ROYAL OPERA HOUSE

英国ロイヤル・オペラ 2015年日本公演「マクベス」出演者・スタッフ

 アントニオ・パッパーノは2002年より英国ロイヤル・オペラの音楽監督を務めている。これまでに、モーツァルト、ヴェルディ、ワーグナー、プッチーニ、R.シュトラウス、ラヴェル、ベルク、ショスタコーヴィチ、ブリテンなどを含む幅広いレパートリーを指揮。また、2008年にはバートウィッスル作曲『ミノタウロス』、2011年にはタネジ作曲『アンナ・ニコル』の世界初演を手掛けた。英国ロイヤル・バレエの指揮も行っている。
 パッパーノは、イタリア人の両親のもとロンドンに生まれた。幼い頃から父親が教える声楽の生徒のためにピアノを弾いていた。パッパーノが10代のときに一家はアメリカに移る。パッパーノはニューヨーク・シティ・オペラでのコレペティトールを経て、バルセロナのリセウ劇場、フランクフルト・オペラ、シカゴ・リリック・オペラ、そしてバイロイト音楽祭ではダニエル・バレンボイムのアシスタントを務め、研鑽を重ねた。
 パッパーノが指揮者としてデビューしたのは1987年オスロで。英国ロイヤル・オペラには、その3年後にデビューした。32歳のとき、ブリュッセルの王立モネ劇場音楽監督に就任した。
 現在パッパーノは、ローマ・サンタ・チェチーリア国立管弦楽団の音楽監督も務めており、オーケストラ演奏においても幅広いレパートリーにより欧米で活躍している。数多くの録音は、指揮者としてのほか、ピアニストとしてのものもある。2012年にはイタリア共和国功労勲章を受章。



 フィリダ・ロイドは、イギリスのブリストルに生まれた。これまでに手がけた作品には、ロイヤル・コート劇場での「6次の隔たり」、ドンマー・ウエアハウスでの「三文オペラ」と「ボストン結婚」、ドンマー・ウエアハウスとウェスト・エンドおよびブロードウェイでの「メアリー・スチュアート」(この作品により、2009年第63回トニー賞演出賞を受章)、ナショナル・シアターでの「ペリクレス」、「マルフィ公爵夫人」「執事が見たもの」「The Way of The World」「ミス・ブロディの青春」、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーでのトーマス・シャドウェルの「ヴアーチュオーソ」、アレクサンドル・オストロフスキーの「才能と贔屓客」などがある。また、ミュージカル「マンマ・ミーア!」は後に映画化も行われ、世界的な大ヒットとなった。映画ではロイド監督による「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」も話題を呼んだ。
 手掛けたオペラ演出には、オペラ・ノースでの『ボエーム』、ブリテン作曲の『アルバート・ヘリング』と『グロリアーナ』、『カルメン』、『ピーター・グライムス』、バスティーユ・オペラと英国ロイヤル・オペラでの『マクベス』、イングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)とウェールズ・ナショナル・オペラ(WNO)での『カルメル派修道所の対話』、ロイヤル・デンマーク・オペラとENOでのポウル・ルーザス作曲『侍女の物語』、ENOでの《ニーベルングの指環》などがある。なお、『ピーター・グライムス』はロイヤル・フィルハーモニー・ ソサエティー・ミュージック・アワード(2006年)とサウス・バンク・ショー・アワード(2007年)を受賞。
2010年には大英帝国勲章を受章している。





 イギリスのバリトン、サイモン・キーンリサイドは、1990年に『トゥーランドット』のピンで英国ロイヤル・オペラにデビューした。1994年以来は、同劇場には毎シーズン出演して、『ドン・ジョヴァンニ』のタイトルロール、『魔笛』のパパゲーノ、『マクベス』のタイトルロール、『椿姫』のジョルジョ・ジェルモン、『ドン・カルロ』のポーザ、『ファウスト』のヴァレンティン、『ヴォツェック』と『リゴレット』のタイトルロールを歌っている。また、英国ロイヤル・オペラの委嘱作、トーマス・アデス作曲『テンペスト』ではプロスペロー、ロリン・マゼール作曲『1984年』の初演ではウィンストン・スミスを演じている。
 キーンリサイドの歌手としてのキャリアはケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジ聖歌隊から始まった。動物学で学位を得た後、王立ノーザン音楽大学で声楽を学んだ。やがて、キーンリサイドは世界の主要なオペラハウスでひっぱりだこの活躍をみせることとなる。レパートリーには、『タウリスのイフィゲニア』のオレステ、『セビリャの理髪師』のフィガロ、『リゴレット』と『ハムレット』、『ビリー・バッド』のタイトルロール、『ファルスタッフ』のフォード、『ペレアスとメリザンド』のペレアスなどがある。ドイツ・リートも大切なレパートリーとしており、ロンドンのウィグモア・ホールをはじめとした世界各地でのリサイタルを開催している。
 妻のゼナイダ・ヤノウスキーは英国ロイヤル・バレエのプリンシパル。西ウェールズの農場に住んでいる。オペラ以外の関心は、植林、詩を読むこと、そしてフラメンコを含む広範囲なジャンルの音楽を聴くこと。
 2003年には、CBE大英帝国勲章司令官(Commander of the Order of the British Empire)を受章。



 ウクライナのソプラノ、リュドミラ・モナスティルスカは、2011年に『アイーダ』のタイトルロールで英国ロイヤル・オペラにデビューした。以後、同劇場では『マクベス』のマクベス夫人、『ナブッコ』のアビガイッレを歌っている。2014/15年シーズンには、『仮面舞踏会』のアメーリアで出演。
 モナスティルスカはキエフで生まれ、生地のチャイコフスキー音楽院で学んだ。1996年にウクライナ国立歌劇場で『エフゲニー・オネーギン』のタチヤーナでデビュー。1998年には同劇場のプリンシパル・ソプラノとなり、『アイーダ』と『ラ・ジョコンダ』のタイトルロール、『仮面舞踏会』のアメーリア、『スペードの女王』のリーザ、『カヴァレリア・ルスティカーナ』のサントゥッツァを歌った。
 国際的な活動は、2010年ベルリン・ドイツ・オペラおよびトッレ・デル・ラーゴのプッチーニ・フェスティバルでの『トスカ』のタイトルロールから始まった。2012年にはアイーダを歌ってミラノ・スカラ座やメトロポリタン歌劇場にデビュー。さらにこれまでに、ベルリン・ドイツ・オペラでの『アッティラ』のオダベッラと『マクベス』のマクベス夫人、ミラノ・スカラ座での『ナブッコ』のアビガイッレ、フランクフルトでの『トスカ』のタイトルロール、ヒューストン・グランド・オペラとベルリン国立歌劇場での『アイーダ』のタイトルロール、バレンシアでの『運命の力』のレオノーラなど、主要なオペラハウスで活躍している。



 アメリカのバス、ライモンド・アチェトは、2005年に『セビリャの理髪師』のドン・バジーリオで英国ロイヤル・オペラにデビューした。以来、同劇場では『トロヴァトーレ』のフェルランド、『リゴレット』のスパラフチレ、『真珠採り』のヌーラバッド、『マクベス』のバンクォー、『トゥーランドット』のティムールを歌っている。
 アチェートはオハイオ州ブランズウィックで育った。歌うことへの魅力を最初に感じたのは学校のロック・バンドだった。オハイオにあるボーリング・グリーン州立大学卒業後、メトロポリタン歌劇場のリンデマン養成プログラムに入り、ルチアーノ・パヴァロッティがカヴァラドッシを歌う『トスカ』で看守を歌ってオペラ・デビューを果たした。以後、メトロポリタン歌劇場をはじめ、サンフランシスコ、ダラス、シカゴ、サンタ・フェ、ヒューストン、サン・ディエゴ、ニューオーリンズなどアメリカの主要歌劇場に度々出演。また、ヨーロッパでは、アレーナ・ディ・ヴェローナ、ベルリン・ドイツ・オペラなどに出演を重ねている。
 レパートリーには、『ドン・ジョヴァンニ』の騎士長、『セビリャの理髪師』のドン・バジーリオ、『アイーダ』のランフィス、『カルメン』のエスカミーリョ、『マノン』のデ・グリュー伯爵、『ラインの黄金』と『ジークフリート』のファーフナー、『トスカ』のスカルピアなどがある。



 1983年ルーマニア生まれ。2006年ブカレスト国立オペラで歌手としてのキャリアを開始。国際的なデビューとなったのは2009年のハンブルク州立歌劇場での『マクベス』のマクダフ役だった。同年にはウィーン国立歌劇場に『ナブッコ』のイズマエーレを歌ってデビューした。以後、英国ロイヤル・オペラとライン・ドイツ・オペラでの『ボエーム』のロドルフォ、ストラスブールのライン国立劇場での『友人フリッツ』のフリッツ、サンチャゴでのグノー作曲『ロメオとジュリエット』のロメオ、ベルリン・ドイツ・オペラでの『ファウスト』のタイトルロール、トゥールーズ、ハンブルク、ブタペスト、パリ・オペラ座での『蝶々夫人』のピンカートン、マドリッドのテアトロ・レアルでの『椿姫』のアルフレードなどを歌い、成功をおさめている。
 『マクベス』のバグダフ役は、彼の実力を示す最初のレパートリーとなったものであり、当たり役の一つといえるもの。第4幕で、マクベスによって妻子を失ったマクダフが深い哀しみを歌う「ああ、父の手は」は、テノールの魅力がドラマチックな効果を盛り上げる場面。イリンカイの本領発揮が期待される。