










リヒャルト・ワーグナー作曲「ローエングリン」全3幕
指揮: ケント・ナガノ 演出: リチャード・ジョーンズ
スタッフ&キャスト
指揮:ケント・ナガノ Musikalische Leitung : Kent Nagan
カリフォルニア出身のケント・ナガノは、2006年9月にバイエルン国立歌劇場音楽総監督に就任しました。また、同年からモントリオール交響楽団の音楽監督も務めていることは、オペラとコンサートの双方で手腕を発揮する実力派指揮者である証明といえるでしょう。 これらの重責を担うまでにも、30年におよぶバークレー交響楽団音楽監督としての活動のほか、リヨン国立歌劇場音楽監督、ハレ管弦楽団音楽監督、ベルリン・ドイツ交響楽団芸術監督、ロサンゼルス歌劇場音楽監督などにおいて重要な役割を果たしてきたことはいうまでもありません。また、オペラ指揮においては、ベルリン国立歌劇場、パリ・シャトレ座、ザルツブルク音楽祭、バーデン・バーデン祝祭劇場など、オーケストラ指揮者としてもウィーン・フィル、ベルイン・フィル、ニューヨーク・フィル、シカゴ交響楽団など、世界を代表するオーケストラのほとんどに客演しています。 ケント・ナガノの音楽づくりは、明快さと優雅さをもち、そして知的であることが高く認められています。さらに、古典派から現代音楽まで、ほとんどすべての分野をレパートリーとしていることも特筆すべきものといえます。 バイエルン国立歌劇場においても、リーム作曲『ダス・ゲヘーゲ』やチン・ウンスク作曲『不思議の国のアリス』の世界初演を果たすとともに、この劇場が誇るモーツァルト、ワーグナー、R.シュトラウス作品においても手腕を発揮。2007/08年シーズンには『エフゲニー・オネーギン』、『イドメネオ』、『ナクソス島のアリアドネ』、2008/09年シーズンには『ヴォツェック』、『ローエングリン』、2009/10年シーズンには『ドン・ジョヴァンニ』、『カルメル会修道女の対話』、『無口な女』などでの成功を収めています。 就任から4シーズンを経たいま、ケント・ナガノ音楽総監督は、伝統を誇るバイエルン国立歌劇場に新鮮さと充実をもたらしたことが認められています。
演出:リチャード・ジョーンズ Inszenierung : Richard Jones
ロンドン生まれのリチャード・ジョーンズは、ウェスト・エンドやブロードウェイでの芝居やミュージカル、そしてオペラと、世界中で活躍している演出家です。オペラの演出は1984年から手がけており、2003年と2004年には、イギリスで最も権威あるローレンス・オリヴィエ賞の最優秀オペラ賞を2年連続で受賞したほか、ドイツの「オペルン・ヴェルト」誌の作品賞も幾度も獲得しています。1994-95年に英国ロイヤル・オペラで演出した《ニーベルングの指環》ではイブニング・スタンダードの芸術功績賞を得ました。 ジョーンズのオペラ演出の特徴の一つとして、独特のインパクトある視覚的要素を前面に出していることが挙げられます。たとえば、バイエルン国立歌劇場での初演出となった1994年の『ジュリオ・チェーザレ』では、がらんとした舞台上に恐竜を屹立させましたし、1999年のブレゲンツ音楽祭『仮面舞踏会』では、夕闇のボーデン湖に浮かぶ巨大な書物を骸骨が読んでいる場面をつくりだすといった具合に。ジョーンズ演出の、ポップなビジュアル、突飛な装置や設定は、常に話題を巻き起こします。 『ジュリオ・チェーザレ』の後、『真夏の夜の夢』、『ペレアスとメリザンド』に続く、バイエルン国立歌劇場での4作目として2009年に新演出された『ローエングリン』においても、“エルザが描く夢”をマイホームに象徴したことに対する賛否の声が上がりました。しかし、上演のなかで舞台上に一軒の家が建ち上がっていくという設定や、騎士に神々しい衣裳を着せないといったジョーンズならではの演出は、この作品のもつ大きなテーマを、これまでとはまったく違う角度から浮かび上がらせているのです。
美術・衣裳:ウルツ Bühne und Kostüme : Ultz 照明:ミミ・ジョルダ・シェリン Licht : Mimi Jordan Sherin プロダクション・ドラマトゥルーク:ライナー・カーリスシ Produktionsdramaturgie : Rainer Karlitschek 合唱指揮:セーレン・エクホーフ Chöre : Sören Eckhoff
予定されるキャスト
ローエングリン:ヨハン・ボータ Lohengrin:Johan Botha
ヨハン・ボータは、南アフリカのルステンブルク生まれ。13歳から声楽を学び、1989年にルーテポート国立歌劇場で『魔弾の射手』のマックスを歌ってデビュー。翌90年には『仮面舞踏会』のグスタフ3世でヨーロッパ・デビューを果たします。ドイツの劇場を中心に活動を開始し、瞬く間に欧米で引っ張りだことなりました。現在ではワーグナー、R.シュトラウスからヴェルディ、プッチーニなどのヒロイックな役柄によって世界の舞台で活躍しています。2009年ミラノ・スカラ座日本公演『アイーダ』のラダメス役での伸びやかな声に魅了されたファンも多いことでしょう。 ワーグナー作品には、ワルター、エリック、ローエングリン、ジークムント、パルジファルで舞台に立ち、現代最高のヘルデン・テノールの一人として認められています。ローエングリン役は、宮廷歌手の称号をもつウィーン国立歌劇場で、2005年に新演出キャストとして演じ成功をおさめたほか、今年2月にはシカゴ・リリック・オペラで演じ、神々しさとパワーに満ちた美声が絶賛されました。奇しくも、シカゴでエルザ役を演じたのはエミリー・マギー。今回、バイエルン国立歌劇場日本公演には、急遽決定による出演となりますが、二人の作品へのアプローチは万全といえるでしょう。 リチャード・ジョーンズ演出による『ローエングリン』では、ローエングリンは単に神々しいだけでなく、人間としての情感を湛えた存在として描かれます。深い感情表現が高く評価されているボータは、このプロダクションの本質を存分に味わわせてくれるに違いありません。
エルザ:エミリー・マギー Elsa von Brabant:Emily Magee
エミリー・マギーは同世代のなかでも、光沢のある声質を魅力に、群を抜く実力派として世界で活躍するアメリカ出身のトップ・ソプラノ。インディアナ大学で学んだ後、1996年にパリでヨーロッパ・デビューを果たしました。以後、ベルリンを拠点として、シカゴ、チューリッヒ、バルセロナ、フィレンツェ、ミラノ、ハンブルク、ロンドン、ウィーンなどの歌劇場に一気に活躍の場を広げ、人気と実力を認められています。『コシ・ファン・トゥッテ』のフィオルディリージでデビュー後、『フィガロの結婚』の伯爵夫人や『トスカ』のタイトル・ロールといったイタリア・オペラのレパートリーとともに、『アラベラ』や『ナクソス島のアリアドネ』のタイトル・ロールや、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』 のエヴァや『ローエングリン』のエルザなど、ドイツ・オペラでも高い評価を得ています。なかでもエルザ役は、デビュー間もない1998年のバレンボイム指揮の上演がCDに収められており、今なお名盤の一つに挙げられています。さらに、近年では、バルセロナのリセウ劇場ではコンビチュニー演出、シカゴ・リリック・オペラではモシンスキー演出と、対照的ともいえる演出でのエルザで、その演技力が高く評価されています。バイエルン国立歌劇場のリチャード・ジョーンズ演出でも、その演技力と歌唱力を発揮し、このプロダクションの魅力をあますことなく伝えてくれるに違いありません。
オルトルート:ワルトラウト・マイヤー Ortrud:Waltraud Meier
ワーグナーの聖地バイロイト音楽祭をはじめ、世界中の歌劇場で現在最高のワーグナー・ メゾとして活躍しているワルトラウト・マイヤー。1976年、生地ヴュルツブルクで『カヴァレリア・ルスティカーナ』のローラでデビューしたマイヤーは、1980年ブエノス・アイレス、テアトロ・コロンでの『ワルキューレ』のフリッカで国際的なキャリアをスタートさせました。以来、英国ロイヤル・オペラ、メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場などでの活躍ぶりは、オペラ・ファンには周知のことでしょう。ワーグナーのオペラに登場する“魔女”といえば、『タンホイザー』のヴェーヌス、『パルシファル』のクンドリー、そして『ローエングリン』のオルトルートとなりますが、これはそのまま、マイヤーの特筆すべきレパートリーに一致します。これらの役はいずれも、通常のメゾ・ソプラノよりも広い音域が要求されることから、ドラマティック・ソプラノによって歌われることが多いのですが、メゾ・ソプラノのマイヤーは、1998年からドラマティック・ソプラノの役柄もレパートリーに加え、以来、これらの役における最高の歌い手として認められているのです。ワーグナーは、『ローエングリン』のオルトルートを、“魔女”であるとともに完全な悪女として描きました。このワーグナーによる音楽性を、さらに強烈な個性として作り出したリチャード・ジョーンズ演出に、マイヤーの絶対的な“威力”が加わる『ローエングリン』となれば、向かうところ敵なし!と言わざるをえません。
国王ハインリッヒ:クリスティン・ジークムントソン Heinrich der Vogler : Kristinn Sigmundsson テルラムント:エフゲニー・ニキーチン Friedrich von Telramund : Evgeny Nikitin バイエルン国立管弦楽団 Bayerisches Staatsorchester バイエルン国立歌劇場合唱団 Chor der Bayerischen Staatsoper
*表記の配役は2011年8月23日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。今回の引っ越し公演においても、予定されていた出演者 がやむを得ず出演できない場合、(指揮者、主役の歌手であっても)代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。出演者変更にともなるチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。最終出演者は当日発表とさせていただきます。