──柄本さんは2010 年以来、国内外の舞台で由良之助を演じてきましたが、秋元さんは2016年、初演30周年記念公演として上演された『ザ・カブキ』で由良之助デビュー、今回が二度目の主演となります。
秋元康臣 『ボレロ』のリズムを除けば、初めて取り組むベジャール作品でした。馴染みのない音楽でなかなか振りを覚えられず、(柄本)弾君にはいろいろ教えてもらいましたね。
柄本弾 僕も最初はそうでした。コール・ドを経験していた分、それほどではなかったけれど、秋元君は──。
秋元 全く初めて(笑)。ベジャールさんの振付が難しく、「このカタチを作って」と言われても最初はすんなりできませんでした。3代目由良之助の高岸直樹さんに指導していただくようになってやっと動きやすくなりましたが。本番では出だしからガチガチに緊張していましたね。
──現代の青年が忠臣蔵の世界へと入り込むプロローグから始まり、第1幕では四十七士の討ち入りに至るまでのさまざまな事件が繰り広げられます。
柄本 第1場でもっとも活躍するのは高師直で、第2場はおかる勘平、第3場、第4場は塩冶判官と、場面ごとに各登場人物それぞれのストーリーが展開します。とくに第4場、塩冶判官切腹の場はすごく美しく、演じる側も鳥肌が立つところ。それから第1幕最後の由良之助のヴァリエーション! 1幕最大の見せ場でしょう。
秋元 7分半のソロはあまりにハードで、まさに孤独です。現代の青年は、ここでついに四十七士のリーダーとして生きる覚悟を決める、と思って演じています。
柄本 「決意のヴァリエーション」と捉えていますが、その中にも少し揺らいだり、負けそうになったりする、彼の心境を表現したいんです。
秋元 僕は、ひたすら攻め続ける、という感覚があります。一人で踊るのはかなりハードなことですが、踊りきった達成感は実に気持ち良かった。7分半というのは、ほかのバレエにはない長さですね。
柄本 『ボレロ』は15分(笑)。
秋元 そうでした! ベジャールさんすごい(笑)。第2幕の討ち入り、47人もの男性ダンサーがずらりと勢揃いする場面も、男性が多い東京バレエ団でなければ成立しない特別なシーン。そこから切腹へと至るわけですが、最後は演じながら涙ぐんでいました。
柄本 僕は「涅槃」も大好きです。黛敏郎さんの音楽も最初は馴染みがなかったけれど、今はこれ以外は考えられないくらい素晴らしいもの。
秋元 どんどん煽られる音楽で。
──2019年にはミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場で上演されます。
柄本 ミラノ・スカラ座は、2010年の海外公演通算700回の『ザ・カブキ』で舞台に立ちました。傘持ちとコール・ドでしたが、舞台の傾斜がとてつもなく急だったのを覚えています。
秋元 坂を上がっていく感覚でしょう。
柄本 お客さんの反応は、地響きが起こるほどすごかった! もちろん、表面的なことだけでなく、内容もしっかり伝わってのことと思います。
秋元 多くの方が日本文化に興味を持ってくださっていると実感します。日本人らしい舞台は、きっと喜んでいただけるはず。
柄本 実は今回、2日目、秋元君が由良之助を演じる日に、討ち入りされる側の師直を僕が演じます。僕が由良之助の初日は、秋元くんが──。
秋元 塩冶判官を踊ります。二役演じるのは怖いものですね。二人とも初役だし。
柄本 実は、大先輩の夏山周久さんが由良之助と師直を役がわりで踊られていたので、この組み合わせで踊れるのは嬉しいですね。
秋元 普段、どうしても踊る役柄が偏りがちなので、楽しみにしているんです。
柄本 もう一役をやることで由良之助に活きることが、絶対にある。僕自身、この2年間で培ってきたものがあるし、周りのキャストも刷新され、以前とは全然違う印象の舞台になるはず。
秋元 稽古が始まったら、違う由良之助が見えてくるかもしれない。初日と2日目では全く異なる舞台になると思うので、ぜひ、両日ともに楽しんでいただきたいです。
[取材・文 加藤智子 フリーライター]
12月15日(土)14:00
12月16日(日)14:00
会場:東京文化会館
由良之助:柄本弾(12/15)、秋元康臣(12/16)
顔世御前:上野水香(12/15)、 奈良春夏(12/16)
直義:永田雄大(12/15)、 森川茉央(12/16)
高師直: 森川茉央(12/15)、柄本弾(12/16)
塩冶判官:秋元康臣(12/15)、樋口祐輝(12/16)
伴内:岡崎隼也(12/15)、 井福俊太郎(12/16)
おかる:川島麻実子(12/15)、 沖香菜子(12/16)
S=¥10,000 A=¥8,000 B=¥6,000 C=¥4,000 D=¥3,000 E=¥2,000
学生券=¥1,000
※学生券はNBS WEBチケットのみで11/8(木)20:00より発売。
★ペア割引[S、A、B席]あり ★親子ペア割引あり
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