[ロイヤル・バレエ]リャーン・ベンジャミン インタビュー

[ロイヤル・バレエ]リャーン・ベンジャミン インタビュー

リャーン・ベンジャミン(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル・ダンサー)
Leanne Benjamin


山椒は小粒でもぴりりと辛い。英国ロイヤル・バレエ団で17年プリンシパルとして踊りつづけ、英国帝国勲章受賞者でもあるリャーン・ベンジャミンは、理想的な細身のバレリーナ体型で身長たったの158cm。「ハロー、今日はよろしくね」と挨拶するその姿は十代の可憐な少女のよう。だがひとたび取材が始まると、大企業のビジネスエリートのように鋭利に質問に応えていく。イエスのときはイエス、ノーのときはノー。彼女のバレエ哲学には曖昧さがない。そして明日のほうがほんの少し今よりよいダンサーになれるよう、努力家な彼女は今日も稽古場のバーの前に立つ。


--------あなたは92年にロイヤル・バレエ団に入団する前にも様々なカンパニー(サドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエ団、ロンドン・フェスティバル・バレエ団、ベルリン国立歌劇場バレエ団)で踊って来られましたね。しかも大きな怪我やスランプにも陥ることなく、つねに第一線で活躍してきた。一流のダンサーでありつづける秘訣を教えてください。

何よりの秘訣は「規律性」にあります。日々欠かさず稽古場にむかうこと。そして少しでも向上するよう努めること。その地道な積み重ねがあるとき本番で実を結ぶのです。あとは幸運なことに私は、ダンサーに向いた資質を持って生まれてきたのだと思います。だからなにを食べようが太らないですし、無理せず柔軟な身体を保つことができる。もし私が人生の大切なこと--------たとえば夫や、子供や、食生活を--------犠牲にしてまでバレエに向き合わなければならなかったら、今日まで踊りつづけることはできなかったと思います。それに「ジゼル」からマクミランからウェイン・マクレガーまで、自在に踊りこなすこともできなかったでしょうね。

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「うたかたの恋」マリー・ヴェッツェラ(photo:Bill Cooper)


--------確かにキャリアが進むにつれて、古典作品かコンテンポラリー作品どちらかに重きを置くダンサーは多いですが、あなたは両方とも均等に踊る。それはなぜですか?

なぜって、それは私が両方踊れるからよ(笑)。それは冗談だとしても、双方を踊る機会を与えられて本当にラッキー。来シーズンには17歳のときから踊る「ジゼル」にも、キム・ブランドストラップの新作にも出演しますからね。これだけ幅広い演目を踊って来られたからこそ、私は精神的に苦しくなることなくバレエ界で生き残って来られたのだと思います。


--------日本では「うたかたの恋」と「ロミオとジュリエット」に主演されます。どちらも、あなたがロンドンの観客に絶賛される役柄です。

「うたかたの恋」のマリーは自信家な女の子。自分の行動をすべて計算づくに把握していて、だからこそコートの下にほぼ何も着ないでルドルフの家を訪れたりする。そんなこと、マリー・ヴェッツェラかシャロン・ストーンでもなきゃしないでしょう(笑)。だから私の踊るマリーは、ルドルフを愛しているというよりも自分自身を愛している少女です。ジュリエットは、またエドワード(ワトソン)と踊れることが楽しみ。エドワードのロミオはとても情熱的なんですよ! だから彼と踊るときは、私はただ舞台に立って「私はジュリエット」と思うだけでいい。そうすれば本能的に何をすべきかわかってくる。また私のそうした本能的な演技にエドワードも反応してくれるから、毎晩少しずつ違う演技が生まれてくる。すごくスリリング。目の肥えた日本のお客さんにも楽しんでもらえればと思います。

取材・文:岩城京子(演劇・舞踊ライター)

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