- 2008年3月24日 17:43
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取材・文/佐藤友紀(フリーライター)
―――アンティゴネさんって、名前からするとギリシャ系では?
「父はソティリオスというファーストネームをソトにして、姓もまた字を一つ落としているんだけど(笑)。私は父方の祖母の名前であるアンティゴネも姓の方もちゃんと純ギリシャ系であることを提示しているのよ」
―――マリア・カラスとか、最近で言うとティオドッシュウとか、ギリシャ系の時々すごい歌手が出てくるのはなぜでしょうね。
「アグネス・バルツァもいるわよ(笑)。だけど、マリア・カラスにしたって、最初はギリシャ系の名前は使ってなかったでしょう。それに国の大きさといい歌手が出演する確率だったら、スカンジナビアの方が上じゃないかしら。ただ、ギリシャって音楽に限らず、演劇とかの伝統が長いということはいえるかもしれないな。文化的土壌に関しては」
―――それもあって、あなたのボッカチオは芝居部分も見応えがあるのかな。
「私がラッキーだったのは、音楽学校で、最初の頃にあった演劇の授業で、先生が自然に演じることの重要性を教えてくれたの。カルメンであろうが、ヴィオレッタであろうが、とってつけた演技をするのではなく、ちゃんと役柄の人物に入り込み、その人物の日常のように自然に動けなければいけない、と。もちろん歌の勉強も大事だけど、オペラやオペレッタをやるからには、芝居部分をおろそかにしては台無しだと教わったのよ。特に『ボッカチオ』のような作品の場合、私の歌う声はどうしたって女性よね。でも、芝居をする時は、男っぽい低い声で喋るころもできる。そうなると、そのバランスがとっても大切で、演技はより重要になってくるのよ」
―――『マトリックス』の例が出たように、オフタイムは芝居や映画を?
「もう映画中毒といっていいくらい!いろんな映画からインスピレーションを得ているわ。例えばウォン・カーウァイ監督の『花様年華』なんて、服からナプキンにいたるディテールに、目線の絡ませ方・・・。もう完璧と言える。ただ、オペラの場合は映画みたいに何カットも撮ってもらえないから(笑)、本番1回で素晴らしい表現にしなくちゃいけないの。でも、映画もオペラやオペレッタからインスピレーションをもらってるのよ(笑)。ロミー・シュナイダーやソフィア・ローレンの出演作の中には『ボッカチオ』的ストーリーのものもある。お互い様ね。実は私がカルメンを演る時、一番参考にしたのは、カルロス・サウラ監督のフラメンコ版『カルメン』なの。もう、あのときはフラメンコ教室にも通いつめたわ(笑)」
―――勉強というか、いろんな方面からヒントを得るのが大好きなんですね。
「ええ。今こうしてカフェにいる間も、向こうの席のおじさん3人は『ボッカチオ』みたいに女性談義しているのでは?って創造したり(笑)。そして、役も作品もどんどん肉厚になっていくのよ」
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