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2011/11/17 2011:11:17:17:23:19

「エオンナガタ」 シュヴァリエ・デオンの書簡 [翻訳全文]

「エオンナガタ」劇中で引用される母親宛、ボーマルシェ宛のシュヴァリエ・デオンの書簡全文です。
字幕では全文表示されませんので、ご了承ください。
なお、会場入口で書簡全文の翻訳をお配りいたします。


母親への書簡


ロンドン、1765年12月30日

親愛なる母上、あなたがわざわざ私にお書きくださった嘆かわしく痛ましい手紙を全て受け取りました。聖書に書いてあるように、ほとんど信仰のない女性であるあなたが、なぜ涙を流すのでしょう?トネールでのあなたの問題と、ロンドンにおける私の政治的な問題に、いったいどんな共通点があるというのでしょう。

どうか、静かにキャベツを植え、あなたの菜園の果物を食べ、あなたの牛から絞った牛乳や、あなたのブドウ畑のワインを飲んで、パリやヴェルサイユで話されているつまらない話のことは、ほっておいておいてください。彼らには、私の気が狂っていると言わせておけばよいのです。私を慰めるどころか、かえって悲嘆にくれさせるあなたの涙を拭ってください。私は少しも悲しくなどないですし、私の心はバイオリンやバス・ヴィオールさえも奏でていますから、慰めは不要なのです。と言うのも、私が自分の務めを果たしている一方で、自分達のことを、貴族だ、マルミオンの子爵だと名乗る私の敵どもは、彼らの義務を果たしていないのですから。彼らは、全体の正義や、国王と祖国にとっての最大の利益のためにでは決してない、個人的な関心から、気ままに全てを成し遂げようとしているのです。彼らは、自分達のしたいようにするでしょうが、私は、物事を聞いた通りに行うでしょうし、聞くことは上手なのです。私は、彼らのような取るに足りないユピテルの怒りを、全く恐れてはいません。

私は、以下のことをあなたにお伝えし、この手紙を終えたいと思います。もし、あなたができるだけ良いことをしたいと願うなら、トネールのうっとりするようなご自身の孤独の中に静かに留まり、男性にせよ女性にせよ、誰かがあなたを褒めても、あるいは非難しても、あなたは、より優れてもいないし、より悪くもないのだと考えるようにしてください。善きものの栄光は、善きもの自体の意識の中にあり、人の口に語られるものではないのです。

愛情を込めて、あなたに口づけを送ります。未来を期待していてください。私が自分の存在を恥じていないのだということが、分かるときが来るでしょう。小さな嵐はやり過ごしてください。今吹いている激しい風は、単なる轟音にすぎないのです...。私は、とても体調が良く、私の敵どもを皆、生きていようと、死んでいようと、葬り去るつもりでいるほどなのです!
さようなら。



ボーマルシェへの書簡

ロンドン、1775年10月5日

カロン・ド・ボーマルシェ殿

私は、今晩、嫌悪と軽蔑の念を持って、そなたが大汗をかきながら、労を惜しまずに考え、作成し、書き写し、まさに今日私に届けようとしたこの契約を読みました。このような恐喝、このようにおぞましい物々交換を厚かましくも行うことのできる卑怯者は、そなた一人しかいません!王国の道徳が、男性として生きる女性を容認できないという口実のもとに、私がフランスに戻るためには、生涯、女性の衣装を纏わなければならないですと?そなたの裏切りは、その卑怯さに匹敵して相当のものですし、もしそなたに勇気と誠実さが欠けていないのだとしたら、その裏切りに対して、償いが求められるでしょう。

はっきりとお答えしましょう。消え失せてしまえ! しっぽがあろうとなかろうと、それがいったいなんだという?男性だろうが、女性だろうが、私は、常にセビリヤの全理髪師に勝るのだということを、よく知っておくがいい!

シュヴァリエ・デオン