2019/06/21
ミラノ・スカラ座
2020年9月
ミラノ・スカラ座が2020年のオリンピック・イヤーに用意したのは、ヴェルディの『椿姫』とプッチーニの『トスカ』。伝家の宝刀ともいうべき二枚看板を日本のファンに届けます。
この2作は世界中で愛されているイタリア・オペラを代表する作品。上演機会も多いだけに、"イタリア・オペラの殿堂"であるミラノ・スカラ座の底力に、あらためて圧倒されることでしょう。
ミラノ・スカラ座の日本公演は、すでに7回を数えますが、今回は音楽監督リッカルド・シャイーと、巨匠ズービン・メータの二人の指揮者を迎えることとなりました。2017年に就任したリッカルド・シャイー音楽監督に率いられての初来日はもとより、ズービン・メータが日本でミラノ・スカラ座を振るのも初めてのこと。
メータが指揮をするのは、リリアーナ・カヴァーニ演出の『椿姫』。1995年の日本公演においてNHKホールで6回公演し、即日完売した伝説の名舞台です。スカラ座ではこの『椿姫』の後、2013年に新しいプロダクションが制作されましたが、スカラ座の『椿姫』はこれしかないとばかりに、カヴァーニ演出の舞台へと戻しました。幕開きとともに現れる豪華絢爛な舞台装置と華やかな舞踏会の雰囲気は、観るもの誰もがうっとりし、オペラ・ファンならこれこそ思い描いていた『椿姫』そのものだと思うのではないでしょうか。目下世界中でヴィオレッタ役を歌っているマリーナ・レベカ、ジェルモン役にはレオ・ヌッチが登場します。
シャイーが指揮をする『トスカ』は、2019年12月に、スカラ座のシーズン開幕を飾る新プロダクション。演出は、2018年の開幕作『アッティラ』で素晴らしい成功をおさめたダヴィデ・リヴェルモアが手がけます。シャイーはスカラ座において、プッチーニのオペラを次々と振ってきました。「プッチーニは私にとって一生をかける作曲家の一人」と語り、「ロッシーニやヴェルディと同様にイタリア・オペラの音楽的価値をしっかりと示すことが必要」と考えていると言います。事実、シャイーはこれまでに、『トゥーランドット』『西武の娘』『蝶々夫人』『マノン・レスコー』で、その成果をはっきりみせてきました。批評家たちは、シャイーの振るプッチーニ・オペラに対し「これまで無意識のうちに伝統の覆いをしていたが、それを剥がした!」と賞賛を寄せています。タイトルロールを歌うスペイン出身のサイオア・エルナンデスは、ネトレプコとのダブルキャストでミラノでのオープニングに登場します。エルナンデスは、スカラ座の2019/2020年シーズンにおいて、新演出『仮面舞踏会』、『ジョコンダ』にも出演が予定されており、目下スカラ座で最も期待と注目を集めているソプラノとして、日本公演での登場が決定しました。
単にイタリア・オペラの傑作というだけではありません。オペラは総合芸術ですが、この『椿姫』と『トスカ』こそ、イタリア・オペラの殿堂ミラノ・スカラ座が誇る究極の美味、至高の2皿なのです。
総裁・芸術監督 アレクサンダー・ペレイラ
日伊の国交は150年を超えました。スカラ座は故佐々木忠次氏のご尽力により実現した1981年の初回以来、第二の故郷日本と伝統・文化の交換を深め、10回目の公演を数えるまでとなりました。この間の2007年「イタリアの春」、2009年と2013年「日本におけるイタリア年」でもスカラ座はバレエとオペラで訪日しました。
オリンピック開催年となる2020年には、スカラ座のレパートリーのなかで最も重要な2作、プッチーニの「トスカ」とヴェルディの「椿姫」を、音楽監督リッカルド・シャイーとズービン・メータにより紹介します。私たちの劇場の特徴を表す偉大なマエストロに加え、名高い歌手による上演となります。「トスカ」は2019/2020年シーズン開幕を飾るダヴィデ・リヴェルモアの新演出、「椿姫」は1990年のリリアーナ・カヴァーニの名演出が蘇ります。
スカラ座の日本公演に際し、ご尽力いただいた関係機関およびNBS、関係者の皆さまには感謝いたします。そして、10年近くにもおよび、愛情もって私たちを迎えてくれる日本の皆さまに深く感謝を申し上げます。
ウィーン国立歌劇場
2021年10月
ウィーン国立歌劇場が用意したのは、R.シュトラウスの『ばらの騎士』とモーツァルトの『コジ・ファン・トゥッテ』。オペラ・ファンからは、「あの『ばらの騎士』が帰ってくる!?」という声が聞こえてきそうですが、「ウィーンならやはりモーツァルトを聴きたい!」という声が上がるのも当然。ウィーン国立歌劇場は日本のファンのストライクゾーンをずばり突いてきます。
オペラ・ファンを誘惑するのは演目だけではありません。2020年から音楽監督に就任する期待のフィリップ・ジョルダンと、巨匠リッカルド・ムーティが登場します。
ウィーン国立歌劇場の『ばらの騎士』は、伝説の指揮者カルロス・クライバーの数少ないレパートリーの一つとして、全世界のオペラ・ファンに知られた作品。それだけに、後に続く指揮者たちはクライバーの亡霊と闘いながら指揮をしてきたに違いありません。新音楽監督のフィリップ・ジョルダンはその亡霊を振り払い、ウィーンの伝統を大切にしながら、新しい時代を切り開いてくれるに違いありません。馥郁たるウィーンの香りを満喫させてくれるオットー・シェンクの演出はそのままに、ジョルダンによって新たな生命が吹き込まれるとき、ウィーンの『ばらの騎士』は再び新しい伝説を生み出すのではないでしょうか。
リッカルド・ムーティとウィーン国立歌劇場のモーツァルト・オペラといえば、前回の日本公演『フィガロの結婚』での珠玉のような上演を思い起こす方も多いことでしょう。ウィーン国立歌劇場のオーケストラは、数々の指揮者のなかでもムーティとは最も強い信頼関係があるといいます。モーツァルト・オペラの隅々までを探求するムーティの音楽づくりに100パーセント対応できるオーケストラは、現在ではウィーン国立歌劇場管弦楽団のほかにはないといっても過言ではありません。『コジ・ファン・トゥッテ』の演出はキアラ・ムーティ。偉大な指揮者を父にもちながらも、別の才能で演出家として評価を高めています。むろん、オペラ演出の第一番に父親譲りの音楽に対する理解と敬愛があることはいうまでもありません。それに彼女自身の感性と美学が加わることは、2018年のローマ歌劇場日本公演『マノン・レスコー』の舞台ですでに実証済みです。
この『コジ・ファン・トゥッテ』は、2018年にナポリのテアトロ・サンカルロとのコープロダクションとして新制作されたものですが、2020年5月のウィーン国立歌劇場でのプレミエでは、さらにバージョン・アップされるとのこと。練り上げられたこだわりの舞台が日本の観客に届けられることになります。
Photo: Josef Fischnaller
総裁 ボグダン・ロシチッチ
どんな人生にも道しるべがあり、人生の節目で生じる格別な出来事は、その瞬間のみならず後の人生にも影響をおよぼし続けます。ウィーン国立歌劇場の「あゆみ」における道しるべには、歴史に残るオペラ作品の名演、新たな芸術作品の門出、あるいは歌劇場の組織にとっての革新などが挙げられます。
転機の一つが1980年ウィーン国立歌劇場の日本初公演でした。それまでにも意義深い海外公演はありましたが、日本への初めての旅は、ウィーン国立歌劇場の歴史において特別な1ページとして刻まれるにふさわしいものです。日墺たがいの熱意、濃厚な出会いの数々があり、友情が生まれ、思い出を共有する — これらすべてがかけがえのない経験であり、明るい未来を予感させるものでした。事実この日本初公演の後、きわめて豊かな芸術的交流が展開されることとなりました。2021年にはウィーン国立歌劇場が10度目となる日本公演の旅に出ます。ウィーン国立歌劇場のアーティストにとって、再び日本の聴衆のみなさまの前で舞台に立つことはとりわけ嬉しく名誉なことです。そしてまた、上演を予定しておりますモーツァルト、R.シュトラウスの作品がウィーン国立歌劇場のレパートリーの歴史の中でもとりわけ重要であると同時に、三巨匠を代表する作品でもあることも、誇りに存じます。