英国ロイヤル・オペラ 2015年日本公演「ドン・ジョヴァンニ」解説

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1787年プラハでの初演以来、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」は世界中で人気を誇ってきました。女とみれば見境なく口説き落とす稀代の色事師ドン・ジョヴァンニが、最後には“天罰”を受けるという勧善懲悪劇のこのオペラに、生き生きとした命を与えたのはモーツァルトの音楽にほかなりません。
カスパー・ホルテンは独創的な解釈で作品の本質に迫る演出家と認められていますが、彼はまた、音楽の求心力を最大限に活かすことにも長けています。モーツァルトが書いた音楽の、どんな細部も見逃すことがないように、この「ドン・ジョヴァンニ」でホルテンがとった手法はプロジェクション・マッピング。全編にわたり、登場人物の関係や微妙な心情を文字通り“見せる”。些細な心の揺れ、甘い誘惑、切迫する叫び、張り詰めた恐怖…。これまでのオペラ上演にはない“見るドラマ”がスピーディな疾走感とともに迫ってきます。
もちろん、このオペラの魅力は充実した演奏があってこそ活きてきます。ザルツブルクをはじめとした著名な歌劇場でドン・ジョヴァンニを“はまり役”と認められているイルデブランド・ダルカンジェロ。レポレロ役ではすでに高い評価を得ているベルガモ生まれのバリトン、アレックス・エスポージト。ドンナ・エルヴィーラには圧倒的な人気と実力で現代最高のメゾ・ソプラノの呼び声高いジョイス・ディドナート。ドン・オッターヴィオにはメキシコ生まれの美声テノール、ローランド・ヴィラゾンが登場するほか、豪華にして充実の顔ぶれが揃いました。彼らを取りまとめるアントニオ・パッパーノの、細部にまでこだわり抜く職人的な指揮は、モーツァルトの魅力を一部の隙もなく聴かせてくれるにちがいありません。