好色なマントヴァ公爵は夜会に集まった婦人たちを〈あれかこれか〉と品定め。そこに現れたモンテローネ伯爵は、娘がマントヴァ公爵に弄ばれたと訴える。伯爵をからかったマントヴァ公爵に仕える道化リゴレットは、呪いの言葉を浴びせられる。
 夜、家路につくリゴレットは殺し屋スパラフチーレから“商売”をもちかけられる。取り合わずにやり過ごしたリゴレットだが、1人になると「あいつは剣で、俺は舌で人を殺す」と〈おれたちは同じ穴のむじな〉と歌う。家でリゴレットを迎える娘ジルダ。〈娘よ、お前は私の命〉は父娘の深い情愛が歌われる二重唱。リゴレットが去ると、学生姿に変装したマントヴァ公爵がジルダの前に現れる。教会で会ったこの学生に恋心を抱いていたジルダは驚き、公爵の情熱的な告白で夢見ごこちに。2人の素晴らしい愛の二重唱〈あなたは私の心の太陽だ〉は、全曲中最大の聴きどころのひとつ。
 1人になったジルダが、「なんて素敵な名前!」と歌う〈麗しい人の名は〉は、華麗なコロラトゥーラが心のときめきを表す名アリア。このアリアの終盤で、ジルダをリゴレットの情婦と勘違いした廷臣たちの合唱〈静かに、静かに〉とともに彼女はさらわれて行く。

 宮殿で、公爵はジルダが誘拐されたと知って〈あの女が誘拐された~ほおの涙が〉と歌う。心配と犯人への復讐、そしてジルダへのひたむきな愛が表されるこの歌は、公爵の真の愛を垣間見せる聴きどころ。しかし、ジルダが宮廷にいると知るや一転、好色な公爵に戻り、浮き浮きとジルダのもとへ。リゴレットは心配極まりないが、道化らしく装い〈ララ、ララ〉と鼻唄を歌いながらジルダの行方を案じる。やがて廷臣たちの素振りからジルダが公爵の手にかかったことを嗅ぎつけたリゴレットは「俺の娘だ!」と叫び廷臣たちを驚かせる。娘を取り戻そうと歌う〈悪魔め、鬼め〉は、憤怒から悲痛な訴え、やがて絶望までを表す悲痛で劇的な名アリア。走り出て来たジルダは、父に事情を訴える。二重唱〈いつも日曜日に教会で~娘よ、お泣き〉。娘をなぐさめながら、リゴレットは公爵への復讐を決意する。

 スパラフチーレの酒場兼安宿で、「風のなかの羽のように」と歌うマントヴァ公爵の明るい声が聞こえる。〈女心の歌〉として有名なアリアだ。リゴレットはジルダを連れて来て、恋をあきらめさせようと、スパラフチーレの妹マッダレーナと公爵との情事の様子を覗かせる。宿の外で苦悩する父娘、宿のなかで情事をすすめる公爵とマッダレーナによる四重唱〈あなたにはいつか会ったことがある〉は、それぞれの心情が吐露される四重唱の傑作。
 父からヴェローナへ行けと命じられたジルダだが、公爵の身を案じて宿の外に戻って来る。ジルダは、スパラフチーレがリゴレットからマントヴァ公爵殺害を依頼されていることを知り、自分が身代りになろうと決意する。三重唱〈嵐が来るな〉は、死を覚悟し父への許しを願うジルダと緊張するスパラフチーレ、マッダレーナ兄妹による緊迫感に満ちている。
 スパラフチーレから死体の入った袋を受け取ったリゴレット。しかし沈黙のなかに公爵の歌う〈女心の歌〉が聞こえる。愕然としたリゴレットが袋を開くと、中には瀕死のジルダが! フィナーレの二重唱〈ついに復讐のときがきた~おお、わたしのジルダ〉が始まり、父に許しを請いながら息絶えるジルダの傍らで、リゴレットは「あの呪い!」と悲痛な叫びを上げる。