モーリス・ベジャール・バレエ団 2020年日本公演 「バレエ・フォー・ライフ」での再びの熱狂!そしてベジャールの魂は次代へ!

2020年5月、3年ぶりに来日するモーリス・ベジャール・バレエ団。
二つのプログラムは異なる熱狂で迫ります。
「バレエ・フォー・ライフ」は爆発的に、ミックス・プロは静と動のコントラストで。
どちらも見逃せません!

Photo: BBL-Ilia Chikolnik

「バレエ・フォー・ライフ」

ベジャールの情熱はクイーンとともに伝説の熱狂へ。
ジル・ロマンの情熱は果敢な挑戦とともに次代の伝説へ。

 映画『ボヘミアン・ラプソディ』の空前の大ヒットは、フレディ・マーキュリーの死から20年近く経った今でも、巨大なインパクトを放ち続けるスターの永遠性を証明した。クイーンの音楽を聴きながら青春時代を過ごした世代だけでなく、彼らの子供たち世代までも魅了したのは、ポップ・ミュージックの持つ普遍的なパワーゆえだろう。最も眩しく輝いた星は、消滅したのちも何万光年も離れた場所に届く。モーリス・ベジャールがクイーンの音楽に出会ったのも、フレディが亡くなった後のことだった。同じく45歳で亡くなったジョルジュ・ドンとの間に「照応」のようなものを感じたベジャールは、情熱にとりつかれながらクイーンの音楽を聴き、フレディについて書かれた本を読んだ。ザンジバル生まれのインド育ち、家族がバールシー宗派に属していたことに強く興味を持ったという。そうして創造されたバレエには、ガストン・ルルーの「黄色い部屋の謎」の一節である「司祭官の美しさはいささかも薄れず、あの庭のみずみずしさもまた同じ」(『バレエ・フォー・ライフ』の原題)というタイトルがつけられた。1997年のパリ、シャイヨー国立劇場での初日公演にはブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、ジョン・ディーコンとエルトン・ジョンが特別参加し、ラストの「ショー・マスト・ゴー・オン」をライヴ演奏したことは伝説となっている。
 日本での初演は1998年。白を基調にしたヴェルサーチの衣裳と、奇想天外という他ないユニークで電撃的な振付に、70歳を超えてなお新境地を開拓するベジャールの若さを思った。フレディがステージやプロモーション・クリップで見せた果物のカツラや女装も登場する。ライヴ音源も使用され、休憩なしの1時間半が濃密なロック・パフォーマンスのようだった。2004年にイタリアのトリノ王立歌劇場で筆者がこのバレエを観たときは、初日はまばらだった客席が、恐らく口コミで伝わったのか2日目には8割がた埋まり、3日目には超満員になったのを覚えている。イタリアの観客のリアクションはラテンのノリで、カーテンコールの熱狂ぶりは危険なほどだった。
 ミックス・プロでは、ベジャール不朽の名作である『ボレロ』と、久々に『ブレルとバルバラ』が上演される。フランス人らしくシャンソンを愛したベジャールは、ジャック・ブレルとバルバラへのオマージュとしてこのバレエを振付けた。2002年の来日公演で上演され、ジル・ロマンとエリザベット・ロスが主役を踊るドキュメンタリーDVD(2005年)もリリースされているが、ロスは現在もバレエ団で活躍しているので、この来日公演で再び観られるかも知れない。世界バレエフェスティバルで魅惑的なハイライト部分が上演されていたが、全幕では久しぶりだ。ファッション・デザイナー、ジャン=ポール・ノットがデザインした衣裳もスタイリッシュで、「黒い鷲」をはじめ、ダンサーは個性的なダンスを披露する。
 同じくミックス・プロで日本初演されるジル・ロマン振付の新作『人はいつでも夢想する』は、前衛的なインプロビゼーションで根強いファンを持つサックス奏者ジョン・ゾーンの音源を使用した作品で、台本・ヴィデオコラボレーターのマルク・オローニュが台本を書いている。カンパニーのダンサーほとんどが参加し、2019年4月に初演されたときのオリジナル・キャストにはエリザベット・ロスとジュリアン・ファヴローの名前も。ハイライト映像ではベージュの衣裳をつけた群舞が踊るスピーディなシンクロ・ダンスが美しく、意味深なストーリーを暗示するパ・ド・トロワも印象的だ。コレオグラファーとして挑戦を続けるジル・ロマンの、アップデイトされた振付に期待が募る。

上:「ボレロ」、右:「人はいつでも夢想する」、左:「ブレルとバルバラ」  Photo: BBL-Francois Paolini, BBL-Marc Ducrest, BBL-Didier Philispart

モーリス・ベジャール・バレエ団
2020年日本公演

【公演日】

Aプロ
「バレエ・フォー・ライフ」

2020年
5月13日(水)19:00
5月14日(木)14:00
5月14日(木)19:00 

■上演時間:約1時間45分(休憩なし)
※開演時間に遅れるとご自分の席に着席いただけませんので、時間に余裕をもってお越しください。

Bプロ
「ボレロ」
「人はいつでも夢想する」
「ブレルとバルバラ」

2020年
5月16日(土)17:00
5月17日(日)14:00

■上演時間:約2時間30分(休憩含む)

会場:東京文化会館

※音楽は特別録音による音源を使用します。
※モーリス・ベジャール・バレエ団の方針により、配役は公演当日に会場で発表します。

【入場料[税込]】

S=¥17,000 A=¥15,000 B=¥13,000 C=¥10,000 D=¥8,000 E=¥6,000
※ペア割[S,A,B席]あり

★U25シート ¥3,000
※NBS WEBチケットのみで2020年4/10(金)20:00から引換券を発売。公演当日小学1年生~25歳までの方が対象。座席指定はできません。