ジョシュア・オファルト インタビュー

ジョシュア・オファルト インタビュー

ジョシュア・オファルト(プルミエ・ダンスール)

1998年 パリ・オペラ座バレエ学校入学
2002年 パリ・オペラ座バレエ団入団
2003年 コリフェに昇格
2004年 ヴァルナ国際バレエコンクールで銀賞受賞。カルポー賞受賞。スジェに昇格。
2009年 プルミエ・ダンスールに昇格


 昨年末の昇進コンクールでプルミエ・ダンスールに上がったジョジュア・オファルト。
「これが最後のコンクール」と彼が感慨深げに口にしたとき、オペラ座のピラミッドの階段を上がるためのコンクールがいかにプレッシャーだったかが感じられた。

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2009年12月のコンクール
(photo:SEBASTIEN MATHE/ OPERA NATIONAL DE PARIS)

 今回、ソリストとして来日することに今から胸をときめかせている。彼が初来日したのは8年前、入団した年で代役だった。「ラ・バヤデール」の舞台に立つことなく毎晩舞台裏で過ごした。来月、「シンデレラ」では四季の1つに配役され、「ジゼル」ではヒラリオン役を踊る。これはオペラ座でもまだ踊ったことがなく、東京で初披露となる。
「ヒラリオンというのは頭がすごく固くって、先のことが読めない単純な人間だ。自分の行動の結果を考えることもなく、本能的に動いてしまう。ジゼルへの情熱ゆえともいえるけど、粗野なタイプ。だからこそ、こうした性格の役を踊るのは興味深いんです。これまで僕はプリンス役とかエレガントな役が多かったので、踊り方から変えてゆく必要がありますね。姿勢も歩き方も違えて、重心の位置も変えてプリンスとは別の雰囲気で踊るようにしなければ・・・」
 と、稽古のスタートを前に彼は役の解釈を始めている。
 オペラ座では「リーズの結婚」「くるみ割り人形」ですでに主役に配され、どちらも高い評価を得ているジョジュア。感情表現という点でいえば後者を選ぶが、ダンスという点では激しくダイナミックな踊りをみせる「リーズの結婚」が好みという。舞台上でエネルギーの消費が大きいことが、心地よいのだ。8歳のときにテニスや体操の代わりに、という感じでバレエを始めた彼らしい。
「でも、バーレッスンとかほとんど体を動かさないので、最初あまりバレエが気に入ったとは・・・。でもバレエに向いている、才能がある、と誉められて、ずっと続けました。子供は誉められるとヤル気がでますよね」
 14歳でマルセイユからパリのオペラ座バレエ学校に編入したときは、バレエを職業として選ぶ決心をしていたそうだ。
 さて、テクニックをみせるバレエも好みだが、そればかりでは物足りないというジョジュア。それゆえに、いつか踊りたいと夢見るのは、演技を要求されるヌレエフの「白鳥の湖」のプリンス役である。
「ロットバルト役も面白いとは思うけど・・・。この作品のプリンスは心に苦しみを抱えていて、それだけに心理的な深さをみせられる役ですからね。ジゼルのアルブレヒトについても、それはいえますね。この役も、もちろんいつか踊りたいと思ってます。もしそうなったら、二コラ(ル・リッシュ)のビデオを何度も繰り返して見ることになるでしょうね。僕のスターは二コラなんです。彼と僕とはスタイルが違いますが、彼のダンスがとにかく好き。彼が発するものが好きなんです。彼からインスパイアーされることは、とてもたくさんあります」
 年齢の割に落ち着いていて、物静かに見えるジョジュア。エネルギーや興奮といったことは、舞台のためにとっておき、自由時間は読書にいそしみ、映画を見て・・・とアーチストの面を豊かにするようにしているそうだ。現在、オペラ座で公演中の「椿姫」では、主人公アルマン・デュバルの友人ガストン役を踊っている。この役でも、またジョゼ・マルティネス振付の「天井桟敷の人々」のフレデリック・ルメートル役でも、色男を見事に演じているジョジュア。これは日頃彼が培っているものの成果が発揮されているといえるだろう。そんな彼のヒラリオン、ヤン・ブリダールとはまた異なる味わいで物語に深みを与えるに違いない。
 東京ではファッションブティックあり、裏道に小さな庭つきの民家あり、という表参道周辺が彼のお気に入りの場所だという。滞在中、この辺りを散歩できる機会があることを彼のために祈ろう。

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「くるみ割り人形」王子(ジョシュア・オファルト)、クララ(リュドミラ・パリエロ)
(photo:JULIEN BENHAMOU/ OPERA NATIONAL DE PARIS)

大村真理子(フィガロ・ジャポン・パリ支局長)



◆ジョシュア・オファルト出演予定日

「ジゼル」
2010年3月18日(木)7:00p.m. (ヒラリオン)
2010年3月20日(土)1:30p.m. (ヒラリオン)
2010年3月21日(日・祝)1:30p.m. (ヒラリオン)

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