英国ロイヤル・オペラ団 2019年日本公演 ヴィットリオ・グリゴーロ インタビュー! 人生において何が大事か?その答えは『ファウスト』にある Photo: ROH 2011. Photograph by Catherine Ashmore

Photo: ROH 2011. Photograph by Catherine Ashmore

『ファウスト』のタイトルロール役ヴィットリオ・グリゴーロ。昨年12月にはリサイタルで来日しました。このときの会場に巻き起こった熱気は「普通の」テノール歌手のリサイタルとはちょっと様子がちがったよう。インタビューでは、その理由に、クラシックという“狭い”枠だけにとらわれない考え方をもっていることがうかがわれました。

 来日リサイタルでのパワフルな様子が、ちょうど大ヒット中の映画「ボヘミアン・ラプソディ」のクイーンを彷彿させたようでもあったのですが、実はグリゴーロはクイーンのメンバー、ブライアン・メイとの共演も行っていたとのこと。
「テレビ番組で共演したんだ。そのときブライアンから、『フレディが亡くなってから初めて、同じ音楽をする人に会った』と言われたんだ。僕にとってこれは、歌手としてということより、一人の人間として嬉しかった」
 歌手としてのキャリアのはじめの頃、グリゴーロはポップスも歌っていました。舞台上から投げキッスをしたり、拍手をうながして客席とやりとりしながら一体感を盛り上げるステージづくりは、こうした経験から身につけたものかもしれません。でも、グリゴーロはオペラ歌手として生きる決意を固めました。
「最初のCD録音のときかな、イタリア人テノールとしてできる最高のことをしなきゃいけないって、真面目に考えたんだ。パヴァロッティの後を継ぐのは誰か?って」
 グリゴーロは、その張りのある声質ばかりでなく、メトロポリタン歌劇場でリサイタルを行ったイタリア人歌手という点からも、“パヴァロッティの後継者”と呼ばれますが、彼自身、パヴァロッティの名を口にするとき、その顔はきりりと引き締まり、真剣な表情になり、こう言葉を続けました。
「イタリアの声を世界にしらしめたいんだ」
 オペラを活動の中心にするとはいえ、「ロック・ミュージシャンのスティングやブルース・スプリングスティーンと共演してみたい」「ブライアン・メイとロイヤル・オペラでコンサートやりたいなぁ」「東京オリンピックではなにかビッグなことができるといいのに…‥」などなど、クラシック以外のジャンルのアーティストとの共演や、さまざまな新しい試みには意欲を持ち続けています。
 話は本題、『ファウスト』について。今回上演される『ファウスト』は2004年に初演の後、上演が繰り返され、 グリゴーロは2011年にロンドンの舞台に登場しました。
「僕が最初の場面で歌ったとき、みんなとても驚いたんだ。どうしてかっていうと、それまで僕がしたような年寄りの声、ちょっとしゃがれたような声で歌った人はいなかったから。でも、僕は思ったんだ、ファウストって90歳に近いくらいなんだぜ!って。それに、このオペラは、何が欲しいかを聞かれて、金でも権力でもなく、若さが欲しいという老人が、悪魔と取引をして若さを手に入れる、一瞬でパッ!と若返るんだけど、最初がおじいさん声の方が、よりインパクトが強くなるよね。それまでの誰もそうはしなかったんだ」
 グリゴーロは歌うことだけでなく、舞台上で俳優のように演技をすることも好きだと言います。
「オペラでも映画でも同じだと思うんだけど、楽譜や台本に書いてあることだけではダメだと思ってるんだ。アーティストの仕事っていうのは、楽譜にあることを一度自分のからだに入れて、それをしっかり咀嚼したうえで、今度は自分から外に向かって表現することではじめて成り立つと思っているから」
 なるほど、と納得させられます。すでに何度も共演しているマエストロ・アントニオ・パッパーノのことを「オペラにとって何が必要かを熟知している人」と言うグリゴーロですが、彼はオペラにとって、そして聴衆にとって何が必要かも、あわせて考えることができるのでしょう。
「『ファウスト』というオペラは、悪魔は出てくるし、超現実なことが現実の人間の間でおこる物語っていうのが面白さだよね。そして、最後の場面が大事。人生において何が大事か、がわかる。人生における時間の使い方、どう生きるか、ということがわかる場面なんだ。人生、もう一度チャンスがあったらどうする?っていうね」
『ファウスト』、観終わってあなたはどう考えますか?

英国ロイヤル・オペラ 2019年日本公演

『ファウスト』

指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:デイヴィッド・マクヴィカー

【公演日】

2019年
9月12日(木)18:30
9月15日(日)15:00
9月18日(水)15:00

会場:東京文化会館


9月22日(日)15:00

会場:神奈川県民ホール

【予定される主な配役】

ファウスト:ヴィットリオ・グリゴーロ
メフィストフェレス:イルデブランド・ダルカンジェロ
マルグリート:レイチェル・ウィリス=ソレンセン

『オテロ』

指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:キース・ウォーナー

【公演日】

2019年
9月14日(土)15:00
9月16日(月・祝)15:00

会場:神奈川県民ホール


9月21日(土)16:30
9月23日(月・祝)16:30

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

オテロ:グレゴリー・クンデ
ヤーゴ:ジェラルド・フィンリー
デズデモナ:フラチュヒ・バセンツ

【入場料[税込]】

S=¥59,000 A=¥52,000 B=¥45,000 C=¥37,000 D=¥30,000

U29シート \8,000  *8/2(金)20:00発売開始

*E,F席は完売しました。