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2013/01/15 2013:01:15:10:22:30

【BBL特集2】ジュリアン・ファブロー インタビュー

 いまやBBLを代表するダンサーの一人として、数々の作品で主要な役柄を踊っているジュリアン・ファヴロー。最近ではベジャール最高傑作の一つ、『ボレロ』の主役=メロディー役をも任され、世界各地の舞台で喝采を浴びています。3月には、いよいよ彼のメロディー日本初披露が実現します。そんな彼に、まずは『ボレロ』の魅力、作品への思いを語ってもらいました。

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──ファヴローさんにとって『ボレロ』とは?
『ボレロ』は、モーリス・ベジャールの最も有名、最重要かつ神話的な作品で、強烈な象徴体系を持っています。あの赤い円台に上り、自分の解釈で踊ることができるのは、とても名誉で幸運なことです。

──『ボレロ』を踊ることになった経緯を教えてください。
 私がルードラに入ったのは16歳。その1年後、カンパニーに一つ空きができ、モーリスがそれを私に与えてくれました。最初は非常に困難でしたが、良い場所、良い時期に居合わせたと思います。いつも"我が家"にいるように感じていました。
 モーリスは私に『ボレロ』について話してくれていましたが、踊る機会はありませんでした。モーリスが亡くなり、ボレロを踊っていた唯一の男性ダンサーがカンパニーを去った。2、3年経ったあるとき、ジルが私のところに来ました。彼は私が十分に成熟し、"良い時期"にいると考えていたのです。6カ月の間ツアーで経験を積み、それから"準備万端"でパリで踊りました。私はフランス人なので、家族全員が観に来てくれましたね。私のキャリアにおける偉大な瞬間でした。

──『ボレロ』の踊りは、毎回違ってくるものですか?
 同じであることは絶対にありません。『ボレロ』は身体的に非常にきつく、数学の図式のように記憶しなければならない。振付も非常に難しい。どんな意味もあり得るし、いくつもの解釈がありますが、モーリスは「死に向かうこと」だと言っていました。円台の周りのダンサーたちは、まるで"メロディー"に食らいつく下顎のようだとも。しかし同時にモーリスは、ダンサーそれぞれが自身の解釈や独自のヴァージョンを発展させることを奨励していました。
 『ボレロ』に最初に出演したのは、円台の周りでした。あの戦い、求心力が大好きでした。円台の周りの男性ダンサーたちは、テンションとクレッシェンドを創り上げるのに重要かつ必要な存在です。円台上の私は、彼らを利用して気持ちを盛り上げ、自分を奮い立たせる。彼らなしに、『ボレロ』は機能しないでしょう。

──ファヴローさんの『ボレロ』は今回、日本初上陸となります。
 たくさんの日本のファンの方たちが、すでにヨーロッパ・ツアーでの私の『ボレロ』を観に来て下さり、それを再び観ることを楽しみにしてくださっている。シンプルに取り組み、ベストを尽くしたいですね。私にとってこれは一つの到達点であり、認められた証。期待に応えられたことを嬉しく思うと同時に、私に『ボレロ』を与えてくれたジルとモーリスに感謝しています。

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 また、30年ぶりに復活をとげ、今回待望の日本初演となる『ライト』で踊っているのは、"貧しき者"。ベジャールが、かのジョルジュ・ドンのために振付けた役柄で、ヒロイン=ライトの運命の鍵を握る重要な役割を担っています。

──伝説の傑作といわれる『ライト』ですが、この作品の魅力について教えてください。
 『ライト』は、複数の登場人物の人生をパラレルに織り上げた、とても美しい物語です。同時に展開する複数の筋が、7色の衣裳を着たダンサーが象徴する虹によって結びついていますが、主な舞台は芸術の庇護者、芸術家、聖者の世界であるヴェネツィアです。作品の主題は、誕生そして光が象徴している純粋さ。このバレエのためのモーリスの音楽のチョイスは、驚くほど見事です。

──ファヴローさんが踊っている"貧しき者"とは、どんな人物なのでしょうか。
『ライト』の重要人物たちに、普遍的な性格を与えたいとモーリスは望んでいました。"貧しき者"は、実は、貧困の誓いを立て、自分の所有する僅かものすら他者に分け与えていたアッシジの聖フランチェスコです。彼は光、つまりカティア(カテリーナ・シャルキナ)が踊る"ライト"を求めています。ライトに出会うことに成功し、彼の人生は変容します。作品の終盤には7人の男性ダンサーの中心で踊るシーンがあるのですが、私たちは回教の修道僧のように旋回し、トランス状態になります。ニルヴァーナ(涅槃)に到達しようとするかのように。ダンサーにとっては大変ですが、このバレエには真のポエジーとエモーションがあります。

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──『ライト』の初演は1981年。すでに30年以上も経過していますね。
 『ライト』は、再演であると同時に、指導者たちとともに手がけた再創造の仕事だったともいえます。ジルは言っていました。「いま、この難しいバレエを、オリジナルに最も近い形で再構築するための、"理想的"なダンサーたちがいると感じている」と。
 モーリス・ベジャールの振付作品に敬意を持っていますが、私たちは必ずしも当時のダンサーたちと同じには踊りません。モーリスは常に、私たちに再解釈の自由を与えてくれていましたし、私たちの新解釈が作品を現代に適応させていくのです。モーリスの旧作バレエを再び取り上げることは、レパートリーの豊かさを示すのに重要なこと。モーリスの作品は、用いる音楽によってさまざま、全く違っています。私たちにとって大切なのは、モーリスのあらゆる傾向の振付をお見せすること、若い世代に彼の仕事を発見してもらうこと、そして彼のメッセージと哲学を尊重し、それをできる限り多くの人に示すことなのです。

(取材・文 アーノルド・グロッシェル)