リヒャルト・ワーグナー作曲
《ニーベルングの指環》第1夜

『ワルキューレ』(全3幕)
Die Walküre

ウィーン国立歌劇場日本公演初の『ワルキューレ』

1980年以来、過去9回の日本公演を行って来たウィーン国立歌劇場ですが、《ニーベルングの指環》をプログラムするのは今回が初めてのこと! 満を持して上演するのは4部作のなかでも最も人気が高い『ワルキューレ』です。『ワルキューレ』では、権力をめぐる争いはなりをひそめ、登場人物たちの情感に重点が置かれます。愛情や苦悩という、もっとも人間的な感情にいろどられた全曲が、観る者にドラマティックな感動を与えることも人気の理由となっているようです。

このプロダクションでは、壮大なドラマを見せる“仕掛け”も満載ですが、圧巻は眠らせたブリュンヒルデの周りに炎を放ち、ヴォータンが娘への別れを心のなかで告げるフィナーレ。プロジェクション・マッピングによって燃え盛る炎は、舞台からあふれんばかりの迫力です。

スペシャリストの指揮者と“強力”な歌手陣による“完璧な上演”

もちろん視覚を圧倒するだけではありません。アダム・フィッシャーは、ワーグナーのスペシャリストとして認められる指揮者。そのきっかけは、2001年のバイロイト音楽祭デビューでした。急死したジュゼッペ・シノーポリの代役として《ニーベルングの指環》を振ったこのとき以来、バイロイトや生地ブタペストをはじめ、数々の《指環》上演を手がけながらも、自身は「《ニーベルングの指環》は謎に満ちています。一生をかけても、その謎を解き明かすには十分ではありません」と語ります。作品に真摯に取り組む職人的気質の持ち主なのです。

「指揮者は歌手に対する助力なのだ」というフィッシャーのもと、今回顔を揃えるキャストを表すなら、“強力”の一語。当代きってのバス・バリトンであるトーマス・コニエチュニーによるヴォータン、もはやワーグナー歌手としての揺るぎない評価を獲得し、現代最高と認められているニーナ・シュテンメのブリュンヒルデ、リリカルさと迫力を備えたクリストファー・ヴェントリスのジークムントは、押しも押されもせぬワーグナー歌手としての実力を見せつけます。ジークリンデ役のペトラ・ラング、フリッカ役のミヒャエラ・シュースターも、バイロイトでの活躍は証明済み。これほどまでに“強力”な歌手が揃えば、“完璧な上演”が約束されること間違いありません。

【本プロダクション】
◉初演:2007年12月2日
指揮:フランツ・ウェルザー=メスト

予定される主な配役

ジークムント:
クリストファー・ヴェントリス

イギリス出身。バイロイト音楽祭デビューを飾ったパルシファルの大成功を機に、タンホイザー、ローエングリン、エリックなど、ワーグナー歌手として世界中のオペラハウスで活躍することとなった。なかでもジークムント役は、持ち味の伸びやかな美声が活かされる当たり役。「死の告知」の場面では、泣かずにいられないはず!

Photo:Ann Weitz

ジークリンデ:
ペトラ・ラング:

ドイツ、フランクフルト生まれ。1994 年に初めてワーグナーの役(ワルトラウテとフリッカ)を歌った。以来、最大の持ち味であるパワーを武器に、バイロイトをはじめ、世界中の歌劇場でワーグナー歌手として活躍している。今年5 月には、新国立歌劇場『ローエングリン』のオルトルートで来日する。

Photo:Neda Navaee

ブリュンヒルデ:
ニーナ・シュテンメ

ストックホルム生まれ。近年、ことにワーグナーの諸役で充実したレパートリーを世界中の歌劇場で聴かせている。なかでもブリュンヒルデ役は現代最高の呼び声も高い。ウィーン国立歌劇場には2003 年にデビュー。ゼンタ、ジークリンデ、ブリュンヒルデのほか、トスカやエレクトラなども歌っている。

Photo:Michael Poehn

ヴォータン:
トマス・コニエチュニー

1972 年ポーランドのウッチ生まれ。大きなセンセーションを呼んだのは、2008 年のウィーン国立歌劇場《ニーベルングの指環》のアルベリヒ役。その後、一気に人気と注目を高め、現在は当代きってのドラマティック・バス・バリトンと認められている。今春は「東京・春・音楽祭」『ジークフリート』のアルベリヒのほか、リサイタルも開催。

Photo:Nikola Stege

フリッカ:
ミヒャエラ・シュースター

ドイツ、バイエルン州のフュルト生まれ。ザルツブルクとベルリンで学んだ。ベルリン国立歌劇場、ドレスデン・ゼンパー・オパー、バイエルン国立歌劇場などで、ワーグナー・レパートリーで活躍。役柄のキャラクターをさらに強烈に表現することに長じている。ウィーン国立歌劇場には2006 年にジークンデでデビュー、その後、フリッカ、ワルトラウテ、『タンホイザー』のヴェーヌスなどを歌っている。

※表記の出演者は2016年4月8日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。出演者変更にともなうチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。最終出演者は当日発表とさせていただきます。