ガエターノ・ドニゼッティ作曲「ロベルト・デヴェリュー」全3幕
指揮:フリードリッヒ・ハイダー 演出:クリストフ・ロイ
クリストフ・ロイ演出版のあらすじと聴きどころ
第1幕 第1場 ウェストミンスターの大広間
早朝。ワーキングウェアの清掃夫、スーツ姿のビジネスマン、現代の応接セットが置かれた“宮殿”で、彼らはロベルトのスキャンダルを報じる新聞を手に驚きを隠せない。彼は反逆の罪を裁判で問われることになった。サラも沈んだ面持ちでいる。ロベルトとサラはかつて一目を忍んで愛し合う仲だったのだ。そこに、企業の女社長といったスーツ姿で女王エリザベッタが颯爽と現れる。エリザベッタは愛人であるロベルトの愛が確かめられたなら、自分の権力によって彼を救おうと考えているのだ。エリザベッタにとってロベルトの罪は、社会へ裏切りよりも、自分の愛への裏切りの方が大きいのだと語る(「彼の愛が私を幸せにしてくれた」)。議会から提出されたロベルトの死刑判決書への署名を拒否したエリザベッタは、ロベルトと二人きりで会う。エリザベッタは、彼の愛を確かめ、蘇らせようとするが、ロベルトはつい、自分の心は他の女性に向けられていると口走ってしまう(二重唱「優しい心が」)。激怒して激しく責めるエリザベッタの様子を見て、彼女がサラと自分の関係をすでに知っていると思ったのは勘違いだったと気づいたロベルトはその場をとりつくろうが、エリザベッタの怒りをおさめることはできない。彼の裏切りを確信したエリザベッタは復讐の念に燃える(二重唱「恐るべき雷光が」)。 ノッティンガム公爵は親友であるロベルトを救おうとしている。しかし、サラが公爵の妻となっていることを聞かされたロベルトは驚き、心乱される。 第2場 ノッティンガム公爵邸サラの部屋 サラのもとにやって来たロベルトは、公爵と結婚したサラの不実を責める。サラは結婚に至ったやむを得ない事情を説明し、逆にロベルトがエリザベッタからもらった指輪をしていることを責める(二重唱「あなたが帰って来られてから」)。ロベルトはすぐに指輪をはずして投げ出す。ロベルトはエリザベッタからもらった指輪を、サラは自らが刺繍した青いショールを愛の誓いとして交換し、不吉な予感に怯えながら別れを告げる(二重唱「この別れは永遠のもの」)。
第2幕 ウェストミンスターの大広間
翌朝。ロベルトの死刑が決まった。ロベルト逮捕の報せとともに、彼が持っていた青いショールがエリザベッタに届けられる、エリザベッタは死刑判決書に署名することを決意。その署名を求める役割を負ってエリザベッタのもとにやって来たノッティンガム公爵は、親友のため、最後の弁護を試みるが、怒りに燃えるエリザベッタは耳を傾けようとしない。連れて来られたロベルトに、エリザベッタが裏切りの証拠として青いショールを示すと、ロベルトばかりかノッティンガム公爵も驚愕して立ちすくむ。激昂するエリザベッタは恋敵の名を問い詰めるがロベルトは一切を拒否。エリザベッタはついに死刑判決書に署名する(三重唱「ならずもの!〜行け、お前には死がふさわしい」)。
第3幕 第1場 サラの部屋
サラのもとに獄中のロベルトから、例の指輪をエリザベッタのもとに届けるようにと書かれた手紙が届く。エリザベッタはかつて、「この指輪が彼の命を保証する」と彼に言っていたからだ。しかし妻の不実を非難するノッティンガム公爵によってサラは監禁されてしまう。(二重唱「知らぬのか、裏切られた者には」〜「私をさいなむこの苦悩に」)。
第2場 監獄の独房
囚われたロベルトは、愛するサラの身の潔白の申し開きをしたいと願っている。そして友への誠意を示すため、処刑ではなくノッティンガム公爵の手による死を望んでいる(「恐ろしき扉はまだ開かない〜天使のような純粋な心」)。
第3場 ウェストミンスターの大広間
エリザベッタは、ロベルトの死刑判決書に署名をしたものの、いまなお深く苦悩している(〈女王の涙〉「裏切り者よ、彼女のそばで生きればよいのです」)。そこにサラが駆け込んで来て指輪を示し、自分もロベルトを愛していると告白する。そのとき、大砲が轟き、ノッティンガム公爵が勝ち誇ったようにロベルトの処刑執行を告げる。エリザベッタは衝撃にたちすくむ。そして、ロベルトの死の責任をノッティンガム公爵とサラに強く訴え、最高の権力を持ちながらも、愛する人を護ることができなかった自分の無力さと孤高、絶望の錯乱のなかで王座の返上を宣言する(「あの流された血は天に昇り」)。