インタビュー 一覧

[ロイヤル・バレエ]マリアネラ・ヌニェス インタビュー

マリアネラ・ヌニェス Marianela Nuñez
(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル・ダンサー)


10-05.29Marianela01BillCooper.jpg振付家フレデリック・アシュトンはかつて南アフリカ出まれのダンサー、ナディア・ネリーナのために『リーズの結婚』を作りあげた。それからちょうど半世紀。アルゼンチン出身の舞姫マリアネラ・ヌニェスは、まるでそれが自分のために仕立てられたダンスであるかのようにリーズ役をものにしてみせる。また二年前に初挑戦した『ロミオとジュリエット』でも、英国ガーディアン紙から「舞台にいるダンサーのために物語が書き下ろされたように思える」という賛辞を獲得。どうやら現在のヌニェスは、ダンサーとしての最盛期を迎えつつあるようだ。19歳にしてプリンシパルの座に就いてから、早くも8年。コスモスのように朗らかな彼女ならではの少女っぽさに、成熟した女性らしさをまといつつあるヌニェスと、3月某日、『リーズの結婚』の本番翌日に言葉を交わした。


---------------- 昨晩はすばらしい舞台をありがとうございました。見せ場であるファニー・エルフスラーのパ・ド・ドゥ(リボンのパ・ド・ドゥ)をはじめ、すべてが 軽やかで美しく、見ているだけでこちらまで笑顔になってしまいました。

ありがとう、そう言ってもらえて光栄です。私も昨晩の公演にはアドレナリン全開に興奮してしまって、終演後も夜中の4時まで眠れませんでした(笑)。初めてリーズを踊ったのはもう5年前になりますが、そのときからずっとこの演目には「居心地の良さ」を感じています。もちろん最初はアシュトンならではの素早いフットワークを会得するために、それなりに稽古時間を割く必要はありました。またアシュトンの控えめでアカデミックなスタイル、無理のなりアラベスクのラインや、柔らかな上半身のラインも身につけねばなりませんでした。でも、それらをいったんものにしてからは本当に舞台上でリラックスして踊ることができた。あの農家の家の扉からとびだした瞬間から、私はリーズになりきることができるのです。


---------------- 日本公演では私生活でもパートナーであるソアレスと『リーズ〜』を踊られますね。ソアレスはどちらかというと、シリアスな演技に定評がありますが。

確かに、すこしシリアスな役が多いことは事実です。でも彼は本物のアーティストですから舞台上でどんな人間にもなりきることができます。それにそもそも、彼は普段はとってもおかしな人なんですよ。どれだけ彼にユーモアのセンスがあるかわかったら、きっと日本のお客さんは彼に惚れなおすと思います。


----------------以前のあなたは「大きな笑顔とピンクのチュチュ」がトレードマークでしたが、近年では『ロミオとジュリエット』や『ジゼル』、また『うたかたの恋』のラリッシュ伯爵夫人など、より深い演劇性を要する役柄に次々に挑まれていますね。

10-05.29Marianela02DeeConway.jpgそう、以前はピンクのチュチュの『眠れる森の美女』や『くるみ割り人形』ばかり踊っていましたからね(笑)。でもそれらの役も、私はいまだに踊ることが大好きなんですよ。2年前にティアゴ(ソアレス)と初めて『ロミオ〜』と踊ったときは、まさに天にも昇る気持ちでした。以前にも取材でお話ししたように、私はこの役がずっと踊りたくてしょうがなかったので、ようやくモニカ(メイソン)から許可が出て、ジュリエットとして舞台に立つことができたときには、あまりにも嬉しくて......、一幕からずっと涙があふれっぱなしでした。観客にはわからなかったと思いますけど、平野亮一君が袖からずっと写真を撮ってくれていて、それにはばっちり涙が映っているんです。日本でもティアゴのロミオと踊ることになりますが、初演時にはあまりリハーサルの時間がなかったので、もっと細部まできちんと確認して、天才マクミランが作りあげたドラマを生き抜きたいと思います。


----------------どんどん進化するあなたの踊りに日本の観客も期待していると思います。

私自身いまダンサーとして、日々成長できているように思います。ひとつの役柄で培った知恵のうえに、次の役の知恵が重なっていく。自分のなかに知が蓄積されているのを、身をもって実感しているところです。

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取材・文:岩城京子(演劇・舞踊ライター)

photo:Bill Cooper(「リーズの結婚」)、Dee Conway(「ロミオとジュリエット」)



[ロイヤル・バレエ]スティーヴン・マックレー インタビュー


スティーヴン・マックレー Steven McRae
(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル・ダンサー)


オーストラリアに生まれてモータースポーツを愛する両親に育てられたスティーブン・マックレーは、自分の生い立ちを「バレエからもっとも縁遠い環境」と分析する。だが環境はどうであれ生まれながらにダンスの才と悠揚たる品位に恵まれた少年は、またたくまに世界へと羽ばたき、昨年末にはまだ二十代前半の若さで英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルの座に就任。「舞台に立っているときが、いちばん居心地がいいんだ」とおっとり嬉しそうに語る彼の心のふるさとは、オーストラリアでもイギリスでもなく、今はバレエに在るのかもしれない。


----------------昨年度プリンシパルに昇進されてから、舞台に対してのスタンスは何か変わりましたか。

ことさら大きな変化はないと思います。プリンシパルでもソリストでも群舞でも、自分のベストを尽くすだけ。僕はいつでもそう思って踊ってきましたから。ただもちろん「プリンシパルになる」というのは、自分のなかにつねにあった大きな目標だったので、それが思っている以上に早く成し遂げられたことは嬉しいです。努力が報われたように思います。ただもちろん、ここがゴールではありません。ここから本当の挑戦がはじまる。これからは毎日が自分との挑戦。他者ではなく自分との競争です。


----------------ロイヤル・バレエ団に入団される前年には、ローザンヌ国際バレエコンクールでタップダンスのソロを踊られ周囲を驚かせていましたね。あなたにとっては、バレエもタップもジャズも、ダンスはダンスで特に変わりはないのでしょうか。

僕は子供のころから、ただ単純に踊りたかったんです。なぜなら僕はバレエのなんたるかをまったく知らなかったから。オーストラリアではバレエをまったく見なかったから。とにかく自由に音楽にあわせて踊りたかったんです。だから今でも僕にとっては、音楽はとても重要な要素。音楽とたわむれながら踊ることが好きなんです。ただもちろん、ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとしては、ただ気持ちよく踊ればいいというわけじゃない。そこにしっかりとしたテクニックも乗せなければならない。だから音楽と技術をうまく融合させることが、優秀なダンサーには必要なんです。


----------------あなたの軽快な音楽性が買われてか、ロイヤルに入団されてからは『シンフォニック・バリエーション』『真夏の夜の夢』『リーズの結婚』と、多くのアシュトン作品を踊られていますね。『リーズ〜』は日本公演でも踊られます。

言われてみれば確かに、アシュトン作品は多いですね。でも自分ではさほど意識したことはありません。もちろん『リーズ〜』のようなコミック・バレエを踊るときには、全体のリズミカルな軽快さや、ウィットのタイミングをはずさないよう、何度も音楽を聞き返しますけど......、それは他の多くの演目でもやることですしね。それにたとえば日本で踊るもうひとつの演目である『ロミオとジュリエット』の、バルコニーの場面のパ・ド・ドゥなんて、アシュトン以上にスピーディーですからね。とにかく僕はいま、どんな演目であっても舞台上で踊ることが楽しくてしょうがないんです。日本公演ではミヤコ(吉田都)と『ロミオとジュリエット』を踊らせてもらうから、それにも本当に興奮しています。彼女は現代バレエ界を象徴する存在ですからね。ものすごく光栄です。

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「ロミオとジュリエット」ロミオ(photo:Bill Cooper)

[ロイヤル・バレエ]マーラ・ガレアッツィ インタビュー

マーラ・ガレアッツィ Mara Galeazzi
(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル・ダンサー)

イタリア出身のマーラ・ガレアッツィは、そのお国柄にたがわぬ情熱的なダンサー。彼女がはじめて『マイヤーリンク』のマリー・ヴェッツェラ役を任されたのはまだ入団一年目の19歳のとき。だがのちに芸術監督モニカ・メイソンは「あのときから、あなたのなかにはマクミランの血が流れていたわね」と彼女に賛辞を送った。まさに芸術監督お墨付きの、フェリやデュランテにつづくイタリア産ドラマティック・ダンサー。だが彼女にそんな言葉を伝えると、ありがたい褒め言葉だけれど「私は私」、と成熟した女性ならではの意志強い答えを返してきた。


--------「私は私」という考え方は、92年にこのカンパニーに入団されたときから持たれていたのですか。

そうですね。私は今までいちども、誰かと競って頂点に立とうと思ったことがありません。ただ私は「自分の好きな役を踊りたい」と思ってきただけ。ですから入団後四ヶ月のあいだ役がつかなかったときには辛かったですけど、運良くその二ヶ月後にはグレン・テトリーの『ラ・ロンド』で大役をもらうことができましたし、その翌年にはマリー役を踊らせてもらうことができた。そしてそのひとつひとつの役で、私は自分のベストを尽くしてきただけ。だから話を元に戻すなら、私は私という考え方はその頃からあったように思います。アートは競技ではありません。アートとは自分だけの絵を描くことです。


--------05年頃から「Dancing for the Children」というアフリカの子供たちのためのチャリティ公演を企画されています。また一昨年にはロイヤル・バレエ団の舞台スタッフとご結婚もなさいました。いまはあなたにとって進化の時期なのですね。

ええ、まさにいま私はダンサーとしても女性としても進化しているところです。チャリティ公演の舞台に立ったときには心からこの仕事の本質的なすばらしさを――つまり「人に喜びを与える」というすばらしさを――知ることができました。また結婚は、私を女性として間違いなく成長させてくれました。ですからいまは逆に、マリーなどの少女役を踊るときには、気をつけなければならないこともある。大人の女性である私が、私自身のまま彼女を演じても、17歳の少女には決して見えませんからね。ただいずれにしろ今まで人生で様々な知識を身につけてきたことによって、役柄へのアプローチはずいぶんたやすくなったように思います。


--------日本公演では『マイヤーリンク』で、マリー・ヴェッツェラとラリッシュ伯爵夫人の二役を踊られますね。

ふたりのとても異なる女性です。いえ、マリーはまだ女性とはいいきれないですね。彼女はまだ女の子。少女ならではのまっすぐな情熱で有名人であるルドルフに恋をしてしまうんです。だからルドルフとの間にあった感情は、愛というよりも少しクレイジーな恋心に近いですね。逆にラリッシュ伯爵夫人は、私の考えでは、ルドルフを心から愛している。彼のためならなんだってする。彼女の愛はトゥルー・ラブです。ですから私はこの二役で、人生のまったく異なる段階にいる二人の女性の、まったく異なる愛をあらわすことになります。日本のお客様には、私の舞台に対しての「熱意」をなにより感じとってもらいたいですね。

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「うたかたの恋」マリー・ヴェッツェラ(photo:Johan Persson)


取材・文:岩城京子(演劇・舞踊ライター)

[ロイヤル・バレエ]ロベルタ・マルケス インタビュー

ロベルタ・マルケスRoberta Marquez
(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル・ダンサー)


小さな顔、すっと伸びた首筋、しなやかで女性らしい足のライン。ブラジル出身のバレリーナ、ロベルタ・マルケスの身体つきは、まるでドガの彫刻『14歳の踊り子』のよう。鋭角的なラインを美とする最先端のモード界が忘れ去ってしまった、柔らかであどけない少女のような優美さを体現する。そんな彼女も今年で、バレエ団のプリンシパルとして6年目。ダンサーとして成熟期に。恵まれた身体と確かな技術を淡い上品なヴェールで包み、マルケスは、これぞクラシック・バレエという古典的な美しさをみせてくれる。

--------あなたは『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『コッペリア』『ジゼル』など、特に、十九世紀クラシック・バレエの演目で高い評価を得ていますね。

そうですね、それはとても嬉しいことです。なぜなら、わたしは古典演目を踊ることが大好きですから。それになんだかんだ言っても、わたしたちはクラシック・バレエのカンパニーにいるわけで、古典演目を踊りつづけることはやはり大切にしたいと思います。ただ今後は、今までの自分の得意分野ではない踊りにもすこしずつ挑戦していきたい。たとえばわたしは『白鳥の湖』のオデットのようなアダージオを踊ることはわりと得意としますが、フォーキンの『火の鳥』のように力強く溌剌としたステップはそこまでじゃない。でもモニカ(メイソン)にうながされて、いざ『火の鳥』に挑戦してみたら、自分でも知らない自分の能力に気づくことができてとても楽しかったんです。ですから今後はもっといろいろ、それこそ斬新なコンテンポラリー作品にも挑戦してみたいと思っています。


--------明日のソワレ(3月10日)では、スティーブン・マックレーと『ロミオとジュリエット』を踊られますね。彼とは近年、とてもよいパートナーシップを築かれているように思います。

ええ、スティーブンとは一緒に踊る前からとても良い友達だったので、遠慮なくなんでも話すことができるんです。人によってはわたしは照れてしまって、言いたいことが言えないことがあるのですが、彼とはリハーサルでどんなことでも言いあえる。それが本番でのパートナーシップに役だっているように思います。ジュリエットは大好きな役のひとつです。わたしはブラジルで、たしかまだ14歳ぐらいのときに、はじめてワシーリエフ版の『ロミオとジュリエット』を踊ったんですけれど、そのときよりもずっと自由に、ずっと自然体に、ジュリエットになれているように思います。それにスティーブンのロミオはとてもみずみずしいので、彼の若いエネルギーがわたしにも感染して、作品全体に高揚感が生まれるんです。


--------日本では彼と『リーズの結婚』を踊られますね。

アシュトンを踊るときに何より大事なのは、難しいステップの数々を手もなくこなしているように見せること。軽やかに弾むように、ジャンプなどのステップこなさなければいけません。あとはこうしたコミック・バレエで大切なのは、ステップやマイムのタイミング。きっかけが数秒ずれるだけで、なんにも面白みのない退屈な作品になってしまいますからね。でもスティーブンとなら大丈夫です。呼吸のタイミングもばっちりです。

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『リーズの結婚』(photo:Bill Cooper)


取材・文:岩城京子(演劇・舞踊ライター)

[ロイヤル・バレエ]リャーン・ベンジャミン インタビュー

リャーン・ベンジャミン(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル・ダンサー)
Leanne Benjamin


山椒は小粒でもぴりりと辛い。英国ロイヤル・バレエ団で17年プリンシパルとして踊りつづけ、英国帝国勲章受賞者でもあるリャーン・ベンジャミンは、理想的な細身のバレリーナ体型で身長たったの158cm。「ハロー、今日はよろしくね」と挨拶するその姿は十代の可憐な少女のよう。だがひとたび取材が始まると、大企業のビジネスエリートのように鋭利に質問に応えていく。イエスのときはイエス、ノーのときはノー。彼女のバレエ哲学には曖昧さがない。そして明日のほうがほんの少し今よりよいダンサーになれるよう、努力家な彼女は今日も稽古場のバーの前に立つ。


--------あなたは92年にロイヤル・バレエ団に入団する前にも様々なカンパニー(サドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエ団、ロンドン・フェスティバル・バレエ団、ベルリン国立歌劇場バレエ団)で踊って来られましたね。しかも大きな怪我やスランプにも陥ることなく、つねに第一線で活躍してきた。一流のダンサーでありつづける秘訣を教えてください。

何よりの秘訣は「規律性」にあります。日々欠かさず稽古場にむかうこと。そして少しでも向上するよう努めること。その地道な積み重ねがあるとき本番で実を結ぶのです。あとは幸運なことに私は、ダンサーに向いた資質を持って生まれてきたのだと思います。だからなにを食べようが太らないですし、無理せず柔軟な身体を保つことができる。もし私が人生の大切なこと--------たとえば夫や、子供や、食生活を--------犠牲にしてまでバレエに向き合わなければならなかったら、今日まで踊りつづけることはできなかったと思います。それに「ジゼル」からマクミランからウェイン・マクレガーまで、自在に踊りこなすこともできなかったでしょうね。

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「うたかたの恋」マリー・ヴェッツェラ(photo:Bill Cooper)


--------確かにキャリアが進むにつれて、古典作品かコンテンポラリー作品どちらかに重きを置くダンサーは多いですが、あなたは両方とも均等に踊る。それはなぜですか?

なぜって、それは私が両方踊れるからよ(笑)。それは冗談だとしても、双方を踊る機会を与えられて本当にラッキー。来シーズンには17歳のときから踊る「ジゼル」にも、キム・ブランドストラップの新作にも出演しますからね。これだけ幅広い演目を踊って来られたからこそ、私は精神的に苦しくなることなくバレエ界で生き残って来られたのだと思います。


--------日本では「うたかたの恋」と「ロミオとジュリエット」に主演されます。どちらも、あなたがロンドンの観客に絶賛される役柄です。

「うたかたの恋」のマリーは自信家な女の子。自分の行動をすべて計算づくに把握していて、だからこそコートの下にほぼ何も着ないでルドルフの家を訪れたりする。そんなこと、マリー・ヴェッツェラかシャロン・ストーンでもなきゃしないでしょう(笑)。だから私の踊るマリーは、ルドルフを愛しているというよりも自分自身を愛している少女です。ジュリエットは、またエドワード(ワトソン)と踊れることが楽しみ。エドワードのロミオはとても情熱的なんですよ! だから彼と踊るときは、私はただ舞台に立って「私はジュリエット」と思うだけでいい。そうすれば本能的に何をすべきかわかってくる。また私のそうした本能的な演技にエドワードも反応してくれるから、毎晩少しずつ違う演技が生まれてくる。すごくスリリング。目の肥えた日本のお客さんにも楽しんでもらえればと思います。

取材・文:岩城京子(演劇・舞踊ライター)

[ロイヤル・バレエ]メディア情報

チャコットのwebマガジン「Dance Cube」に、サラ・ラムとエドワード・ワトソンのインタビューが掲載されました。
日本公演で上演される3作品の魅力や見どころ、2人のこれまでの歩み、ダンサーとしてのスタンスなど、充実した内容のインタビューをぜひご一読ください。

●チャコット Dance Cube>>>

[ロイヤル・バレエ]エドワード・ワトソン インタビュー


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エドワード・ワトソン Edward Watson
英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル



男性ダンサーとしては並はずれてしなやかな肢体と、繊細でいながら時に大胆にエキセントリックな精神の領域に踏み込む、密度の濃い表現力。エドワード・ワトソンの舞台を見ていると、いつも「究極のマクミラン・ダンサー」という言葉が思い浮かぶ。


――前回(2008年)の来日公演では大阪での出演だけで、東京のファンはたいへん悔しい思いをしました。今回はマクミランの『ロミオとジュリエット』『うたかたの恋』の2作品に主演予定ですね。

10-02.18EdwardWatson(photo_JohanPersson)04.jpgやっと本格的な東京デビューですね(笑)。僕自身も待ちわびていました。ロミオは、まだソリストだった2004年に初めて全幕作品に主演した、思い出深い役です。

この役で心がけているのは、できるだけに人間的に演じるということ。彼はジュリエットに出会い、自分では全くコントロールできない恋というものを知ります。若い二人には家同士の確執をかえりみる分別もなく、突っ走るしかなかったんです。古典バレエの理想の王子役とは、全く違ったキャラクターなのです。

そして、事前に細部まで作りこんで舞台に臨むより、目の前の相手に反応するのが好きですね。有名な物語だから何が起こるかは誰でも知っていますが、その場で恋人たちがどう感じ、どう演じるかは毎回変わります。それがこのバレエの面白いところだと思います。


――もう一つの『うたかたの恋』では、オーストリア=ハンガリー帝国皇太子のルドルフを踊られる予定ですね。

これは、ルドルフが若い愛人マリー・ヴェッツェラとマイヤリングの狩猟地で心中するまでの、最後の数年間を描いたバレエです。主人公のルドルフの周りには、彼の複雑な性格を照らし出すように、多くの女性が登場します。彼女たちと全部で10の踊りがあるなど、まず技術やスタミナの面で過酷な役。まるでオリンピックに出ているような作品です(笑)。

10-02.18EdwardWatson(photo_JohanPersson)03.jpgルドルフは新妻に暴力をふるい、酒や麻薬におぼれ、他人を道連れに自殺してしまう。理解しがたい性格ですが、「どうして彼はそんな行動をとったんだろう?」と、内面的な裏付けを探ってゆきます。時代背景や政情、王室の一員であるというプレッシャー。史料にも当たりながら、そうしたことの影響を一つひとつ解き明かしていくのです。

舞台で踊られている場面だけではない、トータルな彼の実像に迫り、内面の裏付けを持って踊る時、モンスターのようなルドルフは初めて観客と心を通わせ、共感を得ることができるんです。他ではなかなか得られない、エモーショナルな経験です。


――マクミランのバレエといえば、何をおいてもパ・ド・ドゥが魅力ですが、『うたかたの恋』にもマリーとルドルフの素晴らしいパ・ド・ドゥがありますね。

リストの音楽もとても美しく、マクミランの最高傑作の一つだと思います。そしてそれ以上に特別なのは、この場面の雰囲気。死に向けての緊張感がキリキリと長い時間かけて高まっていくので、最後に銃声が響くといつも安堵をおぼえるほどなんです。

長野由紀(舞踊評論家)


※写真はクリックすると大きなサイズでご覧いただけます。


●エドワード・ワトソン 出演予定日●

「うたかたの恋」 6月24日(木)6:30p.m. ルドルフ皇太子

「ロミオとジュリエット」 6月28日(月)6:30p.m. ロミオ


photo:Nobuhiko Hikiji(ポートレート)、Dee Conway(「ロミオとジュリエット」)、Johan Persson(「うたかたの恋」)

[ロイヤル・バレエ]サラ・ラム&エドワード・ワトソン プロモーションレポートvol.1

このblogでもお知らせしたとおり、先週、英国ロイヤル・バレエ団、サラ・ラム&エドワード・ワトソンが日本公演のプロモーションのため来日。3泊4日というハードなスケジュールにもかかわらず、2人で雑誌、新聞、WEBなど、20件以上の取材に応じてくれました。
このプロモーションの様子、Twitterでリアルタイム報告を試みたのですが、リアルタイムというより休息ごとのご報告という感じになってしまいました。
このTwitterでのつぶやき、@ROH_JAPAN2010にアクセスしていただくとご覧いただけます。お時間のあるときにでもぜひ!
「Twitterはまだ使い方がよくわからない」という方のために、簡単にこのblogでもプロモーションのご報告を。

2人は1月21日に到着。サラは出身地のボストンから、エドワードはロンドンから、到着したため、当初は2人別々にホテルに向かう手はずでした。が、サラの飛行機が遅れ、エドワードの飛行機が早まり、結果的に2人一緒に都内のホテルに。

翌22日は、10時からの取材に向けて、まずエドワードと広報のロージーさんが到着。エドワードは時差で一睡もできなかったということでちょっとお疲れの様子。しかし、取材がはじまるとそんなそぶりも見せず、一言ひとこと丁寧に質問に答えていました。

30分遅れてサラが到着。
東(ボストン)から西(東京)に移動してきたサラのほうが、時差はそれほどきつくない様子。
エドワードもサラもこの日はすっきりとモノトーンにまとめ、英国ロイヤル・バレエ団のダンサーらしい洗練された雰囲気を醸し出していました。

ここから怒涛の取材がスタートです。
2人一緒の最初の取材は全国紙。サラは「リーズの結婚」と「うたかたの恋」、エドワードは「うたかたの恋」と「ロミオとジュリエット」に出演するため、サラが「リーズ」、エドワードが「ロミオ~」と「うたかた」の魅力やみどころについて話し、それを受けてサラが「うたかた」の補足をするという抜群のコンビネーションで取材が進みます。
午前中に、サラは2件、エドワードは3件の取材を受けて、昼食タイム。
昼食後の休憩に撮影した写真がこちらです。

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午後からは2人一緒に新聞の取材を2件、その後サラはチャコットDance Move(3月上旬発行)の表紙撮影のため、都内のスタジオに移動。
最初に、撮影スタッフから「春のほころびはじめた花、暖かな空気」のイメージであり、ピンクやオレンジの布を使って撮影することが伝えられます。撮影の意図を理解したサラはしっかりと自分の意見をスタッフに伝え、衣裳をセレクト。
サラは陶磁器の人形のような楚々としたイメージがありますが、はっきりと、わかりやすく自分の考えを伝え、こちらが1を伝えると10理解してくれる・・・ビジネスマンとしても大成功するのではないかという感じのクレバーな女性。そして細やかな気遣いと笑顔の美しさで、彼女に接する人誰をも魅了します。
スタッフさんとの息もぴったりで完成した写真は、いずれも芸術的な美しさ。Dance Moveの発行を楽しみになさってくださいね。

一方、エドワードは株式会社ソニーが展開するWorld Classics@Cinemaで上映される『オンディーヌ』の取材も含めたインタビューが4件続きます。「ちょっとでも休憩があると眠ってしまう・・・」というエドワードは、ちょっとした空き時間も立ったまま。でも、いざ取材となると、丁寧かつ紳士的な対応で、プレスの方たちからは「こんなハードなスケジュールなのに、本当に素敵な方ですね!」との声しきり。「まさに英国紳士・・・」と感心しながらスタッフは取材に立ち会っていたのでした。

長かった1日目の取材が終わり、都内某しゃぶしゃぶ店に。エドワードはビールで、サラはペリエで乾杯。
サラはお肉も魚介類もあまり食べられないということで、野菜中心のメニューを用意してもらっていたのですが、初めて食べた「かにしゃぶ」とお餅をとても気に入った様子。
エドワードは、前回(2008年)の日本公演の際にしゃぶしゃぶをはじめて食べて、大感激したとのことで、昼間「今日の夕食はしゃぶしゃぶです!」と伝えた瞬間、満面の笑みで喜んでくれました。
2度目のしゃぶしゃぶ体験では、「『しゃぶしゃぶしゃぶ』と言いながらお肉を泳がせるのよ!」というNBSスタッフのアドバイス(?)に素直に従い、「しゃぶしゃぶしゃぶ」と嬉しそうにつぶやきながらお肉を泳がせていました。
和やかな食事会の最後、サラからの「みんなで写真を撮りましょう」提案で記念撮影。サラは取材の合間にもいろいろな写真を撮影していたので、どこかでお目見えするかも・・・。

こうして、長い1日は終わり、2人はホテルへ。
2日目の2人の様子は、日本プロモーションレポートvol.2で。もうしばらくお待ちください。

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