モーリス・ベジャール振付 ベートーヴェン「第九」 テノール城宏憲インタビュー 「第九で歌うときは、いつも自分たちが4楽章で負わされている責任を感じます」

来る4月、モーリス・ベジャール・バレエ団と東京バレエ団によるベジャール振付「第九」は、
指揮者、オーケストラ、ソリスト、 合唱のすべてが日本人キャスト。
「ベジャールの第九」史上初となる機会を前に、テノール城宏憲さんにお話いただきました。

 総勢350名のダンサー、オーケストラ、合唱、ソロ歌手が舞台の上で人類の歓喜を表現するモーリス・ベジャール振付『第九交響曲』。メキシコのオリンピック・スタジアムをはじめ、数々の祝祭的空間で上演されてきたこのスペクタクルが、2020年の東京で上演されることは非常に意義深い。今回の上演では、梅田俊明指揮・東京都交響楽団がステージに乗り、合唱も声楽ソリストも全員日本人がキャスティングされているが、これは「ベジャールの第九」史上、初の試みとなる。第4楽章「歓喜の歌」でテノール・パートを歌う城宏憲氏は、2016年に東京二期会『イル・トロヴァトーレ』のマンリーコで本格デビューを飾って以来、『トスカ』『カルメン』『椿姫』などで主役を演じてきた、若手世代で最も期待されている声楽家だ。
「第九で歌うときは、いつも自分たちが4楽章で負わされている責任を感じます。1楽章、2楽章、ゆりかごの中のような穏やかな3楽章と続いて、目の覚めるような4楽章が始まるわけですが、そこで1.2.3楽章のすべてを超えなければならないし、ベートーヴェンもそう望んで書いているのです。4楽章は、ベートーヴェンとシラーの願いが二人分掛け合っているので凄いメッセージがあります。コンサート・ピースとして演奏するときにも、毎回ベートーヴェンの望んだ意志に到達できればいいな、と思って取り組んでいます」
 イタリア・オペラでは抒情的で軽やかな若者役(リリコ)を演じることが多い城氏だが、声楽家としてのプロデビューはベートーヴェンの『合唱幻想曲』の第1テノールだった。 「『合唱幻想曲』は『第九』の元となった曲と言われているのですが、編成が大きく、声楽パートも6つに分かれていて、真ん中にはかつてベートーヴェン本人が弾いたというピアノが置かれます。それを故ピーター・ゼルキン氏が遊ぶように自由に弾いていたのが印象的でした。オーケストラはサイトウ・キネン・オーケストラで、最高のサウンドに触発されて、自分の中で羽ばたけた瞬間がありました。イタリア留学から戻ってきて、「よし、日本で頑張っていくぞ!」と決意が固まった、エポックメイキング的な演奏会だったんです。それが2012年で、翌2013年から第九を歌い始めました」
 声楽家として目標にしてきたのはルチアーノ・パヴァロッティ。しかし『第九』に関しては別の歌手が理想だと語る。
「歌詞に「アインヘルト~英雄」という言葉が出てくることから、軽い声ではなく重くて甘いヘルデンテノールをイメージします。僕が理想の第九テノールだと思うのは、フルトヴェングラーの時代に活動していたトリスタン歌い、ハンス・ホップです。新しいものに取り組むときはつねに楽譜と録音を同時に開くことにしているのですが、ハンス・ホップの歌は第一声を聴いた瞬間に痺れました。とはいえ、自分自身の中から溢れ出すものが表現格となるので、梅田マエストロとともにゼロから築き上げていきたいと思っています」
 洞察的で責任感が強く、新しい経験も柔軟な心で受け入れる城氏が、ベジャール世界と出会ったとき何が起こるのか…‥奇跡のコラボに期待が募る。

ソプラノの髙橋維さんのインタビューは、
NBSホームページでご紹介しています。

https://www.nbs.or.jp/publish/news/2020/02/post-824.html

モーリス・ベジャール振付
ベートーヴェン「第九」

【公演日】

2020年
4月25日(土)14:00
4月26日(日)14:00
4月28日(火)19:00
4月29日(水・祝)16:00

会場:東京文化会館

指揮:梅田俊明
演奏:東京都交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
ソプラノ:高橋 維、メゾソプラノ:加藤 のぞみ、テノール:城 宏憲、バリトン:今井 俊輔
合唱:東京オペラシンガーズ

【出演】

モーリス・ベジャール・バレエ団、 東京バレエ団

【入場料[税込]】

S=¥25,000 A=¥20,000 B=¥15,000 C=¥12,000 D=¥9,000 E=¥6,000
※*ペア割[S,A,B席]あり

★U25シート ¥3,000
※NBS WEBチケットのみで2020/3/19(木)20:00より引換券を発売。