英国ロイヤル・バレエ団 2019年日本公演 高田 茜 インタビュー 名門バレエ団プリンシパルとしての充実と“いまのロイヤル”が魅せる『ドン・キホーテ』と〈ロイヤル・ガラ〉

 2016/17年のシーズンより英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルとして活躍する高田茜。その輝くような笑顔からあふれ出るのは、つねに新たなチャレンジに取り組みながら、プリンシパルとしてのキャリアを着実に重ねているという充実感だろう。
「いまはもう、踊る役のほとんどがメインの役ですが、とくに印象深かったのは2018年4月に『マノン』(マクミラン振付)を踊ったことです。夢が一つ叶って本当にラッキーでした。私はこういった、テクニックだけでなく、ストーリーを伝える作品が好きなんだなと実感できました」
昨年は、ロイヤルが総力をあげて新制作に臨んだリアム・スカーレット版『白鳥の湖』にも主演、多くのものを得た。
「マクミラン作品は振付が物語を語ってくれるので、演技は自然なほうがよいけれど、古典は踊りでストーリーを伝えなければならないもの。よりドラマティックに踊らないと、お客さんに伝わらないし、伝わらなかったら意味がない。私、いまここで切り替えないといけない!と気づいたんです。コーチのレスリー・コリアは、『もっとロシアのバレエ・ダンサーのように踊って』と教えてくれますが、私もより強く意識するように。そういった意味で『白鳥の湖』は、とてもいい機会でした」

「その場にいる皆が、それぞれ自分の役を生きている──
いまのロイヤルらしい『ドン・キホーテ』は他のカンパニーとはちょっと違う!」

Photo: Bill Cooper / ROH

 こうした経験こそが、彼女の大いなる武器。人一倍練習熱心なことでも知られるだけに、今度の日本公演ではより大きく、よりいっそう輝きを増した姿を見せてくれるだろう。まずは全幕作品、カルロス・アコスタ版『ドン・キホーテ』のキトリ役だ。
「2013年に初演されて人気を得ているヴァージョンです。これまでに何度も踊っていますが、私にとっては技術的にも、演技面でも大きなチャレンジでした。初演の時、カルロスと組んで踊ったマリアネラ・ヌニェスは本当にキトリそのままで、素晴らしかったんです。カルロスがイメージするキトリは、ちょっと強気なスパニッシュの女性で、こう、男性をはたいちゃうような強いところがあって──。彼はそれをやってみせてくれるのだけど、すごく上手なんです(笑)! 
私自身と違うところが多い役柄ではありますが、もっと研究して、より楽しんでいただけるよう役作りをしていきたいです。たとえば、アシュトンから直接指導を受けたことがある人は、セリフを頭に思い浮かべながら踊りなさいと指導されたと言われますが、キトリ役もそうやって掴んでいくことが大事かなと思うんです」
演劇的バレエを得意とするロイヤルならではの見どころも。
「その場にいる皆が、それぞれ自分の役を生きている──。街のシーンはとくにそう感じていただけるところだと思います。それから、第2幕のジプシーたちの場面も好きですね。コンテンポラリーの要素の入った見応えたっぷりのシーンです。新プリンシパルのマシュー・ボールをはじめ、いま、ロイヤルには有望な男性ダンサーがたくさんいますが、男性の活躍の場が盛りだくさんの『ドン・キホーテ』は、いまのロイヤルにぴったりでしょう。他のカンパニーとはちょっと違う、いまのロイヤルらしい『ドン・キ』になると思います!」

「多彩なレパートリーが揃う〈ロイヤル・ガラ〉
私たちならではの作品を存分にお見せします」

Photo: Bill Cooper / ROH
Photo: Helen Maybanks / ROH

 いっぽうの〈ロイヤル・ガラ〉ではバランシンの『シンフォニー・イン・C』を踊ることが発表されているが、ロイヤルの主要ダンサーたちが勢揃いするだけに、注目度は高い。
「6年前にケヴィン・オヘアが芸術監督になってから、より先鋭的な作品が上演されるようになって、たとえばクリスタル・パイトやホフェッシュ・シェクターといった振付家と私たちのカンパニーが一緒に仕事をするのは、本当に新しいことだと感じましたし、なんて幅の広い、多彩なレパートリーをもつカンパニーなんだろう、と思いました。もちろん、マクミランやアシュトンの作品は“ロイヤルの作品”として愛され、皆、演じることが大好き。〈ロイヤル・ガラ〉ではこうした、私たちならではの作品を存分にお見せできると思います」
 スカーレットやウィールドンらの作品の上演も予定され、ロイヤルの多彩な魅力を一度に味わうことができるまたとない機会となるだろう。

英国ロイヤル・バレエ団 2019年日本公演
「ドン・キホーテ」《ロイヤル・ガラ》

「ドン・キホーテ」

【公演日】

2019年
6月21日(金)18:30
6月22日(土)13:00
6月22日(土)18:00
6月23日(日)13:00
6月25日(火)18:30
6月26日(水)18:30

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

キトリ: マリアネラ・ヌニェス(6/21)、ヤスミン・ナグディ(6/22昼)、高田茜(6/22夜、6/25)、ローレン・カスバートソン(6/23)、ナターリヤ・オシポワ(6/26)
バジル: ワディム・ムンタギロフ(6/21、6/26)、アレクサンダー・キャンベル(6/22昼)、スティーヴン・マックレー(6/22夜、6/25)、マシュー・ポール(6/23)

《ロイヤル・ガラ》

【公演日】

2019年
6月29日(土)14:00
6月30日(日)14:00

会場:神奈川県民ホール

【予定される主な演目と配役】

「シンフォニー・イン・C」 (6/29)ローレン・カスバートソン&ワディム・ムンタギロフ、マリアネラ・ヌニェス&平野亮一、高田茜&アレクサンダー・キャンベル、ヤスミン・ナグディ&ヴァレンティノ・ズッケッティ
(6/30)ナターリヤ・オシポワ&スティーヴン・マックレー、サラ・ラム&リース・クラーク、崔 由姫&マルセリーノ・サンベ、フランチェスカ・ヘイワード&アクリ瑠嘉

そのほかの作品は〈マーゴ・フォンテインに捧ぐ〉より「眠れる森の美女」“ローズ・アダージオ”、「マノン」より3つのパ・ド・ドゥ、「ロミオとジュリエット」よりパ・ド・ドゥ、「白鳥の湖」よりパ・ド・ドゥ、「三人姉妹」 ほか、アシュトン、ウィールドン、マクレガー、スカーレットの作品を予定。

※配役は決まり次第NBSホームページ等でお知らせします。来日プリンシパルは、各日とも総出演の予定です。

指揮:未定
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

※記載の配役は2018年12月14日現在の予定です。カンパニーの都合等で変更になる場合があります。

【入場料[税込]】

S=¥25,000 A=¥22,000 B=¥19,000 C=¥15,000 D=¥11,000 E=¥8,000