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2011/08/25 2011:08:25:13:30:02

「エオンナガタ」特集〜シュヴァリエ・デオンを知るキーワード(2)


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●シュヴァリエ・デオンを知るキーワード(2)


*ボーマルシェ
11-08.15EON_05.jpg「フィガロの結婚」「セビリアの理髪師」で知られる劇作家ボーマルシェ。彼はルイ15世亡き後、「王の機密院」を廃止したルイ16世の命を受けてエオンに接触し、機密書類を握るデオンと交渉を行う。当時デオンは身を守るため「本当は女性」であること公言しており、ボーマルシェはそんなデオンに恋心を抱いていたとも言われる。
交渉では、エオンが自分の正しい性"女性"として生きること、機密書類を渡すことを条件に、フランスへの帰国を認め、年金を与えることで「妥協和解」が結ばれた。
エオンにとっても、フランス政府にとっても、多くの機密をにぎるエオンが"女性"であることは好都合だったと思われる。
しかし、「妥協和解」が履行されることはなかった。
「エオンナガタ」では、エオン(ギエム)とボーマルシェ(ルパージュ)の丁々発止のやり取りが台詞で演じられる。


*ルイ16世
ルイ15世亡き後、フランス国王の座についたルイ16世は、フランスに帰国したエオンに、生涯を女性として、女性の姿で暮らすように命じる。デオンは人生の後半生33年を女性として生きることになる。そのときデオンは49歳だった。


*マリー・アントワネット
日本でもよく知られるフランスの女王、マリー・アントワネット。彼女は夫ルイ16世から女性として生きることを命じられた"哀れな女騎士"に同情し、お抱えの衣裳係ローズ・ベルタンにエオンのドレス一式を誂えさせた。


*見世物試合
老いて生活に困窮した彼は、その剣の腕を活かし、女装で果し合いに挑み、そこで得た金を生活の糧としていた。一時は見世物として剣の果し合いを見せる一座を率いていたという。
59歳のときには、当時イギリスで随一の剣士と言われていたサン=ジョルジュとの真剣勝負にドレス姿で挑み、圧勝した。サン=ジョルジュとの試合の様子は絵画にも残されている。

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*悲しい晩年
フランス革命によって、ルイ16世から約束されていた年金もなくなり、女友達と2人赤貧を洗う生活を送っていたエオン。勲章やルイ15世から下賜された王の肖像画入り嗅ぎ煙草入れまでも質入れするほどであった。
「エオンナガタ」では当時のイギリス国王ジョージ3世へ窮状を訴えるエオンの手紙が朗読される。
エオンは悲惨な窮乏生活のなか、1810年5月21日、82歳でその数奇な生涯を終えた。


*本当の性別
死後、エオンの遺体は解剖され、彼が正真正銘"男性"であったことが証明された。しかし、彼の身体はまるみを帯びており、髭もなかったという。




【参考資料】
窪田般彌『女装の剣士 シュヴァリエ・デオンの生涯』(白水社 1995年刊)
池田理代子『フランス革命の女たち』(新潮社 1985年刊)
冲方丁/文芸アシスタント『シュヴァリエ』(日経BP 2006年刊)