[ロイヤル・オペラ]「椿姫」ヴィオレッタの配役変更のお知らせ

[ロイヤル・オペラ]「椿姫」ヴィオレッタの配役変更のお知らせ


 このたびの英国ロイヤル・オペラ日本公演で、「椿姫」のヴィオレッタ役で出演する予定だったアンジェラ・ゲオルギューは、愛娘の困難な手術に立ち会わなければならないことから、日本公演に参加できなくなりました。代わって、エルモネラ・ヤオ(Ermonela Jaho)がヴィオレッタを演じます。ヤオは本年5月のロイヤル・オペラの「椿姫」においてもヴィオレッタを演じ、成功を収めている、いまヨーロッパで注目されているソプラノです。
 ゲオルギューのマネージャー、ゲオルギュー本人、ロイヤル・オペラのオペラ・ディレクター、エレイン・パドモアより下記のコメントが届きました。また、エルモネラ・ヤオのバイオグラフィーと批評も合わせてご紹介いたします。
 このような事情をご理解のうえ、このキャスト変更に関し、なにとぞ、ご理解を賜りたくお願い申し上げます。

財団法人日本舞台芸術振興会




■アンジェラ・ゲオルギューのマネージャーからの状況説明とゲオルギューからのコメント

アンジェラ・ゲオルギューのマネージャー、ジャック・マストロヤンニは下記のように表明しています。

「数週間前、アンジェラ・ゲオルギューの娘イオアナはロンドンで手術を受けました。彼女は想定外の合併症を起こし、医師団の懸命の努力にも関わらず、近日ブカレストでの再手術を余儀なくされました。この大きな手術のため、担当医はゲオルギュー氏に手術中と回復期に娘のそばに付き添うことを求めています」


また、アンジェラ・ゲオルギューは、日本の観客の皆さんに心からのお詫びを申し上げるとともに、下記のコメントを寄せています。

「9月に行われるロイヤル・オペラの日本公演に参加できないことは、極めて残念でなりません。1992年、ロイヤル・オペラとともに初めて日本を訪れてか ら、ずっとロイヤル・オペラと日本を再訪することを心待ちにしていました。しかしながら、今は私にとって大変困難な時期であり、娘と共にいることが本 当に重要なのです。
皆さまのご理解とご支援に心より感謝申し上げます。」


Angela Gheorghiu's manager Jack Mastroianni stated:
"A few weeks ago, Angela Gheorghiu's daughter Ioana underwent surgery in London that unexpectedly developed complications. Despite efforts byspecialists to correct the problem without further surgery, a second operation has been deemed essential and is scheduled in Bucharest for the coming days. As the operation will be invasive, the surgeons have requested that Ms. Gheorghiu remain with her daughter during the operation and recovery periods."

Angela Gheorghiu has offered her sincere apologies to audiences in Japan stating:
"It is with deepest regret that I am unable to perform with The Royal Opera in Japan this September. I had been looking forward to returning to Japan with The Royal Opera having first performed with the Company there in 1992. However, this is a very difficult time for me and it is so important for me to be with my daughter. I thank you all for your understanding and support"


■オペラ・ディレクター、エレイン・パドモアからのコメント

長く発表されていたキャストにやむを得ない変更が生じることは、当然のことながら、関係者全てにとって非常に残念なことであり、アンジェラ・ゲオルギューが日本公演から降板せざるを得なくなったことは、ロイヤル・オペラにとっても本当に悲しむべき事態です。

私たちはこのような落胆からも常に何かしら良いことが起こるよう、願っています。そして、今回ヴィオレッタ役として、アルバニア人ソプラノ歌手、エルモネ ラ・ヤオをご紹介出来ることは、我々にとって大変幸運でした。2008年に彼女をコヴェント・ガーデンの舞台に導いてくれたのも、「椿姫」においての突発的なキャンセルという非常事態でした。(*注)(彼女が代役を務めた)その夜、彼女が得た観客からの喝采と成功はめざましいものでした。我々はただちに、 彼女の当然の権利として、彼女自身をヴィオレッタ役として再び招くこと決めました。そして、今年5月に彼女は再び我々の「椿姫」の舞台に立ち、称賛を浴びたのです。

*注釈:2008年、エルモネア・ヤオは英国ロイヤル・オペラの「椿姫」(今回と同じプロダクション)に、病気で降板したアンナ・ネトレプコの代役として急遽、出演した。


It is of course terribly disappointing for everyone concerned when long-announced casting plans have to be changed, and the Royal Opera is sad indeed that Angela Gheorghiu has had to withdraw from the tour to Japan.

We always hope that out of such a disappointment will come something good, and we count ourselves fortunate to be able to present the Albanian soprano Ermonela Jaho in the role of Violetta. It was in 2008 that a different emergency Traviata cancellation brought her to the stage of Covent Garden. So great was her success that night before a cheering audience that we immediately invited her back to sing the role in her own right, and she returned for a much-acclaimed run of Traviata performances in May this year.


※公演チラシ、NBSホームページ等で事前に発表しております通り、今回の出演者変更にともなうチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。なにとぞご了承ください。

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エルモネラ・ヤオ  Ermonela Jaho

10-08.26Jaho01.jpg アルバニア生まれ。生地のティラナとローマで学んだ。17歳にして、ティラナでヴィオレッタ役でオペラ・デビュー。以来、この役を英国ロイヤル・オペラ、リヨン歌劇場、メトロポリタン歌劇場、バイエルン国立歌劇場、ナポリのサンカルロ劇場、チューリッヒ歌劇場、マルセイユ・オペラ、トリエステおよびベルリン国立歌劇場で歌っている。
 このほかのレパートリーとしては、ドニゼッティ『マリア・ストゥアルダ』(ベルリン国立歌劇場)、『アンナ・ボレーナ』(パリとリヨン)、『夢遊病の女』のアミーナ(ヴェローナ)、『蝶々夫人』のタイトルロール(フィラデルフィアとケルン)、『ボエーム』のミミ(ベルリン国立歌劇場、ボローニャ、フィラデルフィア)、マスネの『マノン』(マルセイユ)、『ファウスト』のマルグリート(ヘルシンキ)、『カプレーティとモンテッキ』のジュリエッタ、ヴィッテリア(アビニョン)、『カルメン』のミカエラ(グラインドボーン、ローマ、オランジュ、トリエステ)、『セミラーミデ』のタイトルロール(リマでファン・ディエゴ・フローレスと共演)。
 今後の予定としては、リヨン歌劇場での『ルイザ・ミラー』、ウィーンでのヴィオレッタ、バルセロナのリセウ歌劇場でのマルグリート、ブリュッセルのモネ劇場での『ボエーム』のミミ、フィラデルフィアでの『マノン・レスコー』、トゥーロンでの『タイス』、パリでの『ヴェスタの巫女』のジューリアなどがある。今回が初来日となる。


●2010年5月 英国ロイヤル・オペラにおける「椿姫」舞台評より●

10-08.26Jaho02.jpg 前回、アルバニア人ソプラノ歌手エルモネラ・ヤオがロンドンでヴィオレッタを演じたとき、彼女を羨んだ者はまずいなかっただろう。2008年のそのとき、彼女は病気降板した世界的歌姫アンナ・ネトレプコの代役として、急遽コヴェントガーデン入りしたのだった。そのヤオが今回は正式なヴィオレッタ役として戻ってくるとともに、観客の心をつかむ魅力と実力の持ち主であることを証明する。
 ヤオには空恐ろしいほど多面性のあるヴィオレッタになりきるなにか天性のものが備わっている。彼女の声はあまりあたたかみを感じさせない暗さを秘め、ときとして金属的ですらあり、その力強い音色やアクセントはひとつ間違えばヴェルディの歌曲の静謐な品格には相容れないものにもなりうる。だが、死期を迎えた彼女が囁くように必死で歌う「さようなら、過ぎ去った日々よ」はスターの風格漂うものだったし、死の前の最期のひとときステージ上を走り回る彼女の姿には――エアの演出でもとりわけのびのびした場面――思わず涙腺も決壊しそうだった。
(「タイムズ」ニール・フィッシャー)


 ヤオの演技も見せかけのものから真実味あふれる悲しみをたたえたものになり、その歌声からも燃えるような高貴な信念か、彼女の人生が自己犠牲や病気に支配されたものになるにつれて圧倒的な現実に打ちひしがれているさまがひしひしと伝わってくるようになった。見応えのあるしっかりした『椿姫』に仕上がっており足を運ぶ価値十分。
(「ガーディアン」ティム・アシュリー)

photo:Johan Persson(舞台写真)、Fadil Berisha(ポートレート)

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