ミラノ・スカラ座 2020年9月 日本公演 イタリア・オペラの殿堂が魅せる“王道” Photo : Brescia e Amisano / Teatro alla Scala

蘇る伝説の『椿姫』
期待高まる最新作『トスカ』

Photo :Brescia e Amisano

 ミラノ・スカラ座の2020年日本公演は、ヴェルディの『椿姫』とプッチーニの『トスカ』。この2作はいうまでもなく、いずれも世界中の歌劇場で上演されているイタリア・オペラの代表的傑作です。数々の歌劇場が日本にやって来る機会が増えるとともに、この2作も度々取り上げられています。もっとも、今回のこの2作は、イタリア・オペラの殿堂たるミラノ・スカラ座が、イタリア・オペラの”王道”とは何かを見せつけるために、あえて選んだといえるのではないでしょうか。
 まず『椿姫』。スカラ座には、『椿姫』にまつわるコワイ話がありました。1964年のゼッフィレッリ演出カラヤン指揮のプロダクションの大失敗です。以来27年間、スカラ座で『椿姫』が上演されることはありませんでした。リッカルド・ムーティ音楽監督のもと、この封印を解いたのがリリアーナ・カヴァーニ演出でした。ダンテ・フェレッティの美術装置やガブリエラ・ペスクッチの衣裳などによって格調高く仕上げられたこのプロダクションは、いまや封印された時間より長く愛され続けるものとなっています。1995年にはスカラ座の日本公演でも上演されましたが、オペラ・ファンのなかでもこの『椿姫』の素晴らしさを“伝説”としてのみ知るという方も多いかもしれません。第1幕、ヴィオレッタの夜会の場面の華やかさと豪華さは、これまでにいくつもの『椿姫』を観ている人にも驚きを与えることでしょう。ヴェルディが作り出したドラマそのものを描き出す最高のプロダクション、すなわちこれこそスカラ座が魅せる”王道”の『椿姫』なのです。指揮をとるのは巨匠ズービン・メータ。日本でスカラ座を振る初めての機会となることにも期待が高まります。

 もう一作の『トスカ』は、今年12月のスカラ座シーズン開幕を飾る新プロダクション。スカラ座の開幕は、毎年世界中の注目を集める大イヴェントでもあります。音楽監督リッカルド・シャイーと演出を手がけるダヴィデ・リヴェルモアは、昨年に続いてのコンビ。実はこの『トスカ』については、当初は以前からのプロダクションをもとにリメイクすることが考えられていました。しかし、昨年の開幕作『アッティラ』が大成功をおさめたことから、リヴェルモアによる新演出が決定されたのです。スカラ座におけるシャイーの成功は数々報じられていますが、自身が「プッチーニは私にとって一生をかける作曲家の一人。 ロッシーニやヴェルディと同様にイタリア・オペラの音楽的価値をしっかりと示すことが必要」と語ることを裏付けるように、『トゥーランドット』『西部の娘』『蝶々夫人』『マノン・レスコー』での功績はすでに認められています。シャイーが振るプッチーニ、前作を上回る期待を担うリヴェルモアの演出ということで、今年の開幕への注目が世界中で高まるのも当然のこと。彼らは、スカラ座の“王道”を魅せるという使命に応えてくれるはずです。

ダヴィデ・リヴェルモアによる新演出『トスカ』の舞台イメージ

 

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