大和証券グループ Presents ミラノ・スカラ座来日記念 特別演奏会 リッカルド・シャイー指揮 ズービン・メータ指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団

Photos: Brescia e Amisano / Teatro alla Scala

 イタリアオペラの醍醐味といえば伝統の中で育まれた音楽の中に浮かび上がる旋律美であり、脈打つように柔軟に変化する音のディナーミク(強弱)、そして自在なアゴーギク(緩急)にある。スカラ座の舞台に向き合いいつ時も感じることである。
 名だたる歌手との共演をはじめ、世界屈指の舞台機構で魅せる場面の転換、なんといっても豪華絢爛な舞台装飾に魅了されるなど見どころはふんだんにあるが、ここにいて自然と耳目が向くのはやはり総合的な軸となるオーケストラ、そしてコーラスである。
 啓蒙思想を強く抱くハプスブルク家の命により建立された劇場は、ミラノという他の欧州の国からあまり遠くない地理的に優位な環境にあることも手伝って世界のオペラシーンをリードする舞台へと成長していく。作曲家が自作の上演を、歌い手は檜舞台へのデビューを夢見て、また指揮者はこぞってこのスカラ座という難関へと挑んできた。高いレベルをより高くという然るべき潮流の中で無二の歌劇場へと進化していったのである。
 オペラやバレエの演奏においてこれほど世の先端にありながら、管弦楽曲となるとこの殿堂にそこまでの知名度がないというのが一般的な見方である。しかしそれはオーケストラに技術がある、ないということではなくイタリアオペラと管弦楽曲との間には基本的なメカニズムに差異があるということに過ぎない。旋律美を重視するイタリアものと、和声が命綱であろうドイツやその周辺国に生まれた楽曲との違い。その上、互いの描くアゴーギクにまで大きな隔たりがある。“血縁の異なり”というべきであろうか。
 そのような定義あってしかしスカラ座はやはり別格というべきであろう。トスカニーニが殿堂に植えつけたイタリアのアイデンティティーはその後、デ・サバタ、ジュリーニ、アバド、ムーティ、そして現音楽監督であるシャイーへと受け継がれていく。歴代のスカラ座の音楽監督は世界屈指のオーケストラを渡り歩いたいわば超一流ばかり。そのようなマエストロたちに鍛えられたオーケストラである。類をみないコーラスを交えて、他では到底味わうことのできない究極のマリアージュを予感させるのである。
 ヴェルディ『椿姫』、プッチーニ『トスカ』に合わせて、ベートーヴェン、そしてマーラーのシンフォニーが今秋の日本へと渡る。
 殿堂を背負い指揮台に上がるのはいままさにスカラ座を担うリッカルド・シャイー、楽界を代表する巨匠の一人ズービン・メータである。
 ここイタリアではフィレンツェ五月音楽祭の顔として長年を費やしてきたメータながらスカラ座との絆も深く初舞台は1962年に遡る。劇場スタッフとともに練り上げるオペラはともかく、ロサンゼルス・フィル、イスラエル・フィル、ウィーン・フィルなどとともにミラノを訪れては多くの管弦楽曲を厳密な解釈ながら情熱をもって聴衆に届けてきた。
 ミラノ生まれ、オペラ指揮者として定評のあるシャイーにしても、コンサートホールを巡るスペシャリストとしての印象が強く、ミラノ・ヴェルディ交響楽団の創設時の貢献や、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ウィーン・フィル、ルツェルン祝祭管弦楽団をミラノに招いた殿堂での演奏が記憶に新しい。シャイーによる演奏には厳しい楽曲の分析を基盤としながら幻想性を備えた知性と感性の均衡が見てとれる。
 今シーズン、スカラ座管弦楽団を前にベートーヴェンチクルスを行うシャイー、そして同じく3月に同オーケストラとマーラーを演奏するメータ。共にオペラ、管弦楽曲に精通し、何より世界の音楽シーンを知り尽くした二人が周到な準備を重ねて日本を目指すことになる。
 また、オペラの老舗として注目せずにはいられないのがオペラ界きってのコーラスであろう。イタリアオペラを構築する上で欠かすことのできない指導者、ブルーノ・カゾーニに鍛え上げられたスカラ座合唱団が、ベートーヴェンの「第九」とマーラーの交響曲第3番を朗々と歌い上げるのである。
 かつて世界中の名だたるオーケストラを渡り歩きながら晩年まで全集を出すことをしなかったジュリーニが、人生の最後に自らの描くベートーヴェンをスカラ座管弦楽団に委ねて録音(「第九」までは及ばず)していることを思い出した。イタリアの香る色彩豊かな演奏である。

ミラノ・スカラ座来日記念 特別演奏会
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団

リッカルド・シャイー指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団演奏会

【公演日】

2020年
9月18日(金)19:00

会場:サントリーホール

【プログラム】

ベートーヴェン:交響曲第8番 Op.93
ベートーヴェン:交響曲第9番 Op.125 合唱付き

ソプラノ: タマラ・ウィルソン
コントラルト: クラウディア・ハックル
テノール: ペーター・ゾン
バス・バリトン: トマス・コニエチュニー

ズービン・メータ指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団演奏会

【公演日】

2020年
9月24日(木)19:00

会場:東京文化会館

【プログラム】

メマーラー:交響曲第3番

メゾ・ソプラノ: ダニエラ・シンドラム
NHK東京児童合唱団

【入場料[税込]】

S=¥32,000 A=¥29,000 B=¥26,000 C=¥22,000 D=¥18,000 E=¥14,000(9/24のみ)

ダイワU29シート ¥5,000
※NBS WEBチケットのみで6/26(金)より引換券を発売。