前回のスタジオ・パフォーマンス カーテンコールより Photo: Kiyonori Hasegawa   

『「バレエ大国」日本の夜明け』刊行
東京バレエ団の“ルーツ”がここに

斎藤慶子著
『「バレエ大国」日本の夜明け』

 斎藤慶子著『「バレエ大国」日本の夜明け』がこのたび文藝春秋より刊行されます。ここには東京バレエ団の母体である「チャイコフスキー記念東京バレエ学校」が1960年に開校し、1964年に閉校するまでの顛末が記されています。冷戦構造下、旧ソ連の文化外交戦略の一つとして、優秀なバレエ教師、スラミーフィ・メッセレルとアレクセイ・ワルラーモフが送り込まれてきました。二人は愛情と熱意、それに持てる技術のすべてを日本人の生徒たちに注ぎ込みました。たった4年で閉校に追い込まれてしまいましたが、そこでの4年間の活動が、日本のバレエ教育の歴史的な転換点となったことは、あまり知られていません。
 同校でのバレエ教育がなかったら、現在のような日本人ダンサーの国際的な活躍は、もっと先のことになっていたに違いありません。歴史に埋もれ、忘れ去られていた幻のバレエ学校の存在を膨大な資料を駆使した調査と取材によって、掘り起こします。東京バレエ団のルーツを探る興味深い一冊です。

斎藤慶子著
『「バレエ大国」日本の夜明け』

発行:文藝春秋企画出版部
価格:2200円+税
ISBN978-4-949999-12 C3000


ミラノ・スカラ座「初日を前に」開催
期待高まるシャイーの『トスカ』!

11月19日、ホワイエで開催された「初日を前に」。
(PRIMA DELLE PRIME - TOSCA)

 期待高まる12月7日のスカラ座シーズンオープニングを前にした11月19日、スカラ座では「初日を前に」という催しが開催されました。この催しは例年、シーズン開幕を前に行われるもので、アルトゥーロ・トスカニーニと命名されたホワイエには準備中の舞台裏の様子に興味を持つ多くの観客が詰めかけました。入場無料で、およそ150席ほどの席を獲得するためには早くから会場に出向いて並ぶ必要があります。
 著名な音楽評論家サンドロ・カッペッレットと並んで座った人気絶頂の指揮者リッカルド・シャイーは、1900年代の最初のオペラ作品をテーマに、映像を用いながら、ミラノの街にとって一年のうちで最も重要な日が近づく中、観客を前に語りました。
 「プッチーニは私にとっては作曲家の中でも生涯を共にする存在です。音楽の勉強をしていた時代も指揮者になってからも、音楽学的考察を重ね、何度も読み直すことが重要だと常に感じていました。彼の様式にはロッシーニやヴェルディのような作曲家の踏襲もみられると思います」とシャイーは語りました。
 今年の開幕演目「トスカ」のチケットはすでに完売。期待はますます高まっています。


小学4年生の素直な喜びがあふれた
横浜市主催子どものためのバレエ

Photo: Sergei Fedorov

横浜・関内ホールにて。

 11月19日~21日に横浜・関内ホールで上演した東京バレエ団「子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』」は、連日、横浜市内の小学4年生のかわいい歓声と拍手で盛り上がり、全6回の公演を無事終了しました。横浜市教育委員会の主催によるもので、バレエ公演を取り上げるのは今回が初の試み。小学4年生の素直で純真な子どもたちの感性にぴったり合ったのか、生徒たちが大喜びだったと、引率の先生たちから教育委員会にたくさんの感謝の言葉が寄せられたとのこと。こうした活動が、まちがいなく子どもたちの情操を育み、バレエの観客の底辺拡大につながるに違いないと確信がもてた企画でした。横浜市の英断に感謝し、実現していただいた関係各位に厚く御礼を申し上げたいと思います。