デルフィーヌ・ムッサン インタビュー

デルフィーヌ・ムッサン インタビュー

デルフィーヌ・ムッサン(エトワール)


1980年 パリ・オペラ座バレエ学校入学。
1984年 15歳でパリ・オペラ座バレエ団入団。
1986年 コリフェに昇格。
1988年 スジェに昇格。
1994年 プルミエール・ダンスーズに昇格。
2005年 5月3日「シンデレラ」(ヌレエフ振付)の終演後、エトワールに任命される。


「私、少し日本人なの」。来日への期待を尋ねたら、デルフィーヌから不思議な答がかえってきた。10年位前から日本に弟が住んでいて、義妹が日本人なのだから、というのがその説明だ。フレデリック・ワイズマン監督の映画「オペラ座バレエのすべて」の中で、リハーサル・スタジオで一人きりで「メデ」の稽古をするシーンや、メデが乗り移ったかのように鬼気を感じさせる舞台の彼女が印象的で、あれは誰?と思った人も多いだろう。オペラ座が隠し持つ素晴らしい宝を見たという声も耳にした。
 3月の来日公演では役がらをがらりとかえ、ハリウッドの女優となり、人気俳優と恋におちるシンデレラを踊る。この作品でエトワールに任命された彼女。これに良い思い出を持っているのは当然なのだが、それだけでなく、特別な思いが重なるのだという。なぜ?と聞いて、彼女がこともなげに語った答えに驚いた。「私の人生において重要な時期のことだったから。二人目の子供を妊娠している時だったし、それに腕を骨折していたの」と。

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「シンデレラ」(photo:Laurent Philippe)

 骨折は舞台出演の数日前にわかったそうで、彼女の衣裳だけギブスを隠すのに急ぎで袖をつけて、と。「普通は踊らないでしょうね、こんなとき。でも、痛みがなかった上に、妊娠でじきに踊れなくなるってわかっていたので、リハーサルもしっかりしているのだから、舞台にたちたかったの。任命はまったく思ってもいなかっただけに感動したし、自分の仕事が認められたということで、すごく幸せな気持ちになれたわ。シンデレラ役はもちろん大好き。このヌレエフ版は、ハリウッドを舞台にしたアニメ漫画みたいなバレエ。森英恵がデザインし、ビーズの1つずつが手刺繍されたドレスを着て、1900年風のヘアスタイルで・・・すごくフェミニンな役なのよ」
 もっとも義姉たちに虐められる自宅では、グレーの地味なワンピースで掃除に励む。ハリウッドの近くに住む不幸せな娘が夢見るとしたら、それは映画の世界。それで、チャーリー・チャップリンを真似て、父親の大きな靴を履いてタップを踊るシーンがある。
「だからタップダンスもしっかりと稽古したのよ。舞台ではトゥシューズの上から大きな靴をはいて踊らなければならないので、技術的になかなか難しいの」
 複雑な振り付けで難易度の高いヌレエフ作品をハンデを抱えて踊り、エトワールに任命されたデルフィーヌ。その才能とバレエへの情熱はお墨付きというわけだ。任命された時のパートナーはカール・パケットだった。東京公演では彼はマリー・アニエス・ジロをパートナーに踊ることになっている。では、デルフィーヌのプリンスは?「マチュー・ガニオと組むのよ。実のところ、これには二人でびっくりしたの。でも、それに先立って「ジュエルズ」のダイヤモンドをオペラ座で二人で踊ったところ。彼、素晴らしいパートナーよ。私はリハーサル・スタジオでの稽古から息が合わない相手とじゃないと、だめ。目も合わさないパートナーがときにいるのだけど、すぐに目で語りかけてくる彼とはすぐに上手くいったわ。彼の身長も私にはぴったりなの」
 華奢な身体にパワーと情熱を秘めた麗しいエトワール。マチュー・ガニオと彼女が繰り広げるハリウッドの夢の世界まで、あと3か月!

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「ジュエルズ」"ダイヤモンド" 
マチュー・ガニオ、デルフィーヌ・ムッサン(photo:MichelLidvac)

大村真理子(フィガロ・ジャポン・パリ支局長)


◆デルフィーヌ・ムッサン出演予定日

「シンデレラ」
2010年3月13日(土)6:30p.m. (シンデレラ)
2010年3月15日(月)6:30p.m. (シンデレラ)

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