英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 アリーナ・コジョカル「眠れる森の美女」の魅力と意欲を語る ピーター・ライト版 Photo: Bill Cooper

Photo:Bill Cooper

 さる2月、 ハンブルク・バレエ団の2年ぶりの日本公演に参加したアリーナ・コジョカル。かねて当たり役とうたわれていた『椿姫』の主人公マルグリットを、日本の舞台では初めて全幕版で披露した。静謐でありながら万感が溢れ出す妙演は、観客の脳裏に深く刻み込まれたことだろう。
 昨秋に長女を出産してからの来日も、初めてのことだった。
「娘が生まれて4ヵ月、毎日、全力疾走しています。一日で一週間分の仕事をこなしている、と感じてしまうくらいです。娘と一緒にいる時の私は、100%、母親です。彼女には母親が必要で、私は彼女のたった一人の母親ですから。稽古場では、100%のエネルギーを踊りに注ぎます。子育てとキャリア、どちらも100%。これが私にとってのベストなバランスです」
 長年のパートナーにして夫君でもあるヨハン・コボーの名サポートを得て、キャリアと子育ての両方に全力を注いでいるという。明晰な話ぶりから、コジョカルの思考のスピード感と、公私ともに充実した日々を過ごしている様子が伝わってくる。母は強し、の喩え通りだ。
「頭のなかでやるべきことを整理し、素早く優先順位を判断し、いま、その瞬間にするべきことに集中します。自宅に戻ってから5分でも体が空けば、エクササイズをする、というように。もちろん、娘が泣き出したら、すぐに彼女のところに駆けつけます。バレリーナのキャリアは短く、無駄にできる時間なんて、ありません。バレエと育児の両立は簡単ではありませんが、どんなに疲れていても、子供の顔を見ると心が穏やかになり、母親としてバレリーナとして、もっとできる、何でもできる、という気持ちになるんですよ。出産前より大きな幸せと達成感を感じています。幸い、夫はとても協力的で、長期のツアーに出かける時には、私の母がロンドンに来てくれます。ほんとうに成し遂げたい、という信念があれば、困難を克服する方法は見つけられるものです」
 次回の来日予定は、5月。英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団が東京で上演する『眠れる森の美女』に主演する。
「16歳の頃から踊ってきた、大好きな作品です。『白鳥の湖』のように古典バレエのエッセンスが凝縮されています。オーロラ姫が踊るソロは、それ自体が芸術品のように魅惑的。純粋にクラシックのラインを見せる場面があれば、ドラマティックな演技を見せる場面もあります。すべてのバレエダンサーは、この作品を踊り、バレエの規範を身につけなくてはなりません。そのうえで、ケネス・マクミランの作品のような、より現代的な作品を踊れるようになるのです」
『眠れる森の美女』には、ダンサーと観客の双方に馴染みのある作品ならではの難しさと面白さがある。
「古典バレエのスタイルに則した作品だからといって、お馴染みの音楽にのって、型通りに踊るのではありません。私の役割は、次は何が起きるのだろう、と観客の方達にわくわくした気持ちを持ってもらうことです。たとえば第1幕のソロ。オーロラ姫が最初の一歩を踏み出す時、アクセントを一拍目に付けるのか、それとも二拍目に付けるのか。アクセントの付け方だけでステップの印象が変わり、醸し出す雰囲気も変化します。指揮者によって、演奏のテンポや緩急も千差万別。つまり、古典作品といっても、そこには無数の選択肢があるんです。私自身、新しい〈何か〉を発見しながら踊ります」
 コジョカルにとって、泰西名画さながらの典雅なピーター・ライト版を踊るのが初めてなら、王子役のマチアス・ディングマンとの共演も、初めてのことだ。
「新しいバージョンの古典作品を新しいパートナーと踊るのは、旅のような経験です。出発地点と到着地点は分かっていても、その途上で何が起きるのかは、実際に旅に出なくては分かりません。甘い夢のようなエピソードが連なるお伽話のなかに、きっと新たな発見があるでしょう。自分のやり方を貫くのではなく、パートナーの意見を取り入れ、バレエマスターの言葉に耳を傾け、音楽に身を任せて踊れば、きっと新しい何かを発見できるはず。私は、もっともっと新しい経験をして、もっともっと吸収し、もっともっと楽しみ、私の新たな一面を見ていただきたいと思っています」

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団
2018年日本公演

「眠れる森の美女」全3幕プロローグ付

【公演日】

2018年
5月18日(金)18:30
5月19日(土)14:00
5月20日(日)14:00

【予定される主な配役】

オーロラ姫 :アリーナ・コジョカル(5/18, 5/20)、デリア・マシューズ(5/19)
王子 :マチアス・ディングマン(5/18, 5/20)、ブランドン・ローレンス(5/19)

「リーズの結婚」全2幕

【公演日】

2018年
5月25日(金)19:00
5月26日(土)14:00
5月27日(日)14:00

【予定される主な配役】

リーズ :平田桃子(5/25, 5/27)、セリーヌ・ギッテンス(5/26)
コーラス :マチアス・エイマン(5/25, 5/27)、タイロン・シングルトン(5/26)

会場:東京文化会館
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【入場料[税込]】

[東京公演]
S=¥19,000 A=¥17,000 B=¥15,000 C=¥12,000 D=¥9,000 E=¥6,000
エコノミー券=¥4,000 学生券=¥3,000

*エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで4/13(金)より発売。
★ペア割あり[S,A,B席]★親子ペア割あり(サタデー親子券対象日以外の公演)

サタデー親子券[S,A,B席]

対象公演:
5月19日(土)「眠れる森の美女」、5月26日(土)「リーズの結婚」

S席:大人¥19,000+お子様¥5,000=¥24,000
A席:大人¥17,000+お子様¥4,000=¥21,000
B席:大人¥15,000+お子様¥3,000=¥18,000

*お子様は小学生〜高校生が対象。お子様2名までお申し込み可。

【その他の公演】

西 宮 5月11日(金)「眠れる森の美女」 兵庫県立芸術文化センター (問)0798-68-0255

大 津 5月13日(日)「眠れる森の美女」 びわ湖ホール (問)077-523-7136

名古屋 5月15日(火)「眠れる森の美女」 日本特殊陶業市民会館 (問)052-241-8118