上野の森バレエホリディ 東京バレエ団公演 ブルメイステル版「白鳥の湖」 創立55周年に贈るドラマティックなブルメイステル版東京バレエ団の充実を示すトリプル・キャスト! photo: Kiyonori Hasegawa

Photo: Kiyonori Hasegawa

『白鳥の湖』。そのタイトルを聞いただけで、バレエ・ファンの脳裏には心揺さぶるチャイコフスキーの音楽とともに、いく通りもの振付・演出がよぎることだろう。中でもひときわ豪奢でドラマティックな輝きを放つのが、ウラジーミル・ブルメイステルの手になる『白鳥の湖』ではないだろうか。
 1953年にモスクワ音楽劇場で誕生したブルメイステル版は、同劇場の看板演目となっただけでなく、パリ・オペラ座バレエ団やミラノ・スカラ座バレエ団など世界的なカンパニーでも上演されてきた。花を摘むオデットを悪魔ロットバルトの翼が覆い隠すプロローグから、白鳥に変えられた彼女が再び人間に戻って王子と結ばれるエピローグまで、一貫してぶれない物語。登場人物一人ひとりが際立つ演劇的な演出、チャイコフスキーの原曲を尊重した華麗な舞踊の数々。それらが織り成す壮大な絵巻にも似た魅力は、今日に至るまで少しも色あせてはいない。

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 2016年、東京バレエ団がブルメイステル版を初演した時、改めてその内容の豊かさに目を見張った。観客を一気に引き込むプロローグはもちろん、第1幕の登場人物たちの細やかな演技、イワーノフの原振付に基づく白鳥の群舞の優美さ、そしてこの版の最大の見どころである第3幕の、圧倒的な迫力と華やかさ! 各国の踊りを披露するのは、すべて悪魔の手先。王子を惑わすという暗い動機に後押しされたキャラクター・ダンスがいかに妖しい煌めきを帯びるか、一度でも見た人なら決して忘れまい。ここでは全ての踊り手が、持てる力の限りを尽くす。スペインやマズルカの合間を縫って現れるオディールが王子を翻弄し、ロットバルトの傲然たるソロが、運命の時が近いことを告げる。続くオディールと王子のグラン・パ・ド・ドゥについては、詳しく触れるまでもない。「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」で知られる旋律が全く異なる情趣に彩られる様子は、まさに一目瞭然だ。

Photo: Kiyonori Hasegawa

 

 バレエ団は2018年夏に衣裳を新制作して再演。今回の主役3組のトップを飾るのは、初演以来、恵まれた資質に裏打ちされたダイナミックな踊りを披露してきた上野水香と柄本弾だ。まずは上野のオデットとオディール。オデットの嘆きをしなやかに歌いあげるグラン・アダージオに対し、表情や身のこなしに強い意志をみなぎらせ、妖艶な悪魔の娘になりきる第3幕。過剰に傾く一歩手前で、あふれるオーラを踊りに転化してゆく表現は、舞台経験を重ね、大きく花開いた上野ならではのものだろう。柄本が踊る王子の、繊細な表情と力強い動きにも期待が高まる。パートナーとして着実に信頼関係を築いてきた2人の、さらなる新境地に期待したい。
 川島麻実子と秋元康臣も見逃せない。透き通るように儚げな川島だが、クリアで高貴な動きは芯の強さも感じさせ、バレエ・ファンの心をしっかり捉える。オデットとオディールはもちろん、ニキヤとガムザッティなど対照的な役柄を見事に踊り分けるのも、川島の大きな魅力であり強みだ。古典、近・現代作品などで幅広い活躍を見せる秋元とは、その姿も踊りの質も似合いのパートナー。秋元にとって『白鳥の湖』の王子は、ロシアで磨かれた端正なテクニックと涼やかな佇まいが最も生きる役の1つ。独特の透明感をまとう2人は、どんな進化を見せてくれるだろうか。
 そして、沖香菜子と宮川新大。2018年4月にプリンシパルに昇進した2人は、同年夏の『白鳥の湖』で、若さと才気を炸裂させた。沖は生来の可憐さで清楚なオデットを好演し、その鏡像のような魅惑的なオディールを作り上げた。宮川は、バジルやパックでも見せた抜群の身体能力とテクニックで圧倒する一方、人間味のある役作りで、見る人の心を和ませる。道化と戯れる少年のような表情や、初々しくさえ見えるオデットとのやりとりは、現在の彼ならではの魅力だろう。成長著しい2人の踊りもまた、必見なのだ。

上野の森バレエホリデイ2019
東京バレエ団公演
ブルメイステル版「白鳥の湖」

【公演日】

2019年
4月27日(土)15:00
4月28日(日)15:00
4月29日(月・祝)15:00

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

オデット/オディール:上野水香(4/27)、川島麻実子(4/28)、沖香菜子(4/29)
ジークフリート王子:柄本弾(4/27)、秋元康臣(4/28)、宮川新大(4/29)
ほか、東京バレエ団

指揮:未定
管弦楽:東京ニューシティ管弦楽団

【入場料[税込]】

S=¥10,000 A=¥8,000 B=¥6,000 C=¥5,000 D=¥4,000 E=¥3,000

U25シート ¥1,000
※NBS WEBチケットのみで3/29(金)20:00から引換券を発売。公演当日5歳~25歳までの方が対象。

※5歳からご入場いただけます
★ペア割引(S,A,B 席)あり ★親子割引(S,A,B 席)あり