




リヒャルト・ワーグナー作曲「ローエングリン」全3幕
指揮: ケント・ナガノ 演出: リチャード・ジョーンズ
リチャード・ジョーンズ演出の『ローエングリン』あらすじと聴きどころ
第1幕
エルザが描いている設計図は、愛する家族と穏やかに暮らすための夢みる愛の巣=マイホームだ。この『ローエングリン』では、物語の進行とともに、この設計図通りの家が、実際に建てられていく。平凡なはずのエルザの夢を阻むのは、テルラムントとオルトルートによる計略だ。テルラムントの告発によって、弟殺しの嫌疑をかけられたエルザは、王と民衆の前で、自分を護ってくれる夢に見た騎士のことを語る(「エルザの夢」)。窮地に陥ったエルザの祈りのなか、一人の男が白鳥を抱いて現れる。この男は、夫となってエルザを護るが、自分の素姓や名前を尋ねないことを約束させる(「決して尋ねてはならぬ」)。決闘でテルラムントを倒した男は、エルザとともに人々から祝福を受ける。
第2幕
騒ぎを起こし、追放の身となったテルラムントは妻オルトルートに、エルザが弟を池に沈めるのを目撃したと嘘を言ってそそのかしたのはお前だと怒りを向ける。するとオルトルートは、今度はエルザをそそのかす悪智恵を企み、夫婦は復讐を誓う(二重唱「復讐の成就を信じよう」)。「そよ吹く風よ」と、夢に見た“騎士”と出会えた幸福を歌うエルザに近づいたオルトルートは、言葉巧みに自分たち夫婦の窮状を訴え、エルザの心に憐れみの心を掻き立てる。エルザは遂にテルラムントを男にとりなすことを約束する。 エルザとブラバントの守護者となった男との婚礼に向かうエルザを、人々が祝福する(合唱「姫の歩みに祝福あれ」)。すると突然、オルトルートが「男の素性の正しさを証明できるのか?!」とエルザに強い言葉を投げつける。エルザは動揺し、人々が騒然とするなか、王と男が現れ、騒ぎをおさめるが、今度はテルラムントが男に素性を明かすよう迫る。男は、毅然とした態度で、「自分が素性を明らかにすることを拒めるのは唯一、妻であるエルザだけ」とはねつける。
第3幕
舞い上がるような金管のファンファーレが繰り返される華々しい前奏曲。舞台上にはエルザが描いた設計図通りの家が建ち上がっている。有名な「婚礼の合唱」のなか、エルザが描いた設計図が寝室に掛けられ、ベビーベットや家具が運びこまれていく。婚礼を終えて、二人は夫婦として初めての夜を迎え、幸せに浸る(二重唱「あなたを求めてわたしの心は甘く燃え立つ」)。やがてエルザは「わたしもあなたの名を呼びたい」と言い始める。困惑した男はエルザの気をそらそうと試みるが(「ともに吸っている芳しいこの薫りを」)、エルザはなおも問い詰める。「この上もない信頼を君に授けたはず」と説得する男の言葉も功を奏さず、ついにエルザが禁問を発した途端、テルラムントが乱入して来る。男は一撃でテルラムントを倒すが、「二人の幸せはこれでおしまいだ」と落胆し、二人の家に火を放って幸せな生活の終止符を打つ。 王と兵士のもとに現れた男は、エルザが禁問を発したことを告げ、自分の素姓を明かす(グラール語り「遥かな国に」)。彼は聖杯に仕える王パルジファルの息子ローエングリンであり、エルザを救うために現れたが、人々に身分が知られたら、そこにとどまることはできないのだと。そこに迎えの白鳥がやって来る。この白鳥はオルトルートの魔法によって変えられたエルザの弟だった。騎士は白鳥を魔法から解き、皆に引き渡して静かに去っていく。