パリ・オペラ座バレエ団 2020年日本公演 名門バレエ団のエトワールが魅せるのは王道の個性溢れる「ジゼル」と「オネーギン」

Photo: Svetlana Loboff / OnP

世界最古のバレエ団、
350年を祝す記念シーズンの来日はグッド・タイミング!
初演以来の代表作『ジゼル』、
百花繚乱の輝きを放つ『オネーギン』に期待

 パリ・オペラ座バレエ団は、1661年ルイ14世が創立した王立バレエ・アカデミーを起源とする世界最古のバレエ団で、2019年は、1669年の王立音楽アカデミーの誕生から数えてちょうど350年。節目の年を祝う催しが各種開催されている。
 こうした祝祭ムードの上昇気流に乗った時期に、バレエ団が来日するとは実にタイミングがよい。今回の演目は、ロマンティック・バレエの名作『ジゼル』とジョン・クランコ振付の物語バレエの傑作『オネーギン』の2本。
 ご存知の方が多いと思うが、『ジゼル』は、中世ドイツを舞台に、村娘ジゼルと貴族のアルブレヒトの叶わぬ恋を扱った物語。1841年にパリ・オペラ座で初演されただけに、第1幕の農村と第2幕の妖精の森という対照的な世界が、本家ならではの洗練された様式美によってお目見えする。
 このバレエは、1963年の初来日以来、オペラ座の代表作として、その後の来日公演でも上演の機会があった。最近では2010年、アニエス・ルテステュ&ジョゼ・マルティネス、ドロテ・ジルベール&マチアス・エイマン、デルフィーヌ・ムッサン&バンジャマン・ペッシュ、オレリー・デュポン&ニコラ・ル・リッシュの4組が夢の饗宴を繰り広げたのが記憶に新しい。
 『ジゼル』は、19世紀半ばにロマン主義のブームが去ると、オペラ座では一時上演が途絶えるが、替わってロシアでプティパの手によって改訂され、20世紀初頭に再びオペラ座の舞台に戻ってくる。それ以来、たびたび改訂を経て上演が重ねられ、2016年には上演800回を記録するに至った。
 オペラ座版の特徴は、踊りとマイムが自然に調和し、全体がエレガントな様式美で統一されていることである。ジゼルの狂乱の場面をはじめ、マイムの見せ場が多いこの作品では、伝統の強みが随所で発揮されることだろう。かつてカルロッタ・グリジが初演した主役のジゼルを演じることは、オペラ座のエトワールたちにとって、重要な試金石となっている。
 もう一本の『オネーギン』は、シュツットガルト・バレエ団の鬼才ジョン・クランコが振付けた物語バレエの金字塔と言える名作である。プーシキンの韻文小説が原作で、タチヤーナの純愛を退けたオネーギンの悔恨の物語。同バレエ団の看板演目で、世界中で上演されている名版だが、今回は、本家シュツットガルトとパリ・オペラ座の舞台を見比べることもできるだろうし、初めてご覧になる方にとっては、物語バレエとの未知なる出会いが待っているに違いない。
 『オネーギン』と言えば、チャイコフスキーのオペラ『エウゲニー・オネーギン』が有名だが、このバレエでは、オペラからは一節も使わず、チャイコフスキーのほかの楽曲から音楽を構成しているのが見事に成功している。
 オペラ座のレパートリーに入ったのは比較的最近の2009年4月。初日にタチヤーナを演じたイザベル・シアラヴォラとレンスキー役のエイマンがエトワールに任命され、貴公子マニュエル・ルグリがオネーギンを演じて引退を飾るなど、話題の多い公演であった。最近では、2014年にアマンディーヌ・アルビッソンがタチヤーナを演じてエトワールに昇格。2018年の再演では、オネーギンをガニオ、マルシャン、ビュリオン、ベザールが演じている。ガニオといえば、昨年のシュツットガルト・バレエ団の日本公演に客演し、登場した瞬間からパリの粋なエスプリを感じさせたのが新鮮な驚きだった。
 オペラ座ならではの魅力と言えば、何と言ってもエトワールたちの百花繚乱の輝きだろう。パリで初演を見た際にも4組(シアラヴォラ&モロー、オスタ&ルグリ、デュポン&ル・リッシュ、ジルベール&マルティネス)それぞれ異なる解釈が興奮をかき立てたものだ。日本公演では、どんなキャストが登場するのだろうか。正式発表が待ち遠しい。

Photo: Julien Benhamou / Onp

パリ・オペラ座バレエ団
2020年日本公演

【公演日】

「ジゼル」全2幕
2月27日(木)19:00
2月28日(金)19:00
2月29日(土)13:00
2月29日(土)18:00
3月1日(日)15:00

「オネーギン」全3幕
3月5日(木)19:00
3月6日(金)19:00
3月7日(土)13:00
3月7日(土)18:00
3月8日(日)15:00

会場:東京文化会館

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【入場料[税込]】

S=¥26,000 A=¥23,000 B=¥20,000 C=¥17,000 D=¥13,000 E=¥9,000

★U25シート ¥4,000
※NBS WEBチケットのみで2020年1/24(金)20時より発売。