に起用されている。「ハルティッヒはモーツァルトの諸役で聴衆を魅了し、すっかり人気者になりました。昨年は代役で《ラ・ボエーム》のミミをスカラ座で歌い、大成功を収めています。今後メトなどでもミミ役を歌う予定です。ウィーンではこのように優秀な若手を専属にし、抜擢して、将来のスターを育てているのです」(M)

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ウィーンが世界に誇る専属歌手のシステムが将来のスターを育んでいることは、数々の実例で証明されている。このほど「オーストリア宮廷歌手」の称号を得たフリットリも、90年代の一時期を専属歌手として過ごした。
だからウィーンでは、素晴らしい歌手の伝統が絶えることなく続いているのだ。
 専属歌手から巣立った大スターといえば、まっ先にあげたい名前がエディタ・グルベローヴァ。ドニゼッティやベッリーニのベルカントオペラの傑作がウィーンで復活し、また上演され続けてきた大きな理由は、グルベローヴァの存在にある。日本公演でも語り草となっている数々の名演を残しているのは、オペラファンならご承知だろう。
 そのグルベローヴァが今回披露するのは、ドニゼッティの出世作《アンナ・ボレーナ》。ヘンリー8世の2番目の王妃アン・ブーリンをヒロインに据えた「女王もの」で、2010年に制作されたばかりのプロダクション(ジェノヴェーゼ演出)だが、何とその時がウィーン国立歌劇場初演だったという。「このような傑作がまだ上演されていなかったのは、大きな驚きでした。私は幸運だった(笑)」(M)。本作のようなウィーンでは知られていない傑作を、積極的に国立歌劇場で初演したいというマイヤー総裁にとって、願ってもないプロダクションだったことだろう。グルベローヴァがこのウィーンのプロダクションに出るのは来日公演が初めてとなる。残念ながら、グルベローヴァ&ウィーン国立歌劇場の来日公演はこれで最後になるとのこと。私たちの記憶に永遠に残る舞台になるのではないだろうか。

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 共演者も選り抜きだ。アンナのライヴァル、ジョヴァンナ役を歌うのは、ベルカントメッゾの最高峰、ソニア・ガナッシ。私事で恐縮だが、この3月にフィレンツェで聴いた同役は圧倒的だった。完璧なベルカントのテクニックに、色めいた艶のある声で聴き手を引き込む。現役の歌手では世界最高のジョヴァンナだろう。エンリーコ8世には、人気沸騰中のイタリア出身のバス、ルカ・ピサローニ。美声と色気、そして「パーソナリティがある」(M)魅力的な歌い手だ。やはり専属歌手から出発し、今やスター街道ばく進中のメッゾ、クールマンが歌うスメトンにも注目して欲しい、とマイヤー総裁。「ワーグナーもレパートリーにしているほど声がフレキシブル。暗い声質もズボン役に向いています」(M)。ベルカントオペラの第一人者、エヴェリーノ・ピドの指揮も楽しみ。「デセイが初めてベルカントオペラに挑戦した時に指導をした、この方面のベテランです」(M)。

12-05.07WienSO02.jpg 今回の来日公演では、この豪華3演目に加え、とびきりの手土産が用意されている。「ウィーンでとても重要な位置を占めている」(M)という、《子どものためのオペラ魔笛》がそれ。「ウィーンに住んでいる子どもに、オペラを観たことがあるかどうかアンケートを取った時、「観た」と答えた子どもの8割が《子どものためのオペラ魔笛》を観ていました」(M)
 何事も大切なのは、「はじめの一歩」。とくに感受性の鋭い子どもには、本物に接してもらいたい。そう思う方は少なくないだろう。ウィーン・フィルと国立歌劇場の専属歌手たちによる《子どものためのオペラ魔笛》は、演目も含めて理想的な「はじめの一歩」ではないだろうか。劇中随一の人気者のパパゲーノを歌うのは、専属歌手として活躍する甲斐栄次郎。もしかしたらその日の客席から○○年後、「第2の甲斐栄次郎」が現われるかもしれない。


舞台写真クレジット
WienerStaatsoper/MichaelPoehn(「サロメ」「アンナ・ボレーナ」)
WienerStaatsoper/Axel Zeininger(「サロメ」「アンナ・ボレーナ」)


ウィーン国立歌劇場2012年日本公演オフィシャルサイト オープン!

2012年4月16日 18:31

今秋10月~11月、東京・横浜で開催されるウィーン国立歌劇場2012年日本公演のオフィシャルサイトサイトがオープンしました!
音楽の都ウィーンが誇るオペラの殿堂、ウィーン国立歌劇場4年ぶりの日本公演にご期待ください!



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●ウィーン国立歌劇場2012年日本公演公式サイト 


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