ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲

『フィガロの結婚』(全4幕)
Le nozze di Figaro

この道はローマから通じた?!

リッカルド・ムーティがミラノ・スカラ座を去ったのは2005年。その後、2011年にローマ歌劇場終身名誉指揮者に就任し、実質的な音楽監督を務める状況となりました。しかし、2014年、春の日本公演から数ヶ月後に、同歌劇場との決別が報じられました。このとき、続く数年のうちに、ローマ歌劇場で新制作する『アイーダ』と『フィガロの結婚』についても、ムーティは振らないということが、併せて発表されました。もっとも、これは結果として、日本のファンにとっては嬉しい事態となりました。2016年ウィーン国立歌劇場日本公演で、ムーティ指揮『フィガロの結婚』上演が行われることへと結びついたのですから!

2014年秋の時点で、ムーティはローマでの『フィガロの結婚』のために、有望な若い歌手に白羽の矢を立てていました。実際、伯爵夫人役のエレオノーラ・ブラット、フィガロ役のアレッサンドロ・ルオンゴ、スザンナ役のローザ・フェオーラは、今年5月、ローマ歌劇場の『フィガロの結婚』に出演することになっています(ルオンゴはローマでは伯爵役)。これらの歌手たちは、日本ではまだビッグ・ネームとは言えませんが、すでに国際的な活躍を見せている注目株にほかなりません。

また、伯爵役のイルデブランド・ダルカンジェロは、もはや押しも押されもせぬ世界のトップ・バス・バリトンですが、彼自身「モーツァルトはムーティから教えられた」と語っています。

今度のウィーン国立歌劇場日本公演では、ムーティの歌手の才能を見抜く力と指導力が証明されることとなるはずです。

『フィガロの結婚』はムーティにとって特別な作品

あらためて振り返ると、ムーティのキャリアにおける『フィガロの結婚』は、重要な意味をもつものであることがわかります。1980年にミラノ・スカラ座へのデビューを飾ったのも、10年間離れていたウィーン国立歌劇場に1993年に復帰したのも、『フィガロの結婚』だったのです。また、ムーティがカラヤンからザルツブルク音楽祭で1982年の『コシ・ファン・トゥッテ』の指揮を要請されたエピソードは有名ですが、「モーツァルトのオペラは『フィガロの結婚』しか振ったことがないのですが」と言うムーティに、カラヤンは「だから頼むのだよ」と答えたのだそうです。ムーティが、『フィガロの結婚』を、特に愛着を持っている作品と言う背景には、こうしたさまざまな思い出も影響しているのかもしれません。

ムーティの思いが込められている『フィガロの結婚』が、現在はウィーンでは上演されていないジャン=ピエール・ポネル演出の不朽の名演出で実現するのは日本だけなのですから、これはけっして見逃せません。

予定される主な配役

アルマヴィーヴァ伯爵:
イルデブランド・ダルカンジェロ

イタリア、ペスカーラ生まれ。生地とボローニャで学んだ。昨年の英国ロイヤル・オペラ日本公演では、当たり役の一つである『ドン・ジョヴァンニ』のタイトルロールで聴衆を魅了した。ウィーン国立歌劇場でも、同役のほか、数々のレパートリーで活躍。この貢献に対し、2014 年にはオーストリア宮廷歌手の称号を得ている。

伯爵夫人:
エレオノーラ・ブラット

1982 年イタリア、マントヴァ生まれ。ルチアーノ・パヴァロッティに師事し、2006 年にデビューした。ムーティ指揮のもと、2009年のラヴェンナ音楽祭『デモフォンテ』に出演。ローマ歌劇場『シモン・ボッカネグラ』では、ローマでのプレミエおよび2014 年日本公演でアメーリアを歌った。

フィガロ:
アレッサンドロ・ルオンゴ

1978 年イタリア、ピサ生まれ。ブルゾン、ケテルソン、フレーニらに師事。2012/13 年にフィレンツェ五月音楽祭のメータ指揮『ドン・ジョヴァンニ』のタイトルロールで大成功をおさめた。同シーズンには、ムーティ指揮のもとマドリードのテアトル・レアルとローマ歌劇場の『ドン・パスクァーレ』のマラテスタを歌っている。注目のバス・バリトン。

Photo:Sergio Vitale

スザンナ:
ローザ・フェオーラ

1986 年イタリア出身。2010 年、オペラリアで第2 位および聴衆賞受賞を機に国際的な活躍をスタート。ムーティ指揮ではメルカダンテ作曲『二人のフィガロ』のイネツを好演。2014 年の来日リサイタルでは、圧倒的な表現力と“ イタリアの声” が大絶賛された。

Photo:Unbezeichnet

ケルビーノ:
マルガリータ・グリシュコヴァ

1987 年サンクト・ペテルブルク生まれ。2008 年モデナで開催されたパヴァロッティ・コンクール、2010 年ミラノで開催されたドミンゴ主宰「オペラリア」で優れた成績を獲得。2009/10 年にはワイマール歌劇場と契約。ケルビーノをはじめとする数々の役を歌った。2012 年より、ウィーン国立歌劇場ソリストとして契約。前回日本公演でもケルビーノ役を演じ、好評を博した。

※表記の出演者は2016年4月8日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。出演者変更にともなうチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。最終出演者は当日発表とさせていただきます。