東京バレエ団「海賊」 芸術監督斎藤友佳理インタビュー「生誕200年を機に、

Photo: Shoko Matsuhashi

 2019年3月、東京バレエ団は、新制作の全幕作品『海賊』を上演する。数々の古典作品をレパートリーとする東京バレエ団にとっても、新鮮、かつエキサイティングな挑戦となりそうだ。
「もしかしたら、娯楽性が強い作品という印象があるかもしれませんが──」と、斎藤友佳理芸術監督。「ですが、『海賊』はマリウス・プティパが手がけた、クラシック作品として不動の人気を得ている作品の一つ。アカデミックな基礎がなければ踊ることのできない大作です」と明かす。
 東京バレエ団は今年の夏、プティパ生誕200年記念として〈夏祭りガラ〉〈プティパ・ガラ〉を上演、プティパが携わった数々のパ・ド・ドゥ、ディヴェルティスマンを披露したばかりだが、「プティパ生誕200年の記念の年は、来年3月まで続きます!」と笑う。
「偉大な振付家への敬意をこめてプティパの作品に取り組みましたが、クラシックのパ・ド・ドゥにじっくり向き合うことで、ダンサーたちは多くを学び、成長をとげたはず。また同時に、東京バレエ団ならではの現代作品を大切にしながら、継続的にクラシックを踊ってそのクオリティを保つことも重要と感じています。──そんななかで、クラシックの新作に、それもプティパの全幕作品に、あらためて取り組む機会を持ちたいと考えるようになりました」
『海賊』といえば、抜粋で上演されるパ・ド・ドゥ(もしくはパ・ド・トロワ)が有名だが、もちろん、全幕作品としてもさまざまなヴァージョンが、ロシアをはじめとする世界各地で上演されている。
「たとえばモスクワのボリショイ・バレエ──。2007年に、当時の芸術監督、アレクセイ・ラトマンスキーがユーリー・ブルラーカとともに手がけた改訂版『海賊』を初演しています。とても大がかりな舞台で、上演時間は4時間弱という超大作。観るほうもちょっと大変だけれど(笑)、あの花園の場面の美しいこと! 舞台に花壇まで現れて、実に華やかです。
 ちなみに、その後ボリショイ・バレエの芸術監督となったブルラーカは、モスクワ舞踊大学院での私の指導教官。ボリショイの芸術監督の部屋までレポートを出しに行ったり、伝承学の授業で彼に直接『海賊』のオダリスクのヴァリエーションを習ったりしたことが思い出されます」
 いっぽう、今回東京バレエ団が上演するのは、アメリカン・バレエ・シアター、ミラノ・スカラ座バレエ団などが上演し、世界的に評価を得ているアンナ=マリー・ホームズ版だ。
「壮大な物語を実にわかりやすくまとめあげたヴァージョンです。世界の名だたる劇場で人気を得ている点も、決め手の一つに。1970年代にサンクトペテルブルクで上演されたコンスタンチン・セルゲイエフ版をもとにした、ロシアの伝統を受け継ぐ作品です」
 では、実際にどんな舞台になるのか。東京バレエ団による『海賊』の、ここぞという見どころは──?
「多様な性格の役柄が必要とされ、男性陣が大活躍する作品ですが、男性ソリストの層が、着実に、より厚くなっている今の東京バレエ団にとって、これは最適の演目ではないかと! もちろん女性陣にも、第2幕の花園の場面という美しい見せ場があります。多彩なキャラクター・ダンスが登場することも特徴的。東京バレエ団は、代表的レパートリーの『ドン・キホーテ』、また2016年に初演したブルメイステル版『白鳥の湖』でも、たっぷりと時間を割いてキャラクター・ダンスに取り組んできましたから、『海賊』は、この実績を活かす絶好の機会でもある。これまでとはまた違った雰囲気のキャラクター・ダンスを、存分に楽しんでいただけることと思います。しかも装置・衣裳はミラノ・スカラ座バレエ団からお借りします。とてもゴージャスですよ!」
 主役級ダンサーたちの配役は、ホームズ女史と何度も協議を重ねて決定、プリンシパル総出の充実の舞台となりそうだ。
「主要な役柄はダブルキャストに。主役としての華やかさが求められるメドーラは上野水香と沖香菜子、力強さとパートナリングが重要なコンラッドは柄本弾と秋元康臣が、さらに、コケティッシュな魅力のギュルナーラは川島麻実子と伝田陽美が、ダイナミックな技が際立つアリは宮川新大と池本祥真が演じます。それぞれの個性、持ち味が、存分に発揮される舞台にしたいですね」
 たっぷりと活躍の場が用意される他のソリストたちも、実に楽しみである。

東京バレエ団『海賊』

【公演日】

2019年
3月15日(金)19:00
3月16日(土)14:00
3月17日(日)14:00

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

メドーラ:上野水香(3/15、17)、沖香菜子(3/16)
コンラッド:柄本弾(3/15、17)、秋元康臣(3/16)
アリ:宮川新大(3/15、17)、池本祥真(3/16)
ギュルナーラ:川島麻実子(3/15、17)、伝田陽美(3/16)

【入場料[税込]】

S=¥11,000 A=¥9,000 B=¥7,000 C=¥5,000 D=¥4,000 E=¥3,000
都フェスシート=¥2,000

★ペア割引(S,A,B 席)あり ★親子割引(S,A,B 席)あり

【その他の公演】

富山 3月21日(木・祝)

オーバード・ホール (問)076-445-5511

西宮 2019年3月23日(土)

兵庫県立芸術文化センター (問)0798-68-0255