2025年は、年明けの1月にバンジャマン・ベルナイム、3月にヴィットリオ・グリゴーロ、4月にリセット・オロペサが登場するNBSの〈旬の名歌手シリーズ〉。このシリーズは、旬の歌手が最大の魅力であることはもちろんですが、その魅力をより一層輝かせるのはオーケストラの演奏! というわけで、今回は"旬の歌手"と共演する3人の指揮者に、歌手の魅力、コンサートの魅力について聞きました。
指揮者マルク・ルロワ・カラタユー
今回の〈バンジャマン・ベルナイム・テノール・コンサート〉のプログラムについて、指揮者の視点からご紹介ください。
オペラ・アリアのコンサートはいつも特別な瞬間で、魔法のようでもあり、また要求も厳しいものです。魔法のようであるというのは、オペラのレパートリーのなかでも最も美しいアリアの数々を一晩で聴くことができるからです。今回は、ベルナイムの並外れた才能によって、さらに素晴らしいコンサートになると思います。プログラムは主にイタリアとフランスの偉大な作曲家に焦点を当てていて、これらのレパートリーにおいてベルナイムは世界でも卓越した歌唱力を誇っています。演奏者にとっては、オペラ・アリアのコンサートは、ある作曲家から別の作曲家の作品に移る際には、常にスタイルを変えなければならないため、とても要求の厳しいコンサートでもあります。
あなたはキャリアの中でベルナイムと頻繁に共演されてきたと聞いていますが、歌手としてのベルナイムについて教えていただけますか?
ベルナイムと定期的に共演できるのはとても幸せなことです。2019年、私が当時アシスタント指揮者として働いていたボルドー歌劇場で、彼がマスネの『マノン』のデ・グリュー役でデビューした時に出会いました。それから、私たちは仕事上でも、個人的にも友情を育んできました。私にとって、バンジャマン・ベルナイムは"理想的な歌手"です。深い感受性と完璧なテクニックが融合し、常に音楽、作曲家、そして特に歌詞に奉仕しています。今シーズンは、東京でのコンサート、ミュンヘン、そしてシャンゼリゼ劇場で『ウェルテル』(マスネ作曲)、ウィーン国立歌劇場で『ロミオとジュリエット』(グノー作曲)で彼と共演できることをとても嬉しく思っています。
あなた自身のキャリアにおけるオペラとの関わりについて教えてください。
子どものころから、物語を語るのが大好きでした。自分の部屋でレゴを使ってずっと幻想的な冒険を思いつくことができました。物語を語ることにかける情熱が、オペラへの愛へと繋がってきました。オペラを指揮するのは、人々に夢を与える素晴らしい機械の舵を取ることです。舞台装置、照明、衣裳、そしてもちろん歌手たちも。すべてが数時間にわたる空想の世界を創り出すのに貢献するのです!
指揮者レオナルド・シーニ
レオナルド・シーニは1990年イタリア生まれ。2017年にゲオルク・ショルティ国際指揮者コンクールで優勝。すでに日本では、東京二期会公演で2021年『ファルスタッフ』と2023年『ドン・カルロ』を振るほか、世界の一流歌劇場でも指揮をするなど、注目される若手指揮者です。そのシーニが2025年のグリゴーロとのコンサートについてコメントを寄せてくれました。
今回のプログラムでは、プッチーニとヴェリズモのレパートリーのなかでも最も有名な部分に焦点を当てます。これらの作品のテノールのアリアは、強い感情の激しさ、有名で不滅のメロディー、そして優れたテクニックと、深い解釈の感受性を必要とする「声の表現力」が特徴です。
指揮者にとって、この種のレパートリーに基づくコンサートを指揮することは、ニュアンスに富んだ強烈で魅力的な体験です。
指揮者はオーケストラを導き、歌い手の声をサポートして高みに上げ、アーティストの潜在能力と資質を際立たせる、ユニークな化学反応を生み出すことができなければなりません。ヴィットリオ・グリゴーロのような世界最高の才能あるテノールとのコラボレーションはスリリングです!
彼は、稀有なカリスマ性と非常に個人的でインパクトのある音楽と声のビジョンに恵まれたアーティストです。今日のテノール歌手界において、グリゴーロはまさに「唯一無二の存在」と言えるでしょう。寛大なアーティストで、常に聴衆を重視し、世界中で彼のコンサートに来る人々の感情を湧きあがらせ、魅了する能力に優れています。
指揮者コッラード・ロヴァーリス
指揮者の立場から、今回のオロペサとのコンサートについて紹介していただけますか?
オロペサさんがモーツァルトのアリアでプログラムを始めると決めたことを、私はとても嬉しく思っています。若い歌手はみな、モーツァルトからテクニックを身に付けるべきで、オロペサさんは素晴らしいお手本です。プログラムについては、モーツァルトから始め、2種類のプログラムを用意しています。彼女の卓越したテクニックによって、絶妙な解釈と表現の世界へ導かれると思います。
ドニゼッティ、ベッリーニ、ロッシーニなどのベルカント・オペラを指揮することの魅力とは?
私は、ベルカント・オペラのレパートリーを年代順に、つまり前世紀の音楽の自然な進化として生まれたスタイルとして考えるのが好きです。このようにアプローチすることで、多くの新しく興味深い要素を見つけることができ、声の部分をさらに強調する、「軽快さ」を見つけることができると思うからです。
オロペサとはたびたび共演されているだけでなく、アルバムも録音されていますね。
2015年に、私はフィラデルフィア歌劇場に彼女を招き、『椿姫』のヴィオレッタ役でデビューさせました。それ以来、私はフランスのベルカント・アリアのアルバム(French Bel Canto)のヒットなど、さまざまな機会に彼女とコラボレーションする機会に恵まれ、彼女の素晴らしい音楽性と信じられないほどのプロ意識を毎回感じています!