生涯を学問に捧げてきたファウストは、年老いた今、虚しさに襲われている。学問一筋だった彼は女性と付き合ったり、人生の快楽をあじわうことがなかったからだ。いっそ死んでしまおう!と毒を飲みかけるが、いま一歩、思い切れない。そこに悪魔メフィストフェレスが現れる。メフィストフェレスはファウストに、死後の魂を渡すなら望みのものを与えると言う。ファウストは「青春」を取り戻せるなら、と悪魔との取引に応じるのだった。
「美しいお嬢さん、エスコートすることをお許しいただけますか?」と、いかにも紳士然とマルグリートに声をかけるファウスト。しかしマルグリートは、しとやかに、かつきっぱりと断って立ち去ってしまう。断られてますます熱を上げるファウストに、メフィストフェレスは「一肌脱がなきゃなりませんな」と、不敵に笑う。
祭りで賑わう街の人々のもとにメフィストフェレスが現れる。いかにも一人だけ浮いている感じだが、「金の子牛の歌」を歌い、仲間に加わろうとする。実は「金の子牛」とは、神に対抗する邪教のシンボルで、その周りで踊ることを指揮するのは悪魔なので、この歌で彼の正体に気づいてもおかしくはないのだけれど、お札をばら撒きながら歌うメフィストフェレスを、民衆たちは「ちょっと奇妙だけど、まぁいいか」くらいに思っている。
マルグリートに想いを寄せるジーベルの手相を見て不吉なことを言うメフィストフェレス。彼の口から妹マルグリート名が出たことで、ヴァランタンはメフィストフェレスが悪魔であることに気づき、剣で十字架を掲げる。
この場面では、メフィストフェレスが自分の酒を振る舞おうと言い出した途端に、手下たちがとりまくキリスト像からワイン(血にも見える!?)が流れ出し、やがて像が倒れてしまう。目に見える悪魔の本性!?
マルグリートを射止めようとファウストとメフィストフェレスが訪れるのは、舞台上にドーンと赤いネオンが見える キャバレー「地獄(L'ENFER)」。現実なのか悪魔が設えたことを示唆するものか…‥。マルグリートはここで女給さんをやっているという設定になっている。「ファウスト」のワルツとして知られる音楽に乗った、ショーガールたちの踊りはドラマの本筋をひととき離れ、パリの雰囲気を満喫させる楽しさ!
ファウストの猛烈なアタックと、メフィストフェレスの“魔力”によって、マルグリートとファウストは結ばれた。が、ファウストは去り、彼の子どもを身ごもったマルグリートは一人残された。教会で許しを乞うマルグリートに、「呪われよ」「お前は地獄に落ちるのだ!」と言うのはメフィストフェレス。彼女がファウストにもてあそばれた元々をつくったあんたが言う?とツッコミたくもなるが、そう、メフィストフェレスは悪魔なのだ。
ファウストはメフィストフェレスに山の中に連れて来られた。「ワルプルギスの夜」とは、いわば魔女の祭り。酒池肉林の騒ぎが繰り広げられる。お腹の大きなバレリーナが嘲笑われ、いじめられ、ファウストに刺されて死んだヴァランタンも血まみれで登場、男女の踊りは次第に欲望の醜さをあらわす乱行へ…‥ ファウストは己の悪行の数々を見せつけられ、頭を抱えることになる。奇抜といえば奇抜、しかしカットされることも多い『ファウスト』のバレエ場面に、これほど必然性を与えたのは奇才演出家マクヴィカーの真骨頂ともいえる。
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:デヴィッド・マクヴィカー
2019年
9月12日(木)18:30
9月15日(日)15:00
9月18日(水)15:00
会場:東京文化会館
9月22日(日)15:00
会場:神奈川県民ホール
ファウスト:ヴィットリオ・グリゴーロ
メフィストフェレス:イルデブランド・ダルカンジェロ
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:キース・ウォーナー
2019年
9月14日(土)15:00
9月16日(月・祝)15:00
会場:神奈川県民ホール
9月21日(土)16:30
9月23日(月・祝)16:30
会場:東京文化会館
オテロ:グレゴリー・クンデ
ヤーゴ:ジェラルド・フィンリー
デズデモナ:フラチュヒ・バセンツ
S=¥59,000 A=¥52,000 B=¥45,000 C=¥37,000 D=¥30,000 E=¥23,000 F=¥16,000
*E,F席の発売方法は追って発表します。