ROYAL OPERA HOUSE

英国ロイヤル・オペラ 2015年日本公演について

時代とともに進化する、伝統と栄光に輝く“オペラ界の女王”

 世界五大歌劇場の一角を担い、絶大な人気を博している英国ロイヤル・オペラの、5年ぶりの引っ越し公演が実現します。

 英国ロイヤル・オペラの歴史は、その通称にもなっているロンドンのコヴェント・ガーデンに劇場が建てられた1732年に始まります。18世紀にヘンデルが活躍し、その後も数々のオペラの英国初演を果たしながら実績を重ねてきたこの歌劇場の特徴と魅力は、幅広く網羅したレパートリーをつねに世界第一級の水準で上演していること。そして演劇やミュージカルが繁栄を極める近接のウエスト・エンドとも相まって、一大劇場街として世界中から観客を集めていることです。

 ことに今世紀に入ってからの英国ロイヤル・オペラは、最先端の劇場経営を導入し、音楽監督に新時代のオペラ芸術の旗手アントニオ・パッパーノを迎えるという両輪の革新によって大躍進を遂げました。自国の伝統ある劇場文化の中で技術と人材を共有しながら、新機軸のアイデアを次々と採り入れ、最高水準の歌手をそろえて制作されるプロダクションはつねに世界の話題を集めています。

 今回上演されるのは、ミュージカルや映画の演出を手掛けるロイドの緻密な演出を、英国が誇る知的演技派キーンリサイドと、強靭な声、ドラマティックな演技で圧倒するモナスティルスカが主演して話題となったヴェルディの「マクベス」。いっぽう流行のプロジェクション・マッピングを導入してモーツァルトの世界を目にも鮮やかに構築したホルテンの演出に、ダルカンジェロ、ディドナート、エスポージト、ヴィラゾンらの人気精鋭歌手を集めた「ドン・ジョヴァンニ」の2作。なによりもこれらを職人的な手際と努力で一級の音楽に仕上げていくマエストロ・パッパーノの手腕は、オペラ・ファンの期待を裏切ることがありません。オペラ界の女王は今度も日本の観客の心を虜にするに違いありません!

アレックス・ベアード、カスポー・ホルテン
劇場育ちの職人気質。大巨匠への道を着々と歩むパッパーノ

 アントニオ・パッパーノは近年、音楽界でも少数派になりつつある、劇場育ちの指揮者です。バイロイト音楽祭でバレンボイムのアシスタントとして研鑽を積み、その間の1987年にオペラ指揮者としてデビュー。90年に初めて英国ロイヤル・オペラで指揮を振り、92年には弱冠32歳で王立モネ劇場の音楽監督に就任して注目を集めました。まもなくウィーン国立歌劇場、メトロポリタン・オペラ、バイロイト音楽祭などトップクラスの歌劇場で次々とデビューを飾ってオペラ指揮者としての実力を鮮烈に印象づけ、こうした実績をもとに2002年、英国ロイヤル・オペラの音楽監督に迎えられました。音楽の細部にまで目を光らせ、抜かりなく準備を行うパッパーノの仕事ぶりは、オペラに精通し、劇場とは何かを知る指揮者として歌手や演奏家たちから並みならぬ信頼を得ています。20世紀の偉大なマエストロたちが次々世を去っていく一方で、パッパーノはオペラ界の大巨匠への道を着実に歩み、英国ロイヤル・オペラにますますの盛栄をもたらしているのです。

アントニオ・パッパーノ