リヒャルト・シュトラウス作曲

『ナクソス島のアリアドネ』(プロローグ付1幕)
Ariadne auf Naxos

今年はウィーン初演から100年!

オペラ『ナクソス島のアリアドネ』は、これまでもウィーン国立歌劇場日本公演で2度の上演が行われてきました。18世紀半ばのウィーンを舞台とするこの物語の“ウィーンらしさ”を意識してのことだったでしょう。

オペラ『ナクソス島のアリアドネ』は、前半の〈プロローグ〉で、ウィーンの富豪が客をもてなすために用意した、この日の演し物であるオペラ開幕までのすったもんだが表され、後半では件のオペラが上演されます。もっとも、このオペラは、はじめモリエールの名喜劇《町人貴族》の劇中劇としてつくられ、シュツットガルトでの初演の後、独立した作品に改訂されて現在のかたちになりました。改訂後のオペラが初演されたのは1916年、ウィーン宮廷劇場でのこと。今年はちょうど100年目に当たります。

今回上演されるスヴェン=エリック・ベヒトルフ演出も、〈戯曲+オペラ〉から〈改訂版オペラ〉という流れで上演されました。2012年夏、まずザルツブルク音楽祭でシュツットガルト初演から100年にちなんだ記念企画として〈戯曲+オペラ〉によって制作・上演され、同年12月にウィーン国立歌劇場で〈改訂版オペラ〉のプレミエが行われたのです。

待望のヤノフスキによる舞台付オペラ指揮が実現!

自身が俳優でもある演出家ベヒトルフが、台詞や芝居に重要な意味を持たせた〈戯曲+オペラ〉バージョンと〈改訂版オペラ〉を「類似点が多くありますが、それでもやはり、たいへん異なっています。二人の別々の、しかしそれぞれが非常に魅力的な姉妹のようなものです」と語るように、〈改訂版オペラ〉ではやはり、音楽が主役となります。

オペラ『ナクソス島のアリアドネ』で、最も強い印象を与える登場人物といえば、超絶技巧のコロラトゥーラを要求されるツェルビネッタでしょう。今回演じるダニエラ・ファリーは、目下この役の第一人者。奔放なキャラクターをそのまま目に見せるような衣裳も印象的です。このツェルビネッタによって真の愛に目覚める作曲家役をウィーンにおける本プロダクションの舞台で好評を博したステファニー・ハウツィールが演じます。ツェルビネッタとは対照的なキャラクターのアリアドネ役にはグン=ブリット・バークミン。死ぬことだけを望んでいるアリアドネは、バッカスの登場により新たな愛に生きることになります。この変容を表す歌唱力と表現力が要求されるアリアドネ役は、前回の日本公演ではサロメを演じ、R.シュトラウス作品を得意とするバークミンが本領発揮します。またこのベヒトルフ版の初演においてテノール/バッカス役を歌ったステファン・グールドが、このたび日本公演でも同役で登場することが決定しました。

そして、今回の『ナクソス島のアリアドネ』における最大の注目は指揮者マレク・ヤノフスキの登場。別項でもご紹介の通り、1990年代以降、歌劇場の指揮と決別していたヤノフスキが、ウィーン国立歌劇場という大舞台に、しかも得意とするR.シュトラウス作品で戻って来るのですから!

【本プロダクション】
◉初演:2012年12月19日
指揮:フランツ・ウェルザー=メスト

予定される主な配役

Photo:Florian Kalotay

プリマドンナ/アリアドネ:
グン=ブリット・バークミン

ドイツ、ロストック生まれ。ワーグナー、ヤナーチェク、R. シュトラウスのオペラを得意とするドラマティック・ソプラノ。持ち味の劇的で強烈な表現力は2012 年のウィーン国立歌劇場日本公演でのサロメでも強く印象づけられている。アリアドネではさらに深く、聴衆を引き込んでいく。

Photo:Marcel Gonzalez Ortiz

ツェルビネッタ:
ダニエラ・ファリー

オーストリア、ニーダーエスターライヒ生まれ。ウィーンで学んだ。2009 年より、ウィーン国立歌劇場メンバー。レパートリーは幅ひろいが、なかでも、超絶技巧のコロラトゥーラと奔放なキャラクターを表現するツェルビネッタ役は最大の当たり役。世界中の歌劇場で歌っている。

Photo:Julia Wesely

作曲家:
ステファニー・ハウツィール

ドイツのカッセルで生まれ、ボストンで育った。ニューヨークのジュリアード音楽院を優れた成績で卒業。すでにウィーンをはじめ、チューリッヒやグラーツの歌劇場およびザルツブルク音楽祭ほかで実力を認められている期待のメゾ・ソプラノ。今年夏には、ヤノフスキ指揮の《ニーベルングの指環》でバイロイト・デビューを飾った。2010/2011年シーズンより、ウィーン国立歌劇場のアンサンブル・メンバーとして活躍している。

Photo:unbezeichnet

テノール/バッカス:
ステファン・グールド

アメリカのヴァージニア州生まれ。シカゴ・リリック・オペラの研修所で研鑽を積んだ。アメリカ国内で活躍を経て、優れたヘルデン・テノールとして世界中で活躍している。翳りを感じさせながらも光沢のある歌唱で聴衆を陶酔させると評されているテノール/バッカス役は、当たり役の一つといえる。

※表記の出演者は2016年9月30日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。出演者変更にともなうチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。最終出演者は当日発表とさせていただきます。