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2013/05/20 2013:05:20:14:51:58

英国ロイヤル・バレエ団 ベアトリス・スティックス=ブルネル インタビュー

1993年にマイアミで生まれニューヨークで育ったベアトリス・スティックス=ブルネルは、スクール・オブ・アメリカン・バレエ(SAB)で最初のステップを踏んだときから「天才児」と呼ばれてきた。7歳で踊りはじめ、12歳でパリ・オペラ座バレエ学校に編入。1年後、クラスで首席の成績を修めるものの帰国。さらに1年後、14歳にして振付家クリストファー・ウィールドン率いるカンパニー<Morphoses>の公演に参加し、その実力を認められ15歳で正式入団。その後はウィールドンにいったん別れを告げ、スクール・オブ・アメリカン・バレエに戻り基礎がためをし、2010年、審査抜きでロイヤル・バレエ団に入団する。いま、彼女は新天地でウィールドンと再会し『不思議の国のアリス』の主役を踊っている。弱冠20歳。陽性のオーラを放つ肢体、パリ仕込みの繊細な表現、そして会う人誰もが恋に落ちそうな可憐な笑顔の持ち主であるベアトリスに話を訊いた。


--------バレエを始めた理由を教えて下さい。

はじめは器械体操をやっていたのです。でも本格的に宙返りなどを学び始めたころから、体操選手には背が高くなりすぎて、あとわりと脚が長い私のプロポーションを見て、体操の先生が「バレエをやってみたら?」と勧めてきたのがきっかけです。

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アリス:ベアトリス・スティック=ブルネル、白うさぎ:リカルド・セルヴェラ


--------なぜパリ・オペラ座バレエ学校に転入することを決めたのですか。

SABに通うかたわら、私は元オペラ座バレエ学校のOBであるファブリス・ヘロー先生に師事していたんです。だから早い段階で、質が高く、純度の高い、本格的クラシックを学ぶならヨーロッパに行くしかないと理解していました。SABはバランシン・テクニックがメインですからね。それでオペラ座に自分の稽古風景のビデオを送って入学許可を得て、12歳のときに家族同伴でパリに向かいました。


--------ロイヤル・バレエ団には審査なしで入学されたそうですね。

ええ、でもモニカは私のことを知らなかったわけではありません。私がMorphosesの団員として、エドワード・ワトソンやリヤーン・ベンジャミンと共にロンドン公演に出演したときのことを覚えていてくれたんです。


--------入団2年目にして、代役として『不思議の国のアリス』に抜擢されます。

ある日突然クリスに「役を覚えるのに4週間ある、がんばれ」と言われて(笑)、アリス役を踊ることになりました。その後の4週間はまさに「アリス漬け」。ビデオ資料を見て、ルイス・キャロルの原作を読んで、クリスとも何度も議論しました。例えば「扉の向こうから客席を覗きこむアリスの目線は何を伝えるべきか」という小さな動作ひとつに至るまで話し合いを重ねました。人生で初めて全幕バレエの主役を踊る機会を与えられたので、とにかく役を体に染みこませるのに必死でした。最終的に、アリスは意外に頑固者な女の子、という解釈で役作りを進めることにしました(笑)。彼女は自分がしたいこと、見たいこと、欲しいものが分かっていて、そのためには決して恐れずにひとりで現実に立ち向かっていく。私は兄弟二人と男ばかり10人の従兄弟に囲まれて育ったので、アリスの気持ちがよく分かるんです。女の子は男社会で自分の欲しいものを手に入れるためには、しぶとく戦っていかなきゃならないんです。

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アリス:ベアトリス・スティック=ブルネル、ジャック:ニーアマイア・キッシュ


--------その後『パゴダの王子』のローズ姫を代役で務めたのち、飛び級でソリストに任命されます。ソリストを名乗る心構えはできていましたか。

もちろんです。前年のアリスとローズ姫で、努力次第で主役を担うことができることも証明できたように思いますし。ただバレリーナとしてもっと成功するためには、絶えず自己規律に支えられた努力を重ねていかなければなりません。あとは謙虚さ、繊細さ、寛容さ、少しの自信も必要です。今後、私はそれらの要素を頑張って会得して、ソリストとして大役を担っていきたいと思っています。いま踊りたいのは、マクミランの『ロミオとジュリエット』です。


--------日本公演に向けてメッセージをお願いします。

私の大好きな映画のひとつは宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』なんです。あと勅使河原宏監督の『砂の女』、新藤兼人監督の『裸の島』、もちろん黒沢映画も大好きです。なので自分が敬愛する文化の国を訪れることができることを、心から楽しみにしています。また素晴らしいカンパニーの一員として、日本で『不思議の国のアリス』の主役を踊れることを心から光栄に思います。


取材・文:岩城京子(舞踊・演劇ジャーナリスト)

Photo:Bill Cooper/ROH



■英国ロイヤル・バレエ団「不思議の国のアリス」公式サイト
 ▽http://www.nbs.or.jp/stages/1307_royal/alice.html

 *ベアトリス・スティックス=ブルネル出演日7月6日(土)13:00開演


★「不思議の国のアリス」追加公演決定!
 7月7日(日)18:00開演(アリス:崔由姫/ジャック:ニーアマイア・キッシュ)
 
 ▽http://www.nbs.or.jp/stages/1307_royal/alice-add.html