オペラ「リゴレット」は、老道化師リゴレットが娘をたぶらかした殿様に復讐しようと雇った殺し屋に、結局は娘を殺されてしまうという、残酷な結末に至る悲劇。ヴェルディの出世作であるこのオペラは、珠玉のような旋律とアリアが散りばめられ、若きヴェルディの力が漲っています。スカラ座でも数々のプロダクションが上演されてきましたが、1994年にジルベール・デフロ演出版が上演されると、「スカラ座に『リゴレット』が帰って来た!」と大喝采を浴びました。登場人物一人ひとりの心理を克明に描写する演出、絢爛豪華にして壮大なスケールのフリジェリオによる舞台美術、ことに第1幕の第1場の絢爛豪華な宮殿の大広間から、第2場の二段構造の荘厳なゴシック建築を思わせる舞台への転換は、観るものの度肝を抜きます。
 そして、何よりもスカラ座が誇るヴェルディ歌手陣。タイトルロールには、この役にこの人ありと謳われるヌッチと、近年この役をあたり役としているガグニーゼ。巧みなコロラトゥーラのテクニックが要求される清純な娘ジルダ役には、すでにこの役で定評をもつモシュクと、若き逸材として注目されているアレハンドレスが競演。色男マントヴァ公爵には、世界中の舞台でこの役を演じているカレヤが登場。悪役スパラフチーレとマッダレーナの兄妹は、実力はもとより美男・美女で注目を集めている若手新進で固めた。次から次へと感動の戦慄が襲ってきます。これぞイタリア・オペラの醍醐味を思う存分味わえる極め付きの1本です。