ステファン・ファヴォラン インタビュー

ステファン・ファヴォラン インタビュー

StephanePhavorin01.jpgステファン・ファヴォラン(プルミエ・ダンスール)


1983年 パリ・オペラ座バレエ学校に入学
1990年 19歳でパリ・オペラ座バレエ団に入団
1991年 コリフェに昇格
1994年 スジェに昇格
2005年 プルミエ・ダンスールに昇格


 ステファン・ファヴォラン。「シンデレラ」の継母役を踊る彼を見たら、絶対に忘れられなくなるダンサーだ。彼本人も、「公演後、ファンが僕の服が破けるくらい僕を引っ張って、熱狂的にサインを求めてくるはずですよ」と冗談を言って笑う。もし「白鳥の湖」のロットバルト役や「パキータ」のイ二ゴ役で彼を知った人は、その女装での弾けぶりに「これがあのステファン?」と驚くに違いない。
 30年代のハリウッドに舞台を置き換えたヌレエフ版「シンデレラ」は、主役の銀幕のスターとシンデレラの2人を囲む脇の人々のパーソナリティが、ひどく誇張されて描かれている。夢もあるが、笑いもたっぷり、というバレエ作品なのだ。意地悪な継母は男性ダンサーが踊るように創作されていて、3月のツアーではジョゼ・マルティネスとステファン・ファヴォランが配されている。
「シンデレラのアル中のパパの再婚相手。おかね、贈り物、贅沢、そして何よりも権力が大好きという女性で、女優になるという自分の叶わぬ夢を娘2人に託しているんです」とステファン。継母役が男性ダンサーによって踊られることで、シンデレラとのコントラストができ、彼女と連れ子2人によるシンデレラ苛めが陰惨に見えず、滑稽に転じるのだ。顔の表情もアクションも、優雅さを失うことなくオーバーにステファンは演じる。「この役、僕は大いに楽しんでますよ。これは舞台なんですから、観客に憂さを忘れて良い時間を過ごして欲しいんです」。オペラ座バレエ学校に通学しながら、15歳になるまでピアノのレッスンをつづけていた彼。優れた音楽性は当然ダンスにも大いに役だっていて、「シンデレラ」はプロコフィエフの音楽をヌレエフが上手く使った振付だと感心する。音楽に合わせ、自然とぎょっとした顔をみせたり、体の動きを誇張するようになっているので踊りやすいそうだ。

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「シンデレラ」継母(photo:Laurent Philippe/OOpéra national de Paris)

「役作りあたっては、街中でお金持ちの年寄り女性たちの振る舞いを観察しました。イタリア映画「老女の金(日本未公開)」も参考になりましたね。いかさまポーカーで調子よく勝っていたのに、ある時点から負け始めて・・・という映画で、メークをしっかりした老女の表情がすごく興味深い作品でしたね 」。また彼は以前に踊った他のダンサーたちの継母ぶりも、すべてチェックをしたそうだ。良い部分はいただき、ここはちょっと?と思う部分は、そうしないように・・・という具合に。「もちろんジョゼのも見ましたよ。彼って日頃は慎み深い人だけど、この役では思い切り感情を表してるのが面白いですね。役作りに熱心な彼から、あの部分、どうやったの?と聞かれ、教えてあげた部分もあるんですよ」。
 30年代調のヘアスタイル、毛皮の襟巻を首に、トゥシューズ・・・意地悪な目つきで、舞台をかけまわるマダム。見事な化けっぷりだ。「僕は服もおしゃれも大好き。だから女装も楽しいんです。衣裳は役に入り込むのに、本当に役立ちますね」。オペラ座で観客を沸かせる、もう1つの彼の当たり役は「リーズの結婚」のコミカルなママ役。こちらも女装だが、毛皮の代わりに格子のワンピースにエプロン、トウシューズではなくサボ、と田舎の寡婦らしく素朴な装いである。次回のオペラ座ツアーに「リーズの結婚」を期待しつつ、まずはポワントで6~7回転も軽いという彼の「シンデレラ」の継母ぶりを堪能しよう。

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「リーズの結婚」シモーヌ(photo:Michel Lidvac)

大村真理子(フィガロ・ジャポン・パリ支局長)

◆ステファン・ファヴォラン出演予定日

「シンデレラ」
2010年3月12日(金)6:30p.m. (継母)
2010年3月13日(土)6:30p.m. (継母)
2010年3月15日(月)6:30p.m. (継母)

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