[ロイヤル・バレエ]エドワード・ワトソン インタビュー

[ロイヤル・バレエ]エドワード・ワトソン インタビュー


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エドワード・ワトソン Edward Watson
英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル



男性ダンサーとしては並はずれてしなやかな肢体と、繊細でいながら時に大胆にエキセントリックな精神の領域に踏み込む、密度の濃い表現力。エドワード・ワトソンの舞台を見ていると、いつも「究極のマクミラン・ダンサー」という言葉が思い浮かぶ。


――前回(2008年)の来日公演では大阪での出演だけで、東京のファンはたいへん悔しい思いをしました。今回はマクミランの『ロミオとジュリエット』『うたかたの恋』の2作品に主演予定ですね。

10-02.18EdwardWatson(photo_JohanPersson)04.jpgやっと本格的な東京デビューですね(笑)。僕自身も待ちわびていました。ロミオは、まだソリストだった2004年に初めて全幕作品に主演した、思い出深い役です。

この役で心がけているのは、できるだけに人間的に演じるということ。彼はジュリエットに出会い、自分では全くコントロールできない恋というものを知ります。若い二人には家同士の確執をかえりみる分別もなく、突っ走るしかなかったんです。古典バレエの理想の王子役とは、全く違ったキャラクターなのです。

そして、事前に細部まで作りこんで舞台に臨むより、目の前の相手に反応するのが好きですね。有名な物語だから何が起こるかは誰でも知っていますが、その場で恋人たちがどう感じ、どう演じるかは毎回変わります。それがこのバレエの面白いところだと思います。


――もう一つの『うたかたの恋』では、オーストリア=ハンガリー帝国皇太子のルドルフを踊られる予定ですね。

これは、ルドルフが若い愛人マリー・ヴェッツェラとマイヤリングの狩猟地で心中するまでの、最後の数年間を描いたバレエです。主人公のルドルフの周りには、彼の複雑な性格を照らし出すように、多くの女性が登場します。彼女たちと全部で10の踊りがあるなど、まず技術やスタミナの面で過酷な役。まるでオリンピックに出ているような作品です(笑)。

10-02.18EdwardWatson(photo_JohanPersson)03.jpgルドルフは新妻に暴力をふるい、酒や麻薬におぼれ、他人を道連れに自殺してしまう。理解しがたい性格ですが、「どうして彼はそんな行動をとったんだろう?」と、内面的な裏付けを探ってゆきます。時代背景や政情、王室の一員であるというプレッシャー。史料にも当たりながら、そうしたことの影響を一つひとつ解き明かしていくのです。

舞台で踊られている場面だけではない、トータルな彼の実像に迫り、内面の裏付けを持って踊る時、モンスターのようなルドルフは初めて観客と心を通わせ、共感を得ることができるんです。他ではなかなか得られない、エモーショナルな経験です。


――マクミランのバレエといえば、何をおいてもパ・ド・ドゥが魅力ですが、『うたかたの恋』にもマリーとルドルフの素晴らしいパ・ド・ドゥがありますね。

リストの音楽もとても美しく、マクミランの最高傑作の一つだと思います。そしてそれ以上に特別なのは、この場面の雰囲気。死に向けての緊張感がキリキリと長い時間かけて高まっていくので、最後に銃声が響くといつも安堵をおぼえるほどなんです。

長野由紀(舞踊評論家)


※写真はクリックすると大きなサイズでご覧いただけます。


●エドワード・ワトソン 出演予定日●

「うたかたの恋」 6月24日(木)6:30p.m. ルドルフ皇太子

「ロミオとジュリエット」 6月28日(月)6:30p.m. ロミオ


photo:Nobuhiko Hikiji(ポートレート)、Dee Conway(「ロミオとジュリエット」)、Johan Persson(「うたかたの恋」)

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