“落ちぶれ騎士”ファルスタッフは、金目当てに富裕な夫人を口説こうと企む。2人の夫人に手紙を届けるよう命じるが、手下が拒むので〈名誉だと?泥棒めが!〉と、自分のことを棚に上げて大演説を繰り広げる。
 手紙を受け取ったアリーチェとメグは、2通がまったく同じものとわかって大憤慨。クイックリー夫人、ナンネッタを加えた4人の女性たちは、ファルスタッフへの復讐を誓う(〈光り輝くアリーチェ~ハハハハ〉)。一方、アリーチェの夫フォードたち男性陣は、ファルスタッフの手下から、ファルスタッフの悪企みを聞いて憤る。女性陣、男性陣はそれぞれの復讐計画を九重唱〈やつは悪人で、ずるい奴で、泥棒で〉と、歌う。

 クイックリー夫人がファルスタッフのもとへやって来て、アリーチェからの“返事”を伝える。女性陣の作戦開始だ。罠とは知らず〈行け、年老いたジョン〉と、ファルスタッフは上機嫌。変装したフォードもファルスタッフを訪ね、“人妻アリーチェを口説く協力”を頼むが、すでに逢い引きの約束があると聞いて、妻が本当に浮気しているのか?と愕然とする〈夢か、現か〉
 アリーチェのもとにやって来たファルスタッフは“優雅”に言い寄るが、メグの叫び声で中断。女性陣の計画はここまでのはず。ところが実際にフォードが仲間たちを連れて乗り込んで来るという報せに女性たちも真っ青!! なだれ込んで来た男たちが棚という棚を開け、物を放り出して家探しするなか、アリーチェはファルスタッフを洗濯籠に押し込んで隠す。九重唱〈ふんづかまえるぞ、ひっつかまえるぞ〉の場面は、ジェットコースター的な音楽のスピード感、大混乱のドサクサに紛れて愛を交わす若い恋人たちの姿などが織り交ぜられた聴きどころ&見どころ。やがて女たちの指示で洗濯籠はテムズ川へ投げ込まれる。

 ずぶ濡れのファルスタッフが〈泥棒の世界、この世は悪党だらけ〉と愚痴っているところに、再びクイックリー夫人が〈ごめん下さいませ〉と、“アリーチェからのお詫び”の手紙を届けに来た。ファルスタッフは、またも罠とは知らずに機嫌をよくする。
 一方、妻から事情を聞いたフォードは、女性たちの計画に協力することにする。ただ、彼にはもう一つ、娘ナンネッタを自分が選んだ男と結婚させる目論見もある。
 深夜の森。フェントンが恋人ナンネッタを想い、甘く美しい恋の歌〈唇から喜びの歌が〉を歌う。森にやって来たファルスタッフは〈愛が君を呼んでいる〉とアリーチェに迫る。すると〈夏のそよ風にのって〉と歌うナンネッタの声を機に、妖精やお化けに扮した人々が登場。彼らに小突きまわされたファルスタッフは悲鳴をあげ、ついに謝る。騒ぎが一段落したところで、フォードが画策した娘の結婚も失敗したことが判明する。
 ファルスタッフから始められるフーガ〈世の中はすべて冗談〉は、その台詞が10人のソロと混声合唱に次々と受け継がれていく。類をみない大フーガの傑作が、沸き立つような大団円をもたらす。