ミラノ・スカラ座 2020年日本公演 スカラ座イチ押しの実力派ソプラノ サイオア・エルナンデス インタビュー 初めて勉強した時から、トスカは私が一生歌い続ける役だと感じていました

 2シーズン続けてスカラ座の開幕公演登場を果たしたサイオア・エルナンデス。
 2018年『アッティラ』が終わるとすぐに、翌年『トスカ』のオファーがあったそうです。
 スカラ座を「聖なる神殿」と感じる彼女に、『トスカ』について話してもらいました。

Photo: Brescia e Amisano / Teatro alla Scala

ーーあなたはヴェルディやプッチーニのドラマティックな役柄をレパートリーにされていますがご自身の声についてはどのようにお考えですか?

エンルナンデス:デビュー前はバロック音楽を中心に勉強していました。ある時、『椿姫』の合唱に出演してから、オペラ歌手を目指して本格的に勉強を始めました。もともと音域が広かったこともあって『魔笛』の夜の女王を歌うこともありましたが、発声は自然な息に乗ったものではなく、喉に力が入って押し出していたので、声量はありましたがうるさいだけの声になって自分でも歌うことが辛くなっていきました。そうした問題を抱えていた時にスペインの偉大なソプラノ、モンセラ・カバリエさんに聴いていただく機会を得たのです。カバリエさんは私の発声が間違っていることを指摘してくださり、中音域を徹底的に訓練してくださいました。発声のテクニックを根本的に変えることはとても苦しいことで歌おうとしても声が出ないで涙だけが出るという日々を過ごしました。そして、やっと自分の本当の自然な声を見つけることができた時に、ヴェルディやプッチーニのドラマティックなレパートリーが自分に合っていると思えるようになったのです。

ーートスカはあなたにとってどのような役になりますか?

エンルナンデス:トスカは初めて勉強した時から、この役は私が一生歌い続ける役だと感じていました。今回のスカラ座の公演が5回目のプロダクションになりますが、初めのうちは自信が持てなくて不安でたまりませんでした。この夏にヴェローナで歌った時からやっと自分のものになったと感じられるようになって、今回スカラ座での稽古を通して余裕をもって歌えるようになったと確信できるようになりました。トスカはプリマドンナの役ですが、第1幕と比べて第2幕は非常にドラマティックで音楽的にも声楽的にも難しい役です。でも歌えば歌うほど私にとって大切な作品だと思う気持ちが強くなりました。

ーートスカを演じるうえで最も大切にしていることは何でしょうか?

エンルナンデス:トスカは狂気の殺人犯ではありませんし、驕り高ぶったプリマドンナでもありません。彼女はカヴァラドッシという恋人を愛する一女性であるのです。第1幕での彼女は本当に自然な気持ちを表します。嫉妬も甘えも普通の女性の日常生活そのままを表現したいと思っています。教会に行ってお祈りするのも恋人に会いに行くのも彼女の生活の一部なのです。彼女は政治に介入している女性ではありません。ところが、偶然にもそして不幸にも事件に巻き込まれてしまいます。第2幕では恋人が拷問されることに耐えられず秘密を明かしてしまいます。そして、恋人の命を助けるために自分が犠牲になる決心をするのです。スカルピアを刺すのも計画的殺人ではなく、咄嗟の自己防衛に他なりません。もし、自分がこの立場に置かれたらと考えつつ、現実感を感じられる演技を心掛けています。

ーーオペラ歌手になることは幼いころから考えていらっしゃったのですか?

エンルナンデス:子供の頃から歌うことが大好きでしたが、オペラ歌手になろうとは全く思っていませんでした。大学に入る頃くらいまで私はとても内気で恥ずかしがり屋でしたから人前で歌うなんて考えたこともありませんでした。大学にコーラス部があって、そこに入って合唱することが希望でした。ですからコーラス部に入って大満足でした。そのうちにソロのパートを歌うようになって少しずつ勇気が出て、歌を勉強することになったのです。

ーー2020年も大活躍ですね。

エンルナンデス:2020年はスカラ座で6月に『仮面舞踏会』、日本公演のすぐ後に『ジョコンダ』を歌います。『仮面舞踏会』は今回『トスカ』のスカルピア役ルカ・サルシさんと一緒で、『ジョコンダ』もサルシさんとフランチェスコ・メーリさんと一緒です。指揮はマエストロ・シャイイー、演出はダヴィデ・リヴェルモアと今回の『トスカ』のチームとの共演なので家族のような和やかさを感じながら仕事ができることを嬉しく思います。

ーー今回が日本でのデビューになると思いますがお客様にメッセージをいただけますか?

エンルナンデス:1月にドミンゴさんのコンサートで初めて日本を訪れます。オペラではスカラ座の『トスカ』が初めてです。日本は素晴らしいといつも友人たちから聞いているので待ち遠しくてたまりません。日本の皆さんに私のトスカを是非お楽しみいただきたいと思います。

ミラノ・スカラ座 2020年日本公演

プッチーニ作曲『トスカ』

指揮:リッカルド・シャイー
演出:ダヴィデ・リヴェルモア

【公演日】

2020年
9月15日(火)18:30
9月19日(土)15:00
9月22日(火・祝)15:00
9月26日(土)13:00

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

トスカ: サイオア・エルナンデス
カヴァラドッシ: ファビオ・サルトーリ
スカルピア: ルカ・サルシ

ヴェルディ作曲『椿姫』

指揮:ズービン・メータ
演出:リリアーナ・カヴァーニ

【公演日】

2020年
9月20日(日)15:00
9月23日(水)18:30
9月25日(金)15:00
9月27日(日)13:00

会場:NHKホール

【予定される主な演目と配役】

ヴィオレッタ: マリーナ・レベカ
アルフレード: アタラ・アヤン
ジェルモン: レオ・ヌッチ

【入場料[税込]】

S=¥69,000 A=¥60,000 B=¥52,000 C=¥44,000 D=¥36,000 E=¥28,000 F=¥20,000

U39シート 9/15「トスカ」、9/23「椿姫」 限定 ¥19,000
U29シート ¥8,000
※U39、U29シートは、NBS WEBチケットのみで6/26(金)20時から引換券を発売。