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2018/07/02 2018:07:02:15:11:40

【第15回世界バレエフェスティバル】シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ 特別インタビュー

 第15回世界バレエフェスティバル、出演ダンサーへのインタビュー第二弾はハンブルク・バレエ団を代表するプリンシパル、シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコの登場です! 本年2月のハンブルク・バレエ団公演でも圧倒的な輝きをみせた二人。3度目の出演となる今回の公演への抱負やこれまでの出演の想い出などをたっぷりと語っていただきました。

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---- アッツォーニさんとリアブコさんは、ハンブルク・バレエ団の"おしどり"プリンシパルとして、日本の観客にもお馴染みの存在です。お互いの踊りを初めて見た時の印象を教えてください。


アッツォーニ:1995年のことです。ハンブルク・バレエ学校の公演で、ジョン(ノイマイヤー)の『ヨンダリング』で音楽と一体になって躍動していた少年に目が釘付けになりました。彼はいった何者なの? きっと素晴らしいダンサーになるわ! そう確信しました。この少年がサーシャ(リアブコ)でした。ジョンも同じことを感じたのでしょう、卒業予定を一年繰り上げて、サーシャを団員にしてしまいました。

リアブコ:96年に私が入団した時、稽古場でも舞台でも、実はシルヴィアに見とれていました。特別なオーラを放っていたんですよ。すぐにでも共演したかったけれど、彼女はソリストだったので、新人の私では相手役は務まらないないな、と弱気になったり、でも、身長のバランスが良いから、経験を積んでパートナリングのテクニックを磨けば、きっとチャンスが巡ってくるだろう、と自分を励ましたり...。


主役か端役か関係なく、ダンサーの役割は作品の誕生を後押しすることなのです



---- 芸術監督ジョン・ノイマイヤー氏の幾つもの創作に立ち会われています。どのように新作が誕生するのでしょうか。


リアブコ:ジョンは入念にリサーチをした上で、リハーサルに臨みます。日本公演(2018年2月)の演目だった『ニジンスキー』でも、そうでした。彼はあの不世出のダンサーに魅了され、書籍や彼をモデルにした美術品、ニジンスキーの手書きの絵を収集しているほどです。けれども稽古場に足を踏み入れたら、ジョンはすべてを白紙に戻し、何物にもとらわれずに、インスピレーションが湧くのを待ちます。音楽を流すこともあれば、無音のこともあります。そして、おもむろに動き始める。私達ダンサーが彼の動きを再現し、発展させながら、振付に昇華させていきます。

アッツォーニ:ジョンの創作に参加することは、緊張感に満ちた、素晴らしい時間です。自分が主役を踊るのか、端役なのかなんて、関係ありません。ダンサーの役割は、神経を研ぎ澄まし、その瞬間に彼が生み出したものを受け止めて、作品の誕生を後押しすることなのです。


---- お二人とも、ハンブルク・バレエ団一筋のキャリアを歩まれています。


アッツォーニ:このバレエ団は、私の人生そのものです。自分の体も心もバレエ団に捧げ、アーティストとして成長してきました。そしてサーシャというパートナーに出会い、苦楽を共にし、娘にも恵まれました。今日までの歩みをとても誇らしく感じています。



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一夜限りのイベントではなく、偉大なダンサーたちと時間を共に過ごし、学びあうのです



---- 世界バレエフェスティバル出演は、2003年、2015年に続いて、3度目となります。思い出深いエピソードはありますか。


アッツォーニ:初めて参加した時、錚々たるスター達を目の当たりにして、自分はなんてちっぽけな存在なんだろう、と気後れしていました。でも、ジョンの「マーラー交響曲第三番」のデュエットを踊った時、ほんとうに美しかった、とシルヴィ・ギエムが声をかけてくれました。私、感激のあまり、卒倒しそうでした(笑)。出演者の間に、上下関係もライバル意識もありません。誰もが同じ立場でレッスンに励み、自分の踊りをさらに磨くために全力を尽くしている。なんて素晴らしいのだろう、と思いました。

リアブコ:このフェスティバルは出会いの場です。一夜限りのイベントではなく、偉大なダンサー達と2週間もの時間を共に過ごし、刺激し合い、学び会うのです。彼らの舞台に感嘆するだけでなく、本番前にどのように準備をし、公演後にどのような体のケアをするのか。その姿を規範に、私も自分を鍛錬してきました。いま一度、この場に立ち、ジョンの作品を踊ることが楽しみでなりません。


取材・文:上野房子(ダンス評論家)